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グラントグリーンという達人

世にジャズギタリスト数あれど。。。チャーリークリスチャンに始まりジムホール、ウェスモンゴメリー、ジョーパス、パットマルティーノ。。。バーニーケッセル、ケニーバレル、メセニー、ピザレリ、ディオリオ、ベンソン、タル、マクラフリン、ジョンスコ、ビルフリ、リトナー、カールトン、ジェシ、カート、アンソニーウィルソンもカッコイイ。。。いっぱいいっぱい良いギタリストがいて、あ、ウルフワケニウスなんかもうまいなあ。。。バーンスタインもかっこいいし。。。

私の中で、実際に何度か見れたし、握手までしてもらったってのもあって、どうしても一番はジムホールってなっちゃうんだけど、はっきりと弾くそのスタイルから一番いろんなことを教えてくれたのはグラントグリーンかもです。

沢山スタンダード入っててお得ってことでウィズソニークラークっていう2枚組をよく聞いたんですけど、あの中にThe things we did last summerっていう、とりようによっちゃかなりエロいタイトルの曲があって、いやタイトルはまぁどうでもいいんだけど、このグラントのソロ、是非聞いて欲しいんです。

ちなみにこの曲、グラントの後継者なんて言われるピーターバーンスタインも取り上げていて、やっぱり彼もグラントのソロに衝撃を受けたのかな。。。なんてちょっと思ったりしますが、とにかくほぼ同じフレーズで押しまくるんです。

あの、バラードですよ。。。ロマンティックなラブバラードです。

こんな潔い開き直ったような男前なソロ。。。いや、グラントグリーンはちょいちょいワンフレーズで押すような時あるんだけど、こんな一本やりなラインを弾きまくるのもなかなかないと思います。

いや、確かに細かく聞けば全く同じには弾いてはいなくて、少しづつ歌い回しをかえてたりはするんですが。。。いや、これは一体なにをしようとしてるのか私なりに考察してみました。

そもそもアドリブソロと言いますが。。。レコーディングです。

レコーディングと言ったってアドリブでしょって、ええ、確かにそうですが。。。例えば今から二週間後にレコーディングするとします。

どの曲録るか決めました、メンバーに渡す譜面ももう行き渡ってます、プリプロもしてみたりしたかも。。。ついでに言うと今みたいにデジタルレコーディングで差し替え、一人だけ録り直しなんてできるような時代ではありません。。。

練習しちゃいますよね。。。なんならグリグリに譜面に起こしちゃいそうです。

その瞬間に発生したグルーブや現場の空気やなんかからパッと産まれた科学反応みたいなものだけがアドリブ。。。とは全然思いませんが、やっぱり準備しちゃうものだと思います。

何を弾くかを準備すると言うのも、没テイクなんかがいくつも入ったようなコンプリート版みたいのを聞くと、人によって様々な感じ(ガチガチに細かく決めていくか、スケールやフレーズだけ決めて臨むかなどなど。。。)はしますが、例えばハンクモブレーなんか聞くと、ライブの彼とレコーディングの彼は明らかに違う感じがします(もちろんどっちも素晴らしいんですけど)。

確かにパーカーやマイルス、モンクなんかはレコーディングって言っても、なんかあんまり準備してるような感じはしませんが。。。いやそれってかなり太いですよね。。。

じゃあ普段できることより明らかにテンポも少しゆっくりにして、一音一音紡ぐように丁寧に弾く作品を、後世に何枚も残したグラントグリーンが聞かせたかったものは一体何だったのかなと思うんです。

私が思うに、ジャズの特異性(オリジナリティ)はもしかしたらアドリブではなくて、やはりリズムだったのではないか、少なくともグラントグリーンは発音のタイミングで歌うことに命をかけていたんじゃないかと。

もちろん何を弾くかも大事だけど、ちょっとその優先順位というか、もっと"どう弾くか"によっていたんだろうなという気がしてならない。。。じゃなかったらこのThe things we did~~のソロの説明がつかないような気がします。

昔のレコーディングというものはきっと、かなりお手軽に便利にレコーディングできるようになった現代とは、意味合いもそれに臨む想いも全然異なる重いものだったんだろうなと想像します(だからと言って現代の物がダメとも思いませんが)。

本人に話を聞いてみたかったです。

果たして本当のことを明かしてくれるかどうかももちろんわかりませんが。。。

楽理的にどう弾くか、どう分析して何を選択するかなんていうことは、雑談をしている時のような余裕のレベルで理解して、リズムや音色、グルーブに集中して演奏できるようになりたいものです。

リズムさえ良ければ何を弾いても。。。なんて自分で言えるようになるにはまだ全然早いなぁとグラントグリーンを聞くといつも思います。


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