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第112回歯科医師国家試験の総括

歯科医師国家試験の結果について、私がはてなブログを閉鎖してしまったが故に、正確なデータが手に入りづらくなっているようです。過去の結果についての要望を頂きましたので、はてなから転載することにしました。

なお、今回の112回歯科医師国家試験の総括については2019年3月に公開したブログを2つ合わせて転載しております。そのため、内容を繋ぐために少し文章を修正しています。文章はあくまでその当時の背景を元に書いている事をご了承ください。


全体的な人数の推移

106から112までの出願者数、受験者数、合格者数を示します。

国家試験推移

合格者数

合格者数は107から6年連続で1950~2060というほぼ100名の枠にきっちり収められており、合格者2000人枠が設定されているのは間違いないです。

現状の出願者数ベースで考えると56%程度の合格率であり、合格者枠を1850人以下にすると出願者数ベースでの合格率が50%を下回ってしまい専門大学6年いっての資格試験と思えないほどの合格率となってしまいます。
そのため私は今後も出願者数、受験者数が減らなければ、2000人枠が当分継続されるのではないかと思っています。

ただし、合格者2000人枠の前に合格者数2400人枠が存在していましたが、それは100回から始まり106回まで7回続いてそこから一気に合格者数は400人減ったのも事実です。そういう事から、合格者数2000人枠が7年連続で維持されていくかは確定ではないことに注意するべきでしょう。

勿論、動きがあるとすれば、合格者数は減る方向以外ありません。

受験者数

出願者数は去年から2人しか増えていないのに、受験者数は70名以上増加しました。国公立現役や浪人の受験者数は大きな変動がなく私立現役の受験者数が増加したためです。

私立現役の受験者数の推移

私立現役の推移

これをみると111と112では出願者数はほぼ変わっていないが、受験者数は80人以上増加しており、出願後の留年や卒業保留による絞りが例年より甘かった可能性があります。
卒業が最も厳しかった110では出願者数の67%しか実際の国試を受験できなかったのに対し、112では75%が国試を受験することができています。

原因に関してですが、
CBTのボーダーを上げたり低学年から進級の判定が厳しくなったりと、6年生の最後までしっかり到達できればある程度の実力がある、という学生が多くなった・・・というのが人づてに聞いた見方。
大学の気分?とか6年生がたまって卒業させざるを得なかったというのが悪魔的な見方。

私の見方は違います。

私は6年スタート時点の人数を独自集計しています。
111においてスタート時点での私立6年の総学生数は2000人弱
実際出願できたのは1830名ぐらい
つまり170名脱落

112においてスタート時点での学生数は2064名
実際出願できたのは1836名
つまり230名ほど脱落しています

各大学が出願前に学生を多く留年や休学でカットしたことにより最も成績が下位の層が予めカットされており、そのためある程度多めに国家試験を受験することができたと考えられます。

111で最初2000人 国試受験できたのは1302人 65%ぐらい

112で最初2064名 国試受験できたのは1386人 67%ぐらい

つまりほぼ一緒です。

単純に学生数が多く、大学側の学生をカットする方法がより出願前に移動しただけだったと考えられ、大学の留年等の基準はあまり変わっていないと思われます。

つまり来月6年生になる私立の学生の1/3は国試を受験することすらおそらくできません。しかしそれは例年通りなんです。

元々の大学受験時の私立の総募集人員は1823名であり、2064名だとかなり留年等でたまっていたと考えられます。

浪人生の推移

111時点での確定している浪人生の数は1120名でした。しかし、実際浪人として112を受験したのは1232名であり、大きな乖離があります。
なぜ100名以上増えたか・・・・というと殆どは卒業保留でしょう。

国家試験に受かりそうもないので、国家試験は受験させたくないが、卒業はさせたい場合に使うのが卒業保留です。

厚労省の国試受験資格にこういうのがあります。
歯科医師国家試験の施行について|厚生労働省

学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく大学において、歯学の正規の課程を修めて卒業した者(平成31年3月11日(月曜日)までに卒業する見込みの者を含む。)

そう、つまり3/12まで卒業見込みにしなければ良いのです。最後の卒業試験を落として絶望の淵に立たされた学生にそっと優しさを与えるのです。
再試験してあげるから卒業はしよう!!
再試験は国家試験当日に設定し国試を強引に受験しにいくのを阻止すればよいのです。
結果を3/12以降に発表して3/31付けで卒業させれば完璧です。

これは大学の優しさというより
とっとと出て行ってくれ、後は自分でなんとかしろ
という風にも思えますが、留年して馬鹿高い学費を来年も払いたいくないということで両者ともにメリットがある、ということになっています。

この卒業保留のシステムは今年の国家試験のデータにおいて出願者数と受験者数の差の一部として現れますが、実際何人そうなったのかは現時点ではわかりません。何故かというと純粋に留年した人もそこに含まれるためです。

実際何人ぐらい卒業保留になったかは、各大学が公表する卒業者数と国家試験受験者数の差をみることで判明します。また、翌年の国家試験の結果をみると浪人が不自然に増加していますので、それでもわかります。

ただ、そんな比較殆ど誰もしません。つまりほぼバレずに隠蔽できます。

去年卒業保留をだして112での浪人受験を増やしたと考えられるのは

明海   45人程度
鶴見   20名程度
朝日   35名程度
大阪歯科 20名程度
福岡歯科 30名程度

この5大学が原因のようです。
今まで卒業保留を行ったことがなかったと考えられる福岡歯科が卒業保留を行ったようです(おそらく今年は行っていません)。
ちなみに112ではすでにNMが大量に卒業保留をしたことがわかっており、来年も同じ程度の数は浪人が増加すると考えてもよいのではないかと思います。

合格率

全体的な合格率の推移を以下に示します。

合格率推移

合格率は107から63~65%という極めて狭い範囲に固定されています。
おそらく厚労省がここ数年設定したボーダーラインは
合格者数1950~2050人 合格率 64%程度
であると考えられます。

今年は全体の合格率がやや下がりましたが、現役の合格率は国公立、私立ともに上昇しています。
その反面、浪人の合格率は著しく低下しています。特に私立出身の浪人の合格率は36.9%であり、浪人するだけで3人に1人しか歯科医師になれない、というデータです。

浪人合格率推移

現役の合格率

現役の合格率の比較を以下に示します。

現役合格率比較

現役における国公立大学と私立の合格率の差は去年と変わりませんでした。しかし、現役国公立と全体の合格率の差は23.8とここ10年で最大となりました。111から思考力が問われる問題が増加したことにより、偏差値が元々高い国公立大生がやや有利になっていると考えられます。
ただし、私立現役においてもある程度対策と学生の選抜が行われており、国公立との差は開かなかったと考えられます。

浪人の合格率

浪人の合格率は、出題基準が変わった107でも大幅に合格率が下がり108ではある程度回復しました。これはおそらく予備校が107の問題を解析し対策が功を奏した結果と考えられます。

今回も111で下がった分、少し戻すのかな?と思っていましたが、しかし結果は大幅にダウンとなってしまいました。

予備校の対策自体はおそらく現役生の合格率をみるとある程度効いていると考えられることから、浪人生の思考力が合格するレベルから遠いという予想が成り立ちます。

卒業年次別の結果から、112の思考力を問う難易度は浪人生、特に多浪生には致命的であったと言えるでしょう。2浪で合格率は40%を割り、3浪で30%を割っています。

112回卒業年次別結果

年に1回しかない試験と考えると、現実的な合格ラインは2浪がギリギリでしょう(それでも5人に2人受からない)。
3浪以上はもうガチャレベルといっても過言ではありません。

9浪以上が100名受験しているが、合格は3名・・・・3名・・・・
諦めが肝心であることがよくわかる。

6浪や7浪は案外受かってる様に見えるけど、母数が少ないからそうみえるだけです。それに6浪になる前に諦めて国試受験をしていない人もいると考えたら、合格者1名に対する不合格+脱落者は数十名になるでしょう。

108では63名だった9浪以上の受験者が112では100名になっています。その分678浪が大幅に減少しています。
108からずっと浪人継続で112に至り9浪以上に含まれる人を想定すると5浪以上となり、108で浪人継続確定は182名となります。それが100名にまで減少したと言うことは4年間で82名は受かったということでしょうか?ここらへんの合格率は年で数%しかないため、勿論無理な話です。年で10名受かったとして40名。
半分ぐらいは歯科医師になる人生を諦めた可能性が高いです。

今の歯科医師国家試験は、現役で合格しておかないと永久に受け続けるだけの存在になる可能性があります。

合格基準

112の合格基準を示します。

112回合格基準

111回と比較してみます。

111回合格基準

B領域は配点が2点上がったにもかかわらずボーダーは9点下がりました。また、C領域のボーダーが5点下がりました。

これは矯正や補綴系の難易度が大幅に上がったためと考えられます。矯正はしっかりみていませんが、部分床義歯の問題の難易度は非常に高いものでした。
実際臨床を結構やっているなら解けますが、殆どやったことがない受験生には訳が分からない問題も多かったと思います。
部分床義歯に関してはおそらく正答率もかなり低かったのではないかと思うので、来年は少し難易度は下がるのではないかと予想しています。

矯正に関しての難易度はおそらくそれほど下がらないかもしれません。それは部分床義歯ほど正答率が低すぎる、という話を聞かないからです。つまり、111までの矯正用の勉強では113では厳しい可能性があります。

単純に憶えるだけでは解けない問題が多くなり、考え応用する力が問われるようになりました。単に詰め込むだけでは太刀打ちできません。
そういう意味でも浪人には厳しい試験になりましたね。

それにあわせた勉強法、というのはなかなか難しいです。
成績上位層はなぜ上位層なのか?と言われればそれは低学年からの積み重ねがしっかり出来ているから上位層なのです。

あれは開業すれば必要ない
あれはサボってもいい
とか成績が悪い層は何かにつけてサボるが、そういった積み重ねで成績が開いてきます。その積み重ねが問われる様になってきており、6年生の10か月程度で簡単にリカバーできるものではありません。低学年からの勝負になりつつあるわけで低学年の方はもう一度自分を見つめ直して頂きたいですね。

大学の試験を通るために過去問をやるだけではおそらく駄目な時代なんです。教科書を読み、理解していく事が大事です。学生は過去問と同じ試験ではない講座に文句を言いますが、そういった講座の方が皆さんの事を本当に考えていると言えます。

大学別の結果

ここからは大学別の結果をみていきます。

医歯薬研修協会のサイトに載ってきている表を転載します。この表を載せていたサイトが削除されており、参照先URLはカットしています。

112大学別結果

国公立大学現役

今現在の大学の状況を把握するには、現役の合格率をみることになります。何浪もしている学生がはいってくる総数ではよくわからないからです。

各大学の結果を表に示します。

112国公立大学(表)

2年連続トップだった医科歯科は転落しました。
東北がトップのようです。
最近低迷した新潟が復活です。

国公立の傾向として東高西低があるが、今年も同じ傾向でした。
偏差値は殆ど変わらないはずなのに、なぜこれほど傾向が出るのでしょうか?

全てのデータを入力した表が以下になります。

112国公立大学別データ

学生数(a)は去年新学期がスタートした時点で6年生が何人いたかを示します。黒字は大学の公式サイトで公開されているデータ、赤字は情報として頂いたデータとなります。つまり赤字は100%信頼できる物ではないということです。

出願者数(b)と受験者数(c)、合格者数(d)は厚労省から今日発表された数字です。
b-cは11月の出願後に留年した学生数であり、確定しているのは九州大学の2名です。
a-bは出願前に留年した学生数であり、徳島大学が6名もいます。6名というのはかなりの人数で有り、たとえば偶然病気で、とかいうレベルではありません。明らかに出願者数を圧縮する行為であり、合格率を操作していると言わざるを得ません。

国公立は、以前は全く留年せずに全員国試受験が一般的でしたが、最近は私立ほどではないですが、出願前、後に学生が少しずつ絞られる傾向になっています。

合格者数/受験者数での合格率を以下に示します。この合格率は、徳島のように出願前に学生を圧縮されている場合には数字を偽装できるので、徳島の実際の合格率はもっと低いことになります。

112補正合格率

国公立大学は、私立のように6年生1年間を座学に費やしたり予備校が入ったりしていませんので、合格率は安定しない大学が多いです。
それでもある程度の傾向があって、西高東低の傾向が強い事がおわかり頂けるかと思います。長崎や徳島は毎年成績がかなり悪いです。残念ながら教育システムに問題があると言わざるを得ません。

私立大学

ここからは私立大学の現役の結果をみていきます。

表の合格率

まず表の合格率に関して見ていきたいと思います。

112私立大学(表)

これを合格率順に並び替えてみます。

112私立大学(表)合格率順

東京歯科がもうVなんぼかわからない程のトップ。
私立トップはやはり東京歯科!!

次の集団が見たことのない感じ
日本歯科新潟、神奈川、岩手!!!!!!下剋上ですか!
日大なんて下から3番!!!

しかし・・・・
この数字が本来の大学の実情を反映していないことはこれを読んでいる方はよくおわかりかと思います。

補正合格率&闇の合格率(私立限定)

私立大学の全データを以下に示します。

112私立(裏)

私立大学は留年や休学によって受験者数を大幅に絞っています。それが出願者数と実際の受験者数の差であるb-cの人数となります。見て頂くと各大学相当な数になります。

さらに複数の大学では国家試験出願前に学生を留年、休学させることによって出願者すら偽装しています。
大学の6年生の数(a)は大学公式サイトで公表されているものを黒字、サイトに載っていないため独自のコネクションを使って集めたのが赤字になります。

なので赤字に関しては信頼性は100%ではないのでご注意頂きたい。

大体サイトに公表している数字でも休学者が含まれるかどうかなんて各大学によって書き方が違うと思います。
なので、(a)の数字に関する間違ってるとか修正しろ、とかそういったご意見には応じかねます。

唯一、日本歯科大学のみ卒業試験によって復学卒業を許された元々の6年生ではない特殊な聴講生を追加しています。

学生数(a)と出願者数(b)の差が大きい大学は出願前留年を行っています。

6年生の最初の人数から最も変動が少ないのは昭和大学であり7名ですが、今回昭和は放校も出たと聞いています。

4月当時の学生数と実際国試を受験した学生数に差が大きく認められたのは以下の大学です。

日本歯科は76名
明海大学は73名
日大松戸は70名
神奈川は68名
大阪歯科は62名
愛知学院は44名
日本歯科新潟は43名
鶴見は42名
朝日は36名
日大は33名

(注:不正確な情報のため多少の誤差がある可能性あり)

これらの大学は留年や休学放校等で学生を大幅に間引くことにより国家試験の合格率を上げようとしている大学です。

特にa-bが大きい大学は出願前に留年させて出願者数自体を圧縮しており、これは厚労省が公表する数字を欺く行為で相当ブラックな大学と言わざるを得ません。

え?母校がある?
母校はもうそういう大学になってしまいましたよ・・・。

闇の合格率

出願者数を圧縮している大学の真の合格率を求めるためには、合格者数/4月時点での6年生の数という計算式が必要です。そのため、本noteでも闇の合格率として公表しています。
闇の合格率=合格者数(d)/学生数(a)
この数字は(a)が不確定なためあくまで参考値となってしまうことをご了承ください。

112闇の合格率

分かりづらいので、合格率順にソートし直しました。また、他の合格率についても併記します。右2つの合格率で上位にいたとしても、闇の合格率で下位の大学は、合格率偽装が著しい大学という大学になります。

各合格率結果

トップはやはり東京歯科
表でも闇でもトップ。この大学はやはり凄いです。

去年低迷した昭和も今年は闇では東京歯科とかなり僅差であり、やはりこの大学の底力は侮れません。

東京歯科と昭和
この大学が私立2強といっていいでしょう。
3位以下を闇の合格率で20%引き離している。

やはり歯科医師になりたければ私立ならこの2校と言わざるを得ません。

その後をみると

岩手
松本歯科
日本歯科新潟
北海道医療

と続きます。
これはなかなかな集団
岩手が3位はびっくりです。
松本は今年落ちるのかなあ、と思ったが踏ん張りましたね。
これはやはり実力は本物ということなんでしょう。

えええ??

日大は?
日本歯科は?
大阪歯科は?

この3校の闇の合格率はすでに一流校の数字とは到底呼ぶことはできません。50%以下であり、東京歯科や昭和に30%以上の差をつけられています。

それでも格が・・・・という方もいるでしょう。いや、もう格なんてないんじゃないです?

このままいけば国家試験に合格しない元一流校ということになりそうですよ。なんというかお正月にやる格付けランキングでどんどん落ちていく芸能人的な感じがしますね。

最下位層にうつると

鶴見
神奈川
奥羽
福岡

と大体予想通りの順位が続きます。

福岡は表も補正も闇も全部最下位

ついに落ちるところまで落ちてしまった福岡に未来はあるんでしょうか・・・。

まとめ

112の総括として
1 合格者数2000枠 合格率63~65%は6年連続維持されました
2 私立大学の6年生をぶった切るレベルは変化がありませんでした
3 11月の出願前に学生を落としてやろう感が強まっています
4 問題の難易度は多浪生を虐殺するレベルにまで上昇しました
5 かつての名門校は東歯以外ほぼ死に体です
6 正確な私立大学の状況判断はやはり闇の合格率以外はありません

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