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My Favorite Things~モノと私のストーリー~④おばあちゃんコンプレックス

私は昔から「おばあちゃん」に弱い。

と言っても、父方の祖母は他界しているし、母方の祖母とも離れて暮らしているため、特別おばあちゃんっ子だったわけではない。

私が弱いのは本や映画の世界の「おばあちゃん」。
もっと言えば、概念としての「おばあちゃん」的存在だ。

「ばばばあちゃん」シリーズ
佐野洋子さんの『だってだってのおばあさん』
梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』
「かぎばあさん」シリーズ
「スプーンおばさん」シリーズなどなど……
何度読み返したかわからない。

優しくて、頼りになって、あったかい。
幼い私にとって「おばあちゃん」は英知と慈愛の象徴だった。

優しいだけじゃない。
私の好きな「おばあちゃん」は、冒険が好き。
お茶目で、いつまでも少女の心を持っている人なのだ。

親や先生には言えないことも
おばあちゃんになら言える。

大人はわかってくれないことも
おばあちゃんはわかってくれる。

私の「おばあちゃん」愛は大人になった今でも変わっていない。
それどころか、パワーアップすらしている。

素敵なおばあちゃんが出てくる映画を観ると胸がキュウっとせつなくなるし、
“おばあちゃんが作った” お漬物やおまんじゅう、
“おばあちゃん家にありそうな” 薬缶や湯吞、
“おばあちゃんが着ていそうな” カーディガンなどにも弱い。

そんな節操のない私を友人たちはマザコンならぬ、ババコンとからかうけれど、それもあながち間違っていないのかもしれない。

前置きが長くなってしまったけれど、最近の私のお気に入りは、まさにこの「おばあちゃん」愛をくすぐる逸品なのだ。

出会いは2年前。
ふるさと納税の返礼品リストで偶然見かけた大分県臼杵市のカニ醤油さんの「黒だし番長」は、お醬油ベースにかつお節、さば節、昆布の風味を効かせた万能調味料。

カニ醤油は蟹入りの醤油ではなく社名だということに混乱しつつも、「黒だし番長」という名前のインパクトに惹かれてポチリ、とカートに追加。これが大当たりだった。

400年続く老舗の味噌・醤油屋さんが作るこの濃縮タイプの黒だしは、うどんや蕎麦のおつゆにはもちろん、浅漬けや煮物、卵かけご飯など幅広く使える優れモノ。
そのあまりの万能さに一度使ったら手放せなくなる人が続出というのも頷ける。

いつもの肉じゃがの味に奥行きが出る!

商品の魅力に加えて、私の心をわしづかみにしたのが、カニ醤油の名物お母さん直筆のレシピだ。
迫力のある文字とイラストで綴られた、ゆるーい指示にニマニマ笑いが止まらない。

今日は食欲ないな……という日も「黒だし番長」をお湯で薄めただけのスープにおうどんがあれば乗り切れる。

味付け失敗したかも……という時だって「黒だし番長」をひと垂らしするだけでバシっと味が決まる。

仕事が忙しくなると食生活が乱れがちな私。
「これ一本で何でもできる!」
「めんどくさいとか云うたらいけん」
というお母さんの激励メッセージに、背中をばしんと叩かれたような気がした。

明子お母さん直筆のレシピ

このお母さんの正体は、十二代目店主のお母様にして店の看板娘の可兒明子さん。
リーフレットに記載された情報によると、御年75歳だという彼女のユーモアのセンスが秀逸なので、ここにそのメッセージを抜粋させていただく。

大変お待たせしてごめんなさい。もっと早く味噌つめて送ってとか、ムリムリ。だって75才、腕動かんし、最近ふるえるもんね。by 明子

可兒明子さん

ムリなもんはムリ。
あっけらかんと笑って言えるようになるには、あとどれくらいの月日がかかるだろうか。

若々しい笑顔の明子さんを「おばあちゃん」と呼ぶのは失礼かもしれないけれど、「黒だし番長」は私の「おばあちゃんの味」殿堂入りが決定した。


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