わが青春、自販機エロ本の世界④
自販機エロ本というと、露出を含めかなり過激なことをやっていたのではないかと想像をめぐらす読者もいることだろう。しかし、正直なところ、直接のエロ度ということでは、書店売りのエロ本と大差はなかった。たとえば、男女の絡みでいえば、当時はストレートに性交をイメージさせないよう、腰を密着させないとか、ベッドの上では下着を着用していなければいけない、とかの暗黙の規制があった。ネットに繋げれば、簡単に”そのものズバリ“が拝める現在の感覚からすれば、拍子抜けするほど大人しいものだったといえる。
しかし、企画の自由度、ハチャメチャさでいえば、アングラ出版物である自販機本の天下といってよかった。『濡れた警棒』というアリス出版のグラフ誌があった。タイトルから想像できるとおり、婦人警官モノである。「女警備員シリーズ」と表紙にはあるが、それは一種の「逃げ」で、帽子といい腕章といい、誰がどうみても婦人警官のコスプレだ。書店売りのエロ本では、グラビアはもちろん記事でも警察ネタは絶対のタブーだったから、これには驚いた関係者も多かっただろう。また、同社の『痴漢電車』シリーズは、実際の電車の車内やホームでのゲリラ撮影がウリだった。
対して、ライバル会社のエルシー企画は、『女子便所』シリーズをヒットさせていた。おそらく、日本のエロ本史上、女子の放尿がビジュアル化されたのは、これが最初だと思う。しかし、なんといっても衝撃的だったのは、同社の『Jam』という雑誌が爆弾企画としてぶち上げた「芸能人ゴミあさりシリーズ・山口百恵」である(79年)。当時、山口百恵といえば、アイドルを超えた国民的歌手といえる存在だった。その彼女の家から出されたゴミが誌上で明らかにされたのである。ゴミの中身は、妹のテスト用紙、テレビ局の感謝状、甘栗のカラ、頭のおかしい人が書いたと思われる奇怪な文面のファンレター、さらにはパンティストッキング、なんと使用済み生理用品まであった。(次回へ)
初出 東京スポーツ (若杉大名義)
よろしければご支援お願いいたします!今後の創作活動の励みになります。どうかよろしくお願い申し上げます。