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「ゴジラ」とアイヌ~伊福部サウンドのルーツ

『ゴジラ』など数多くの映画音楽で知られる伊福部昭(いふくべ・あきら)は北海道釧路の出身。伊福部という珍しい氏は、古代に遡ると物部氏につながり、昭の先祖も代々神官にあったそうだ。伊福部昭の父は警察官僚で村長も務めた人。父の影響で、幼いころよりアイヌの村に出入りし、アイヌ文化、特にアイヌ音楽に親しんだ。伊福部サウンドの特徴である力強い土俗的なリズムと独特の音階のルーツは、アイヌ音楽にあるのである。またアイヌ楽器の研究家であった。子供のころ、アイヌのおばさんにアイヌ楽器の使い方を習おうとしたら、「これは女が使う楽器だから、男のあなたが鳴らしたら笑われるよ」と真顔で言われたという。

▼伊福部昭のアイヌ音楽に関する小論文

▼伊福部昭「アイヌ叙事詩による対話体牧歌」より抜粋

▼伊福部昭の土俗サウンドの傑作『わんぱく王子の大蛇退治』(1963年)。伊福部にとって神話もアイヌもひとつの地平にあるのだ。タイトルロールに注目。共産党員だった高畑勲が日本神話のモチーフとした本作品に加わっているというのも面白い。その他にもそうそうたる名前が。考証のクレジットに蕗谷虹児。

▼なんと、「緊急地震速報」のチャイム音を作曲したのは、伊福部昭の甥っ子の伊福部達(いふくべ・とおる)氏。このチャイム音は、昭がアイヌ音楽にインスパイアされて作曲した「シンフォニア・タブカーラ」がもとになっているというのだ。こんなところにも「アイヌ」が生きていた。
「アイヌ文化と緊急地震速報チャイム」(新目竜一)

https://thesis.ceri.go.jp/db/files/13687835695f9a1e73713a9.pdf

▼伊福部昭 『シンフォニア・タプカーラ 第3楽章:Vivace』

 近年、本来あるはずもない民族対立をこの国に持ち込み、分断をはかろうとしている勢力がある。彼らによってダシにされているのが、アイヌだ。
 そりゃあ、長い歴史の中で、誤解や対立、偏見や差別はあったであろう。しかし、伊福部昭のようにアイヌと深く交流し、その文化を自身の芸術の血肉にしようとした和人も沢山いる。なぜ、そういった交流は語らず、対立ばかり煽るのか。



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