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イチニチイチゼーン!銅像めぐり

「銅像めぐり」という1ページものの連載も『GOKUH』でやった。
 ゴジラ、鉄腕アトム、エルヴィス・プレスリー、水戸黄門、と東京とその近郊だけでも、探してみると、一風変わった銅像というものが結構あるものである。それらをシリーズで紹介してみようという趣旨だった。エロとはまったく関係ない雑学ページである。

日比谷に建つゴジラの銅像。
原宿にもあったエルヴィス・プレスリーの銅像。
水戸駅前の水戸黄門像。

 おなじみ日本のドン・笹川良一氏が母親を背負って石段を上る若き日の銅像が銀座のど真ん中に建っているというので、それを第1回で紹介するとにした。場所は日本船舶振興会ビル。住所は港区虎ノ門になる。しかし、いざ行ってみると、肝心の銅像がない。船舶振興会のビルも解体工事中である。工事の責任者に聞くと、ビルの建て替えにともない、銅像は船の科学館に移設されたとのことである。
 あいにく年末進行で、取材の仕切り直しは時間的に無理だった。仕方がない。連載第1回はプロローグということで、とりあえず取材に訪れたという証拠写真だけは撮っておこうということになった。銅像のあった位置に立ち、僕が編集者を背負い、笹川良一会長になりきり、「一日一善~!」と声を上げる。すると、さっきの工事責任者がすっ飛んできた。
「あなたたち、誰の許可を取って撮影をしているんですか。ここは笹川先生の記念館の建設予定地ですよ!」
 確かに無許可での撮影である。跡地とはいえ財団の所有するビルの前での撮影はなるほど差支えがあろう。少し離れた歩道の隅で撮り直す。「イチニチイチゼーン!」。それでもやっぱり、黄色いヘルメットの責任者が飛んできて、「笹川先生の〇▼✕〇※◇~」。さらにビルから離れても同じで、気が付くと僕は編集者をおんぶしたままダッシュしていた。
 この「銅像めぐり」、1ページの連載ものながら、取材で地方に行かせてもらえるのがうれしかった。その場合、コスト的な面もあって、数カ所の銅像を周らなくてはならない。たとえば、新潟では田中角栄と三波春夫と忠犬タマ公といった具合に。ハチ公でなく、忠犬タマ公。なんでもタマ公は雪崩に生き埋めにあった主人を救ったことで知られ、郷土史の本にも登場する有名犬なのだという。その像は新幹線新潟駅のコンコースにある。
 一番遠出だったのは山形の庄内で、このときは、「おしん」の銅像を撮りに行った。ところがである、着いてみると、またしても銅像がないというハプニング。聞くところによると「おしん」像はイランに貸し出し中なのだという。イランで「おしん」が大ブームという話を聞いてはいたが、銅像まで海を渡ったとはちょっとびっくりした。イランはイスラム教国だが、偶像崇拝と咎められないのだろうか。
 当初は、「変わった銅像」をコンセプトとしていたが、それだけではだんだんネタ切れになってきて、野口英世や東郷平八郎、といった、普通の(?)銅像も対象に入れることになった。それはそれで、僕に近現代史というか、日本人論というものを考えるよいきっかけを与えてくれたと思っている。

熱海・貫一お宮の銅像の前で。尾崎紅葉の原作では貫一は革靴を履いていた。下駄で蹴ったら大怪我ですよ。

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