見出し画像

円谷英二の『皇道日本』(昭和15年)

円谷英二がカメラ、編集を担当した昭和15年の国策映画『皇道日本』(東宝国策映画)のAIカラー化版がYouTubeにアップされていた。さっそく拝見。
戦後、円谷英二の名は『ゴジラ』とともに語られてきたが、戦前の円谷は数多くの国策映画のクレジットにその名を見る。原節子の実質的なデビュー作であり、ゲッベルス肝煎りで制作された日独合作『新しい土』(昭和12年)、円谷特撮の原点となった『ハワイマレー沖海戦』(昭和17年)などがまず頭に浮かぶ。前者では、円谷が独自開発した国産初のスクリーンプロセスが効果を発揮、その出来栄えはドイツ側の監督のアーノルド・ファンクをうならせたほど。また、まだ技術的に未完成ながら、ミニチュア特撮にも挑戦している。
『皇国日本』だけれど、ニニギノミコトの天孫降臨に始まり、神武天皇から続く万世一系の歴史を語りながら、日本各地の美しい風景を紹介し、愛国心を鼓舞するという内容の典型的な国威発揚映画。そういうば、昭和15年といえば、皇紀2600年なのであった。
冒頭は、回転する地球のミニチュア。『新しき土』でも多用したオーバーラップ(これも日本で最初に用いたのは円谷)がここでも試されている。なによりも、風景の切り取りはみごと。各神宮の他、代表的天皇の御陵が一本の映像で見ることができるのも魅力だ。画面を横切る豪華汽船や煙を吐く阿蘇など、『新しき土』からの流用、あるいは未使用フィルムかと思われる。途中出てくる線画シーンは、鷺巣富雄(うしおそうじ・昭和14年東宝入社)の所属していた特技課線画室)の仕事だろう。

古書店のHBで見つけた『皇道日本』の台本。おそらく円谷は台本の段階から関与していたと思われる。



撮影・ 円谷英二/ 音楽・ 飯田信夫/ 総指揮.・池永浩久/ 解説・ 足立蘆光/構成・ 青木泰介/ナレーション・三浦耕作

よろしければご支援お願いいたします!今後の創作活動の励みになります。どうかよろしくお願い申し上げます。