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ウマ娘と日本社会

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日記(1月12日)

ウマ娘の論文を書こうと思った日は2021年4月上旬のことであった。 私はこの日、近所のイオンモールでインタビュー調査を行った。 結果、知名度は予想を大きく上回っていた。 9割以上の認知。 やはりSNSの影響、ゲームの力は凄い。 ウマ娘の最大の特徴は、 普段まったくゲームや競馬をやらない人がプレイしていた、ということであった。 学生、職場(公安関係含む、笑)、男女問わない人気。 人気の秘訣は、 ゲーム構造の分かりやすさ。 それと画面の美しさ(ターフとウマ娘)

第1話:ディープインパクトと「ウマ娘」

競馬ファンではなくとも、「ディープインパクト」という名前を一度は聞いたことがある、という人は多いことだろう。 一方で、「ウマ娘」というワードもアニメやゲーム、コミックは知らずとも日常生活で耳にしたことがある人はたくさんいるはずだ。 ディープインパクトは2005年から2006年にかけて日本の競馬界で活躍した「サラブレッド」(※ ウマ科のウマの中の一種)で、当時一大ブームを巻き起こした。 この馬の現役時代の異名は多々ある。 「無敗の三冠馬」、「英雄」、「飛ぶような走り」、

第2話:競馬ファンとゲーム文化

ところで、競馬ファンとゲーム文化のつながりは男性社会においては非常に密である。 それはゲームのプレイヤー名に時として現れる。 「オルフェ(おるふぇ)」、「ディープ」、「コントレイル」、「アーモンドアイ」、「シーザリオ」、「キズナ」など。 枚挙に暇がないほどだ(知ってる人と知らない人の格差が甚だしい、笑)。 これまで私はさまざまなスマートフォン(スマホ)ゲームに接してきたが、プレイヤー名に「名馬」の名前をつける人をいったいどれだけの数見てきただろうか。 対人ゲームとも

第3話:ダービースタリオンの時代

時を戻そう(お笑い芸人(ぺこぱ)のセリフをご拝借)。 これを(たまたま)読まれている方は『ダービースタリオン』(通称・ダビスタ)という言葉を知っているであろうか。 本ゲームは1990年代半ばに一世を風靡し、競馬シミュレーションゲームの草分け的な存在となったものである。 1991年にゲーム会社アスキーから発売されたダビスタはゲーム機の普及と競馬界の盛況の中、成長した。 私の周りでも「ダビスタ」をやっている人がたくさんいた。 既に中学生(小学生)の中に競馬ファンがいた。

第4話:競馬マンガの歴史

日本の競馬マンガの始まりは日本近代マンガの始まりでもあった。 我が国で日本近代漫画の祖と呼ばれる北沢楽天(1876-1955)が競馬の諷刺画を時事新報社(1899年に福沢諭吉が創設)で執筆し始めたのは1900年ごろだった。 1902年から時事新報にマンガ欄が登場し、後に時事新報のマンガ欄は日曜付録の『時事漫画』へと発展した。 そして1905年に日本初のカラーマンガ雑誌『東京パック』が創刊された。 全ページカラーといった画期的なデザインで社会を風刺した内容は非常に人気を

第5話:「みどりのマキバオー」

平成に入ると続々と競馬マンガが出現し、少年誌を彩り豊かなものにした。 その背景には競馬の世界でのブームがあった。 時代の象徴となったスターホース「オグリキャップ」、その好敵手であったタマモクロス、スーパークリーク、イナリワンなど地方からの「芦毛の怪物」の登場は同じ芦毛の稲妻タマモクロス(史上初の天皇賞春秋連覇)と共に「芦毛伝説」のスタートを促した。この伝説はメジロマックイーンの活躍によって絶頂期を迎える(ビワハヤヒデの登場まで)。 (やっとウマ娘ファンの方なら聞いたこと

第6話:「ウマ娘 シンデレラグレイ」

本書のタイトルに「ウマ娘」とつけておきながら、コミックの話題から入るのは一体どうなんだろうか(笑)。 (注:書籍化する予定なので、本書となっております。自費か商業か不明) しかし、これには深い意図がある(のです)。 「ウマ娘」というコンテンツはメディアミックス(クロスメディア)と呼ばれる一大ムーブメントであり、プロジェクトなのだ。 これには(誕生した時から)明確にアニメやゲーム、マンガ、CD、ライブ、企業とのコラボ、海外展開等といった強い野心があった(後述)。 また

第7話:可愛いを作る、育てる

ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」とは何か。 ウィキペディアで調べたから分かる。 やっているから分かる。 あれでしょ? 今流行っている女の子が走るゲームでしょ? これを私のような哲学者は一言で説明しなくてはならない。 そう。 「ウマ娘」とは可愛いを作る、育てる ゲームである。 競馬ファンとウマ娘ファンの違いは何かと 分析する以前に考えてみて欲しい。 もし走ってるキャラクターが「おっさん」だった場合、 とてもこのゲームがヒットしていたとは思えない。

第8話:サイゲームスとウマ娘

株式会社Cygames(サイゲームス)は「最高のコンテンツを作る会社」をビジョンとし、「ゲームの企画・開発・運営事業」を行っている企業である。また、多国籍企業や請負会社としての側面を持つ。サイゲ(通称)と言えば、スマホゲー。ゲームファンの間では定着している。一般の人でもテレビCMの観点からそのようなイメージを抱く人も多いことだろう。 2011年の創業以降、本企業はまさに「うなぎのぼり」で成長してきた。初期の頃は主に大手ゲーム会社の請負会社として、2010年代半ばからは自社作

第9話:クロスメディア(メディアミックス)の新革命

「ウマ娘」はクロスメディア、あるいはメディアミックスと呼ばれるコンテンツである。それゆえ、アニメ、ゲーム、コミック、CD、ライブイベント等を縦横無尽に横断する。実際のところ、こうしたマルチタスクをこなすゲームタイトルは遥か昔の時代からあった。ドラゴンクエストはその典型例であろう。ドラクエの場合はライブイベントが演奏会にあたる。 しかし、従来までのクロスメディアと「UMAMUSUME PROJECT」が異なる点は(あらかじめ)「ウマ娘」という名のキャラクターによる「個性」が著

第10話「名馬」の擬人化(という発想の源)

馬の擬人化(美少女化)。はたしてそのような途方もないことを突然思い浮かぶ人はいるのだろうか? あ!そう言えば昔、言葉を話す埴輪と馬が居たぞ! 「おーい!はに丸」(1983年から1989年までNHK教育テレビで放送された幼児向けの言葉の教育番組に・・・)。 サイゲームスの中に居るアラフォー世代(おおよそ36歳から44歳まで、40歳前後)は間違いなくお馬のひんべえを知っている(笑)また、小学生の時に国語科目で「スーホの白い馬」を経験し、小学生から高校生までの期間で「みどりの

第11話:「推し」の構造(※九鬼周造の話ではありません)

生物学的な観点からみれば、男性と女性の恋愛感情は異なる。機能的には男性は複数の女性を愛し、女性はひとりの男性に尽くす(はずであると思いたい、笑)。近代社会においては「一夫多妻」(論争)はあっても「一婦多夫」は倫理的な側面からなかなか生じづらい。 日本の男性アイドルグループは決して大人数ではない。しかし、女性のアイドルグループは大人数を可能にさせる。それができるのは、男性は複数の女性に愛の眼差しを向けることが容易いからである。より厳密に言えば、そのような欲望にマッチしたものを

第12話:美少女アスリートの商品価値

想像してごらん!競馬を知らない人がウマ娘のテレビCMを観ている姿を 想像してごらん!女の子が芝の上で走っている姿を 想像してごらん!「ウマ娘」というタイトル抜きの世界観を 単なる陸上競技やないかーい!笑 それも競馬場で走ってる・・・ アニメーションで女子陸上部の熱血物語(姿)を日々見せつけられている私たち そこに馬のコスプレをしながら走っている人間との違いはあるのか。 少女A「兄ちゃん、これどんぎつねさんときつねダンスの馬バージョンや!」 その兄「節子、そない

第13話:アイドルの多様化①

女性アイドルについて真剣に書こうと思ったら、シャーペンの芯が折れた。 チーン!(心が折れた音) そう言えば、私はこの分野についてあまり詳しくなかった。 調べるのも面倒だから、私が調べなくとも知っている人たちを中心に書いていく(ことにする)。 逆に言えば、私でも知っているくらい有名だったということだ。 どうしよう。 美空ひばりの「東京キッド」、並木路子の「りんごの唄」、笠置シヅ子の「東京ブギウギ」は歌謡曲になるだろう。 吉永小百合は女優のイメージがあるからその領域