🦩Baby Flamingoの思い出🦩

Baby Flamingo（ベイビー・フラミンゴ）というミックスバーが2019年12月から2021年11月まで大阪市北区兎我野町にありまして、僕は心底、それこそ誰よりもお世話になっていました。そのざっくりとした思い出。

いかがわしい繁華街を無駄に歩くというのが個人的な趣味でもあり、2019年の12月に梅田のラブホ街である兎我野町をふらふらと歩いていたところ、偶然にも「LGBTQ+歓迎」と書かれた看板を見つけて、そのまま入ってみた…というのは微妙に嘘で、現代人としては入る前にまずスマホでめっちゃ調べたのは事実ではある。なにやらその時点でつい最近できたお店で、セクシャリティ関係なく楽しめるバーらしい、ということと、なにやら女の人がやっているということはわかった。

この辺はちょっとあとの看板だけどこんな感じだった

ちょうどその頃、僕も行きつけのバーが福島駅前にあってそこを中心に楽しんでいたのだけれど、そこのスタッフも限界まで少なくなっており、どこか違う巣を見つけたいという思いがあったのも事実ではあり、新しいところにチャレンジしてみたい気持ちもあった。
ミックスバーという概念も、坂上秋成『惜日のアリス』を読んで、ゲイバーとかビアンバーに近いけれども様々なセクシャリティの人が集まるバーだということは知っていた。シスジェンダーでヘテロセクシャルの男性である僕が入っていいのかは若干悩むところはあったものの、「セクシャリティ問わず」であるということで、意を決して入店してみることにした。

店内は異様な…と言ってしまうと失礼かもしれないけど、いや、やっぱりあれは異様だったな…と思える内装で、壁一面にハートマークが描かれていた。すげぇなこれはと思ったものの、すぐに慣れることになる。

文字通りその場の名前で「まま」を名乗る若いオーナーのママがいて、基本的に人の外見に言及するべきではないと思っているのだけど、男性である僕と同じくらいに身長の高い美人だった。とりあえず「シスジェンダーのヘテロセクシャルの男性ですが問題ないですか…？」などと言った覚えがある。「難しい言い回し知ってますね」とか言われた。単純に界隈的に言えば「ノンケ」で通用する模様。そりゃそうだ。
ちなみに僕は単にノンケの男性である。Ace（アセクシャル・アロマンティック）に親和的でありたい傾向もややありつつ、別に恋愛感情がないわけでもないし、違和感のない男性身体で、女の人を好ましいと思う方です。
「うちはだいたいレズビアンがやってます」ということで、その場ではまずはそういう状態なんだなと思っていた。確かにお客さんもその場では女性だけだった。数杯飲んで退店。印象としては良いところだなと思った。その後もそれほど頻繁ではないものの、まずはときおり行ってみようという程度で行っていた、のだが…。

2020年3月以降、社会状況が大幅に変わる…。皆さんご存知、新型コロナウイルス…。今も続いてますが…。困る…。
このあたりの細かい記憶はそれほど多くはない。僕の仕事が在宅勤務になったり、お店がどこもやってなかったりして、生活の多くが変わった、けれども、結局のところ根は変わっていないので、飲み屋に行きたい気持ちはずっとあった。

コロナが小康状態になった頃に、またFlamingoに行くようにはなった。
あの店、今でもおかしいと思うけど、ノンケの男性チャージが1,000円（セクシャルマイノリティの場合はチャージ500円、時間は無制限）で、ドリンクは1杯700円で、それ自体はよくあるので問題ないのだけれど、焼酎などのボトルを入れた場合でもチャージ代は変わらず、なおかつ割るための水と氷が無料なので、ボトルを飲み切らない限り1,000円で帰れてしまうというバグがあった。僕はボトルはジャスミン焼酎の茉莉花（4,000円）を入れていたけれど、それでも全然安い。結果的に言えば僕はめちゃめちゃFlamingoに行くことになったのだが、この料金設定のバグが理由の一つなのも否めない。
とはいえ僕もそれなりに焼酎の水割りを飲む方なので、フラットに言えば2.5回に1回は新しいボトルを入れてましたが…。場合によっては1日で1本飲んでたな…（それでも5,000円で帰れるのだが）。それはまぁ、僕自身の判断なので何の問題もない。

居心地の良い空間だったのは間違いなく、カウンター4席とボックス2〜3席でのわりには店内はやや広く、店内後方にあるお菓子が食べ放題なのもあって、わりと適当にうろついたりもしていた。
ままがこれまたファンキーな人間であり、スラッとしたスタイルの良い美人とは思えないくらい体当たりでわけのわからない企画やコスプレをしていた。全身タイツはもとより、顔を塗ってバイキンマンとかカバオくんとかやってたな…。節分には豆とかぶつけてました。

もちろん飲み屋の会話なので細かいところは言わないけれど、じわじわと通ううちに、ミックスバーと言いながらもレズビアンの女性がやっているところはほぼビアンバーに近くなるということがわかった。実際、客の8割くらいはレズビアンだったと思う。ときおりゲイがいたりもしたけれど、事実上のビアンバーだった。その中にノンケのおじさんが1人（あと何人かは男性もいましたが…）。なにがなにやら。
その他、「フェムが」「ボイが」「cosyで」「どこぞのビアンバーが」等々の話題を耳にして、レズビアン界隈的な感覚を知るようにはなった。
あとサンプル数50くらいでしかないけど、30歳以下くらいの飲み屋に来るレズビアン当事者であれば女性同性愛者の呼称は「レズ」が一般的なんだなとは思った。個人的には「レズビアン」と言うようにはしてますが、（おそらく黒人にとっての所謂Nワードと同じように）世代や界隈や当事者性によって呼称の感覚と気軽さには違いはある。

2020年9月の時点で誰かに僕の似顔絵を書いてもらっている形跡があり、そのときには結構な頻度で行って顔を知られているおじさんになってきていた。レズビアンといえば男の人に近寄りたくないものと思っていたし、それこそ今でもそう思ってもいるので、自分にできる程度の対応をしてきたつもりだけれど、なにやらじわじわと「無害なノンケのおじさん」であることが定着してきたように思う。自己評価としてだけ言うのであれば「俺は安全だよ〜」と言っているようでクソダサい話なのだけど、これは、外から聞いて本当に嬉しい評価でもあった。自分が目指しているものと外から見られるものが合致するというのはありがたいことではある。
「スパルタさん学校の先生みたいだよね」とも言われた。性的に見ない／見られない（ように思われていると釘を刺す）ものとしては的確な表現だったようにも思う。それもまた嬉しい話。

レズビアンと話す上で、というより女性と話す上で、最も単純な倫理観として、「言い寄らない」「触れない」「ワンチャンなどない（性行為に持ち込もうとしないし性的な目で見ない）」というのは保持したいと思っています。フェミニズム（というと一部のインターネット上では評判が悪いのだがそんな悪評は犬にでも食わせろ。とても大事なことです）に影響を受けた、とかいうのも本当に表面的でしかないことで偉そうに言えるものでもなんでもないのだけれど、ベースとしては人の嫌がることをしないという単純なことをその場その場で積み重ねるしかないとは思っていて、それは自分なりに実践しようとしてきたつもりではある。もとよりノンケの男性で警戒されるべき存在として、それは表面上でもなんでも保ちたい。結果として（個別人生的には様々な変化と失敗はあれど）今がある。

そんなこんなでレズビアンの知り合いがじわじわと増えたのが2020年。
Flamingoは店内構造的にも結構お客さん全体で話したりゲームしたりできる場所だったので、色々とお互いに混ざって知り合いは増えていった。
2020年の12月にお店の周年だったのだけれど、そのときは20人あまりの知り合いのレズビアンとノンケのおじさん（僕）という状況があって、良い意味で「僕は今どこにいるのか…？ この場所にいていいのか？」と思ったのは覚えている。

レズビアンの知り合いが増える中で、ビアンバーは当然男性の立場で入れないし入らないし入ろうとするべきではないけれど、男性でも許可があれば入れる極めてビアンバーに近いミックスバーもいくつか紹介してもらった。まずはDopeとosokoに行ったりもしましたし、知り合い経由で許可をもらって来夢にも入りました。結果的に今でも行っています。

2021年には元日からosokoに行って偶然にもFlamingoのままと会ったりした。僕は無神論者なので初詣とか気にしない方なのだけど、ある意味osokoが初詣だったな。結果的に、この初詣が効果あったのか何なのか、2021年もレズビアンの知り合いの増加が加速することになる。
そんな2021年も、コロナの絡みで開いたり閉まったり時短営業したりアルコール提供なしになったりと紆余曲折あったけれども、都度都度Flamingoに通っていった。

知り合いが知り合いを呼び、新たな店を更に知るということが続いていた。何度も言っている通り周囲のほとんどがレズビアンのため、Flamingo閉店後などに
「MODEL行ってくるー」
「堂山？」
「今日は神山」
といったレズビアンの会話を聞いて、いろんなビアンバーの存在と多少の店子を知ることにもなった。当時はりんご館のMODEL神山に行くお客さんが多く、自然に聞いているだけで耳年増になったりもした。このあたりのことが今に至るものに繋がるとは、そのときは思っていなかったけれど。
ときおり知り合いをりんご館の前まで送り届けるということもあった。「スパさんは性的な目で見てこないからいいですよね」と言われたのは今でも嬉しい話。

Flamingoのままがファンキーな人間なので、唐突に僕のステッカーを作られたりした。事後だけど何の問題もなく許可しました。意味わかんねぇけど、とても嬉しい話でした、意味わかんねぇけど。いいんですよ。むしろどれほどのわけのわからない店で、どの程度の地位を築いていたかを示す一端ではある。ずっとこの顔アイコンのボトルに茉莉花を入れ替えて飲んでたな…。親の顔より見た俺の顔…。何もかもが懐かしい。まだおうちにこのボトルあるけどね…。

わけわからん俺の顔たち

自粛期間中でアルコールも出せず時短営業だったけれど、2021年の8月25日、僕の誕生日にはFlamingoで祝ってもらった。本当にありがたい話です。

その頃には元々ビアンバーだったCOLLECTIONもミックスバーになって男性も入れるようになったので誕生日の後に行っていたら、Flamingoのままたちと「アウル（梅田のクラブ）行こう」という話になって複数人で行ったりもした。若いレズビアン数名とおじさん1名でクラブに行くというまさかの謎体験。

おちんちんキーホルダーをもらってうろついてたら警察にそれを見せる羽目になったこともあるけど、その話は以前書きました。

自粛期間中にアルコールが出せないのでメイド喫茶になったりもした。謎の反復横とび大会もやった。花と月の店舗を使って運動会もやった。何を言っているのかわからねーが、事実上のビアンバーがやることなのかという謎の体験が色々とあり、いつの間にかTwitterの相互フォローのレズビアンが50人以上になり（知り合いだけで言えばもっとずっと多い）、行けば誰か知り合いがいるようになった。夢のような空間だった。
お店としても「いろんなセクシャリティの人が楽しめるところにしたいな」と思っていたと思うのだけど、一番エンジョイしていたのがノンケのおじさんだったというのは想定外だったんじゃなかろうか…。何やってんだこのおじさん…。

やや唐突にはなるけれど、そんなFlamingoも2021年11月で閉店することになった。
店というものはいずれ閉店することにはなるし、そういう体験は何度かあったので慣れているし、社会状況的にもコロナでわけわからんので致し方ないことではあるけれども、やはり悲しかった。理由は知らないけれど、客の立場で深く問うべきでもないとも思う。大人には色々とあるし、それはそういうものだと思ってます。
やや断続的な営業ではあったけれど、2021年9月以降は全営業日行った。普通に店子より店におるやんけ…。それでええねん。
間違いなく誰よりも多くの出会いをもらい、あの店で誰よりも恩恵を受けたのは僕だと思う。皆さんには心底感謝してます。

ちょうどFlamingoが閉店する前、2021年9月に、元々別のところの方々が（ほぼビアンバーに近い）ミックスバーを開店する情報も入ってきていて、結果的にFlamingoの閉店と入れ替わる形で今度はそちらに入り浸るようになりました。お初天神のDIVEには現在進行系で心底お世話になっています。これもFlamingoに行ってなかったら存在自体を知ることもなかったんだろうな…と思うと、やはりFlamingoが起点だったのは間違いない。DIVEでも今までのFlamingoの残党を起点として更にまた友好的な知り合いが増加しており、嬉しい限りです。

Baby Flamingo、はっきり言ってわけのわからない店だったし、わけのわからないお客さんも多かったし（みんな好ましいと思ってますよ！）、わけのわからないオーナーだったし（立派だと思ってますよ！！）、なにより僕自身が最もわけのわからない客だったけれど、それらを総合して、とても素晴らしい場所でした。その点は改めてお伝えしたいと思います。
というか本当に値段的に安かったな…（まだ言う）。僕の飲み方に合ってたんですよね…。まぁこういう締め方をしちゃうのも照れ隠しなところはあるけど、様々な面で本当に良かったです。今更ながらだけれど、ありがとうございました。おかげさまで僕は今も界隈を楽しんでます。

🦩ありがとうございました🦩

🦩スペシャルサンクス
まま、まいこぴ、りこちゃん、しゃくさん、ほしぴ、こうちゃん、みこっちゃん、まいかちゃん、加藤ちゃん、サヤちゃん、ひつじちゃん、みずしまさん、ライト君、ゆまさん、みなみ君、えみちゃん、ほっしーさん、りんちゃん、ゆーき君、みーさん、ちゃーちゃん、おもちちゃん。
皆さんの人脈でどれほどに世界が広がったことか…。現在進行系で本当にありがとうございます。