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sparrow tearsの読書

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#韓国文学

【読書感想文】韓国発『主婦である私がマルクスの「資本論」を読んだら』の最終章でクソ泣いた

少し前、日本の首相が「経済!経済!経済!」と連呼していた。 いわく「経済は一丁目一番地」だそうだ。   でも、ほとんどの国民はもう気づいている。 彼らのいう「経済」がひどく狭い意味であることを。   例えば、私の母が介護施設で利用者を楽しませるために自宅で寝る間を惜しんでレクリエーションのアイディアを練るプロセスは、彼らの考える経済に含まれていない。   家族を看病したり、吐しゃ物や排泄物を掃除したりして、感情をフル稼働する労力は経済にきっと含まれていない。   少子高齢化

ハロウィンの週末に韓国の『フィフティピープル』を読み返した理由

凄腕の韓日翻訳者たちの活躍があり、原文をくみとった美しい日本語で韓国の名作を読めるようになった。   近年の翻訳物を読んでいると、2014年のセウォル号の惨事と、そこに至るまでの社会的な背景は、韓国文学界にも多大な影響を与えたことがわかる。   さまざまな作家がそれぞれの想像力を駆使し、市井の祈り、その後の日常、あったかもしれない別の結末の物語を生み出している。   そして、この週末「あったかもしれない別の結末」を思わずにいられない事故が起こった。昨日、朝一番のラジオニュース

【読書感想文】「結婚式の加害性」がトレンドワードになる『優しい暴力の時代』

映画やドラマの伏線探しや深読みは楽しい。   ストーリーの中の小道具の銘柄や花言葉、セリフから作者の意図をくみ取るのは謎解きゲームのようにワクワクする。   ところが、推理ゲームでは役立つ「深読み力」が、日常生活の人間関係においてかえって邪魔になることがある。   ――あのほめ言葉は皮肉なのかもしれない   ――その善意は「こんなこともできないの?」という見下しなのかもしれな い ――あの慰めは自分の言葉に酔っているだけかもしれない。 さらに、言葉のみのらず、個々の属性で