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sparrow tearsの読書

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2024年4月の記事一覧

『自分以外全員他人』を読みながら加藤諦三のポッドキャストを聴いたら、脳がオーバーヒートした【読書感想文】

太宰治賞を受賞した小説『自分以外全員他人』。 タイトルのままに解釈すると、自分と自分以外の人間に一線を引いて、家族さえも「他人」と断ずる物語のように思えるかもしれない。 しかし、読み進めていくと、その真逆であることが浮かび上がっていく。 主人公は真面目に、まっとうに、人に迷惑をかけずに生活している。 だが、人間関係にも将来にも希望を見出せず、仕事でも私生活でも「喜」「楽」といったポジティブな感情とは無縁の暮らしを送る。一方、人に迷惑をかけている人をみると「怒

ワン・イーボー(王一博)が日本の小説に初登場!?『パッキパキ北京』めちゃおもろい【読書感想文】

綿矢りさの小説『パッキパキ北京』(集英社)は、年度替わりのバッタバタの生活で疲弊した心に効いた。 「癒す」でも「ほっこり」でもない。「何か楽しいこと、したい!!」という前向きな読後感をもたらす。 主人公は、自分の欲望に正直。フレネミー(友人の顔をした敵)のマウントも、不測の事態にも動じない。 そんな主人公が、コロナ禍後期の中国に駐在中の夫に呼び寄せられる。 夫は、ハイキャリアな雰囲気で、文学の素養があり、中国文化に詳しい。だが、異文化にはなじめておらず、疲弊し