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リスクマネジメント【SPARKLE LEGAL】

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スパークル法律事務所が発信したリスクマネジメント関連の記事を集めたマガジンです。
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#リスクマネジメント

顧問弁護士がいない場合と困るのは何故?トラブル発生時のリスク

(初出:2021/04/01)  いざ法的な問題が発生したとき、会社に顧問弁護士がいないと、様々な支障が生じ、大きな法的リスクにつながる場合があります。以下では、具体的にどのような支障があるか、顧問弁護士が居ない場合のリスクについて解説します。 弁護士の選択や契約に時間がかかる 顧問弁護士がいない場合、発生した法律問題に対応するために、新たに弁護士を探さなくてはなりません。まず、弁護士の知り合いを探す必要がありますし、候補となる弁護士が見つかったとしても、その弁護士の専門

顧問弁護士の必要性と選び方~顧問弁護士とは?

(初出:2021/04/01) 顧問弁護士とは 顧問弁護士とは、会社から継続的に法律相談を受任することを約し、顧問契約を締結している弁護士のことをいいます。個人との間で顧問契約を締結している場合もあります。  顧問弁護士は、クライアントである会社から多岐にわたる法律相談を受けることで、その会社の事業内容を熟知し、経営者や担当者との信頼関係を築きます。これにより、会社側は、その都度、会社の事業内容や背景などの細かな説明をすることなく、スムーズに法律相談を行うことが可能になり

【リスク管理特設サイト】削除請求・発信者情報開示請求の「案内図」

匿名者・不特定多数者とのネットトラブル 企業法務を中心に取り扱うスパークル法律事務所の【リスク管理特設サイト】では、ビジネスパーソン・企業の担当者向けに、ITやインターネットに関連するリスクマネジメント・紛争解決に有益な事例等の情報をnoteでまとめ、発信しています。  近年、インターネット・スマートフォン・SNSの普及に伴い、誰もが情報の「送り手」となり、同時に誰もが情報の「受け手」となる時代となりました。そして、情報の「送り手」は、匿名であることや、不特定・多数であるこ

アンチスレでのYouTubeスクショは著作権侵害か?:発信者情報開示(認容)

ポイント 今回は、YouTuberである原告が、インターネット上の匿名掲示板のアンチスレに原告のYouTube動画のスクリーンショット画像等を投稿した第三者の発信者情報(本件発信者情報)について、アクセスプロバイダ3社に対して、著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害するものであると主張し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求めた事案をご紹介します(東京地判令和4年11月10日令和4年(ワ)第11853号)。  東京地裁は、本件発信者情報の開示請求を

「100%ブラック企業w」という投稿の発信者情報開示請求(認容)

ポイント 本件は、情報サイトに「100%ブラック企業w」等と書き込まれたことに対して、そのような書き込みをされた企業が発信者情報開示請求を行った事案です(東京地判令和4年7月29日令4(ワ)3808号)。  東京地裁は、原告の社会的評価が低下したことは明白であるとした上で、違法性阻却事由も存在しないとして、発信者情報(氏名又は名称、住所及び電話番号)の開示を認容しました。  本判決のポイントは、以下の点となります。 1.事実関係と争点 原告は、「株式会社XY」という商

フジテレビの炎上対応:発信者情報開示(一部認容)

ポイント 本件は、フジテレビ(原告)が、「ステマ疑惑」炎上後に起きた女子アナへの誹謗中傷に対して、アクセスプロバイダであるNTTコミュニケーションズ(被告)に対してプロバイダ責任制限法(※2024年改正法で情報流通プラットフォーム対処法[略称「情プラ法」]に名称変更)に基づき、発信者情報開示請求を行った事案です(東京地判令和4年2月15日令和3年(ワ)第28780号)。  東京地裁は、氏名・住所については、開示を認めましたが、電話番号及びメールアドレスについては、開示を認

インサイダー取引規制とは-具体的事例の紹介

(初出:2023/02/25) 文責:スパークル法律事務所  インサイダー取引規制の概要と、近時の事例について、紹介します。 インサイダー取引とは インサイダー取引とは、規制の対象となる有価証券についての重要事実を知った会社関係者が、その事実が公表される前に、その有価証券の取引を行うことをいいます。例えば、会社に勤めていると、当然ながらその会社の内部にいるからこそ知ることができる情報が多々あります。その中には、新製品を販売することになった、工場で火災があった、など、その

公取の立入りがあった場合の対応(公正取引委員会の立入検査~独禁法違反事件への対応)

文責:弁護士 三谷 革司  近時、電力会社の巨額の課徴金納付事案や、東京オリンピック・パラリンピックに関連した入札談合疑惑など、談合やカルテルによる独禁法違反事件が大きく報道されている。本稿は、公正取引委員会(以下単に「公取」という)の立入りがあった場合を想定して、その場合の対応について概略を説明するものである。  公取は、事件の端緒に接した後、様々な情報源から情報を収集して内偵を進める。一方、対象事業者は、そのことを知らず、違反行為を継続している場合も少なくない。通常は

ジャニーズ事務所「性加害」問題に見るリスクマネジメント

文責:スパークル法律事務所 (※本記事は、2023年5月18日配信のスパークル法律事務所ニュースvol.7の内容です。)  2023年5月14日夜、大手芸能事務所のジャニーズ事務所は、創業者・前社長による「性加害問題」につき、現社長が出演する動画を公表し、あわせて「見解と対応」の文書を発表しました。本件については、性加害・セクシャルハラスメントや、危機管理・予防等、様々な論点があるところですが、既存のリスクのハンドリングという観点から考察し、当事務所からの若干の提案につい

平時における社内体制の構築~ビッグモーターの保険金不正請求を受けて~

文責:スパークル法律事務所 (※本記事は、2023年7月27日配信のスパークル法律事務所ニュースvol.10の内容です。) 社内体制はどのように構築するのが良いか 中古車販売大手の株式会社ビッグモーターが自動車保険金を不正に水増し請求していたことが判明し、連日大きく報道されています。2023年7月25日、ビッグモーターは本件について記者会見を行い、その場で創業者である社長及び副社長が辞任を表明する事態に至りました。不正請求の手口は、社員が顧客から預かった車両を意図的に傷つ

社内規程の「正の効用」~ジャニーズ調査報告書の公表を受けて~

文責:スパークル法律事務所 (※本記事は、2023年9月5日配信のスパークル法律事務所ニュースvol.11の内容です。) 株式会社ジャニーズ事務所のスキャンダルについて、外部専門家の再発防止特別チームによる調査報告書 が開示されました。非上場の同族会社であるにも関わらず、代表取締役社長の辞任による「解体的出直し」が必要との提言がされており、その背景としてガバナンスの基礎となる社内規程類が欠如していることが指摘されています。そこで、これを期に規程の正の効用について少し考