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リスクマネジメント【SPARKLE LEGAL】

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スパークル法律事務所が発信したリスクマネジメント関連の記事を集めたマガジンです。
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#発信者情報開示請求

疑問文でもプライバシー侵害?企業・取締役の発信者情報開示請求(一部認容)

ポイント 今回は、原告である取締役(X1)と会社(X2社)について、インターネット上の掲示板上で匿名投稿者からネガティブな投稿が行われたのに対し、X1らがアクセスプロバイダである被告に対し、発信者情報開示請求を行い、請求が一部認容された事案(東京地裁平成30年6月29日平30(ワ)5456号・平30(ワ)5504号)です。  X1を原告とする第1事件では、名誉権、プライバシー権の侵害等が争われ、東京地裁は、原告の容貌(美容整形)に関する当該投稿については、それ以前の整形に

動物病院のGoogle口コミ投稿について削除の仮処分が認められなかった事例(却下)

ポイント 今回は、「Googleの口コミ」上の投稿について、コンテンツプロバイダであるGoogleに対し、仮処分手続によって削除を求めたものの、認められなかった事案(大阪地裁令和3年11月1日決定令和3年(ヨ)第40号)をご紹介します。氏名不詳者が、動物病院や勤務する関係者についてネガティブな内容の投稿を行っていたため、動物病院の運営会社であるXら(債権者)が人格権を侵害されている旨を主張し、削除の仮処分命令の申立て(民事保全法)を行った事案です。  大阪地裁は、問題とな

【リスク管理特設サイト】削除請求・発信者情報開示請求の「案内図」

匿名者・不特定多数者とのネットトラブル 企業法務を中心に取り扱うスパークル法律事務所の【リスク管理特設サイト】では、ビジネスパーソン・企業の担当者向けに、ITやインターネットに関連するリスクマネジメント・紛争解決に有益な事例等の情報をnoteでまとめ、発信しています。  近年、インターネット・スマートフォン・SNSの普及に伴い、誰もが情報の「送り手」となり、同時に誰もが情報の「受け手」となる時代となりました。そして、情報の「送り手」は、匿名であることや、不特定・多数であるこ

【令和3年改正法】懲戒免職された元教員によるプライバシー侵害等を理由とした発信者情報開示命令の申立て(申立却下)

ポイント 今回は、プロバイダ責任制限法(※令和6年(2024)改正法で情報流通プラットフォーム対処法[略称「情プラ法」]に名称変更)の発信者情報開示命令事件手続(同法8条以下)の事案(東京地決令和5年7月18日(発チ)第287号)をご紹介します。生徒へのわいせつ行為により懲戒免職となった元教員の申立人が、その旨を摘示したYouTube動画について、コンテンツプロバイダ(Google LLC)に対し、名誉権・プライバシー侵害を理由に発信者情報開示命令を求めましたが、東京地裁は

Googleに対して、「なりすまし」による口コミの削除と損害賠償を請求した事例(削除認容)

ポイント 今回は、Googleの口コミ上のなりすまし投稿について、コンテンツプロバイダであるGoogleに対して削除請求(及び損害賠償)が行われた事案(大阪地判令和2年9月18日(令和元年(ワ)第5554号))をご紹介します。本件は、何者かが他人の名前でネガティブな投稿(なりすまし投稿)をしたのに関し、なりすまされた原告が被告(Google)に対してまず発信者情報開示を求めて開示命令まで得たものの、被告側から発信者情報が確認できないとして開示されなかったため、別途、投稿記

【令和3年改正法】新手続下での発信者情報開示命令事件/却下決定に対する異議事件(却下決定認可)

ポイント 今回は、プロバイダ責任制限法(※令和6年(2024)改正法で情報流通プラットフォーム対処法[略称「情プラ法」]に名称変更)の発信者情報開示命令事件手続(同法8条以下)の事案をご紹介します(東京地判令和5年7月6日令和5年(ワ)第70144号)。この事案では、写真の著作物性を認めずに著作権侵害を否定し、発信者情報開示命令申立てを却下した原決定に対し、原告が異議の訴えを提起したものの、やはりその主張は認められず、原決定が認可されています。  法改正後も、従来の発信者

競合商品の美容アフィリエイト広告の発信者情報開示(認容)

ポイント ウェブサイトに自社商品の悪評が書かれている場合、どのような対応をすることが考えられるでしょうか?個人が運営するウェブサイトの場合、そもそも誰が運営しているのかが分からず対応に困るということもあり得ます。  他社のアフィリエイトサイトに自社商品との比較対照を内容とする投稿がされ、それによって自社商品の信用が毀損されたとして、当該投稿をされた企業が他社のアフィリエイターの発信者情報に関し、ウェブサーバーの管理者に対して発信者情報開示請求を行い認められた事案がありまし

アイドル本人による「なりすまし」への発信者情報開示(認容)

ポイント Twitter(現:X)において、あたかもアイドル本人が「裏垢」として運営しているかのような「なりすまし」アカウントを作成し、アイドル本人になりすまして問題投稿を行っていた第三者の発信者情報について、アクセスプロバイダに対して開示請求をし、許容された事案(東京地判令和4年8月24日令和4年(ワ)第14708号)をご紹介します。  東京地裁は、原告の高校の入学式の写真の投稿について、「自己の容貌を撮影した写真をみだりに公表されない人格的利益」を侵害すると判断し、ま

「100%ブラック企業w」という投稿の発信者情報開示請求(認容)

ポイント 本件は、情報サイトに「100%ブラック企業w」等と書き込まれたことに対して、そのような書き込みをされた企業が発信者情報開示請求を行った事案です(東京地判令和4年7月29日令4(ワ)3808号)。  東京地裁は、原告の社会的評価が低下したことは明白であるとした上で、違法性阻却事由も存在しないとして、発信者情報(氏名又は名称、住所及び電話番号)の開示を認容しました。  本判決のポイントは、以下の点となります。 1.事実関係と争点 原告は、「株式会社XY」という商

フジテレビの炎上対応:発信者情報開示(一部認容)

ポイント 本件は、フジテレビ(原告)が、「ステマ疑惑」炎上後に起きた女子アナへの誹謗中傷に対して、アクセスプロバイダであるNTTコミュニケーションズ(被告)に対してプロバイダ責任制限法(※2024年改正法で情報流通プラットフォーム対処法[略称「情プラ法」]に名称変更)に基づき、発信者情報開示請求を行った事案です(東京地判令和4年2月15日令和3年(ワ)第28780号)。  東京地裁は、氏名・住所については、開示を認めましたが、電話番号及びメールアドレスについては、開示を認