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それはパンが焼き上がるまでの時間

 しばらく書くことがご無沙汰になる。以前、書いていた「ウニの針」というblogは年始に今年こそはもう少し、ぼちぼち書いていってみようと思う、と書いて、ついに次の年明けまで結局何も書かないということがここ数年毎年繰り返されていた。忙しいと後回しにしたくなる。もしくはせざるを得ない。と私は思い込んでいる。

 実は今、どうもあまり調子が良くない。こういう時は大抵、思い込んでいる私と実際の自分にズレが生じている。そういえば、昔どこかであった占い師が、自分が母親の胎内にいる時の、母親の精神状況というのが、自分の年間のバイオリズムに大きく影響していると言っていた。大抵母が自分を妊娠してから安定期に入るまでの3〜4ヶ月間くらいが、1年の中で波が下がる時期で、その他にも大きな不安があったりとか、妊娠中の母に起きたそういうことが私の年間の波を形成していると。私は5月生まれなので、母の妊娠が分かったのはおそらく8月。それから安定期になるまで11月の間、母が一体どんな精神状況であったか。まず初産であったこと、つわりは普通にあったと聞いた気がする。そして何より、母は父の実家で父母と同居であったこと。これまた父の母というのがかなり強烈な人物で、結婚したときに「よくあそこに嫁ぎましたね」と近所の人に言われたくらいなばあちゃんである。結婚して姑と同居だけでも緊張なのに、まあそれが一番相当な精神的抑圧であったに違いない。父と同じ会社で働いていた母は臨月近くになるまで会社に勤めていたという。住んでいた父実家は武蔵小金井で、職場は町田。車で片道1時間かけて毎日一緒に通っていたというから、結構しんどかった時もあったと思うが、まあ実家で過ごすよりも無理して通勤していた方が良かったのだろう。そんな車通勤のおかげで私は車酔いを一切しないのだと思っている。何故その話を占い師から聞いたかというと、私はそのころ8月からいつも調子がおかしくなっていた。それは自分が今まで通り、一生懸命やっていても一向にその声が周りに届かないという類のものだ。時にはなんでちゃんとやらないのかと強く言われたりする。そういうことが連続する。周りが見る自分と自分が捉えている自分があまりにもかけ離れていて、そのうちにどうにかしようと他人に合わせてみたりしていよいよワケがわからなくなる。もがいてももがいてもどうにもならないのだが、11月頃に嘘のようにすぽっと突然抜けるのだ。8〜11月、まさに母親の妊娠〜安定期までで、生まれた5月なんて毎年最高である。このチグハグもやもやした感じは確かにその通りかもなあ、と思った。毎年、8月になると仕方ないよ、大人しく過ごそうとあれこれ策を練っていたが、ここ数年間はあまりそういったことを思うことなく過ごしていた。夏は毎年ツアーを入れて、楽しく多くの人と触れていい時を過ごしていた。秋まではたくさん演奏の機会があって、とにかく忙しく充実していた。

 そんなわけですっかりそんな周期を忘れていたのだが、今年、久々にあんまりうまくいかない夏を迎えている。久々なので逆にだいぶ客観的に一体なんなんだと自分を見てみている。それを書いていってみたらどうかと思っている。昼頃に捏ねたパンを、今ガス釜に突っ込んで焼いている。その20分でいい。大したことでなくてもいい。思ったことを連ねて見えることというのは必ずある。私は今いったい何を思い込んでいるのか。今の私の形はどんななのか。そこから抜け出そうとしている自分がいる。深夜、パンが焼けるまでの時間に思ったこと。


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