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一週遅れの映画評:『1917 命をかけた伝令』はいっそれでは1917、始めていきたいと思います!

 なるべく毎週月曜日に映画を観て、一週間寝かしてツイキャスで喋る。
 その内容をテキスト化する再利用式note、「一週遅れの映画評」。

 今回は『1917 命をかけた伝令』です

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 これ監督のインタビューにもあったんだけど( https://mashable.com/article/1917-movie-review/ )、TPSのゲームをかなり意識はしているらしいのね。Google翻訳にブチ込んで読んだから細部は間違ってるだろうけど、ざっくりと把握した感じでは。
 ちょっと前まで『Fallout4』の実況やってたこともあって、ものすごいオープンワールドの洋ゲーっぽいって感覚がずっとチラついていて……。だからこそ「映画とゲームの違いってなんだ?」ってことを発見できたかな。
 
 ゲームってまぁ当然画面には自分の操作するキャラクターがいて、でまぁ敵みたいなものが、それは単純にモンスターだけじゃなくて落とし穴とかパズルとか、あとは会話する相手とかも含めてだけど、存在している。そういう画面を見ながらコントローラーを握って操作していく。
 『1917』もかなりTPSゲーっぽい画面構成で、基本的には主人公が画面中央あたりをフラフラしてて、でなんか障害物が出てきたり味方が話しかけてきたりするわけ、それでもかなりゲームと違うのは『1917』において「敵」って結構近い場所にいきなりフレームインしてくる。ゲームだったら割と理不尽難易度になっちゃう距離と唐突さで襲ってくる。
 これって「緊張感」のある場所の差、だと思っていて。
 
 ゲームでは襲ってくる相手に対し「上手く対処できるか?」つまり上手に操作してクリアできるか?って部分がプレイヤーをドキドキハラハラさせるところで、それは「敵が来るぞ!」っていうのをちゃんと予告しておくことで、近づいてくる脅威に対して「やってやるぞ!」って気持ちを高めて、それが緊張感になる。だから画面に集中もする。
 一方で『1917』は当然映画だから操作はできない、私の手が滑っていきなり崖から落ちたりはしないから、そこは安心。その代わりに「敵」が唐突に画面に現れる、時には「画面の外」で何かが起こって声だけが響き渡る。そうなると視聴者は「次何が起こるんだろう?」って気分になるし、基本ここは戦場だからまぁ大抵は命のピンチが突っ込んでくるわけで「何かヤバイことが起こりそう……」と固唾を飲んで画面を見つめることになる。つまりそこに緊張感が生まれるし、画面に集中することになる。
 
 そう考えると『1917』の演出は凄くホラー的というか、「視界の外で何かが起こり続けていて、それが唐突に主人公へ襲い掛かってくる」みたいな「スゲー金のかかってるブレアウィッチ」って言うとアレなんだけど、それに近いものはあるように思った。
 
 あと装備品ね、持ち物。
 普通ゲームだと進行にしたがって装備はゴージャスになるし、回復アイテムもポーションがぶ飲みしたりみたいな。それで敵もどんどんインフレして強くなるのと、画面の派手さが加速していく。楽勝な戦闘や同じ絵が続くとやっぱり飽きてしまうから、そうやって緊張感と画面への意識を維持させる。
 『1917』は逆にどんどん持ち物が減っていく。主人公最後には手ぶらだからね、戦場で。さすがに第一次世界大戦の敵軍がシナリオ後半だからってインフレ強化はさせられないので、いきなりビームガン撃ってきたらそれはそれで面白いけど、まぁ無いじゃん。だから主人公の装備を剥がしていって弱体化させていく、「あぁもうすぐゴールなのにヤバイヤバイヤバイ」みたいなプレッシャーが画面から溢れだしてくることで緊張感と画面への意識を持続させている。
 
 だからこれが逆だったらものすごいストレスだと思うのよ。ゲーム版『1917』は「理不尽な死と地味な画面と出来ることがどんどん減っていくレベルデザイン」だし、ゲームをそのまま映画にしても「緊張感の無い映像に、派手なだけの演出、特に登場人物の過剰なパワーアップ」って感じになってしまう。
 ものすごく「ゲームを想起させる映画」だからこそ、「ゲームと映画の違い」を明確にしているなーと思いました。
 
 その上で、これをもっとカジュアルにするとたぶん「ゲーム実況」になるんだな、と。
 プレイヤーが微妙に下手でやきもきさせられたり、全然関係無いところ見ていて画面外からいきなり銃撃されて「ファッ!?なに!?どこ!?」って慌てふためいたりする。
 そういう感じで興味を維持させたり、面白さを提供したりするのは、かなり『1917』のテイストに近いんじゃないかな?と感じました。
 
 技術とかコストとか諸々の制約が無くなっていくと、エンターテイメントってどんどん似てくる部分がでるのかもしれない……みたいなことも、まぁ実際はそれほど単純ではないのだけど、思いましたね。少なくともあるジャンルで普通なことを、別の分野に持っていくと新しい視点が生まれるっていうのは散見させるわけで、それに近いことが起こっているんですよ。『1917』では。

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 この話をしたツイキャスはこちらの15分ぐらいからです。

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