音楽3要素の比率でみる「ライヒ」と「おかあさんといっしょ」
こんにちは。コードタクトというEdTechの会社を経営している後藤です。
教育、IT、音楽が専門のEdTech系指揮者です。
さて今日10月3日はミニマル・ミュージックの巨匠スティーブ・ライヒの誕生日です。ライヒを知って戦慄が走ったことを思い出しながら書いています。
ハッピーバースデー Mr.ライヒ。
ライヒの音楽との出会い
クラシック音楽を本格的に勉強し始めた大学生の頃、初めて聴いたライヒの「Music for 18 Musicians」や「Different Trains」の響きに衝撃を受けた。
勉強していたクラシック音楽では体験したことのない斬新な響きと、一方でずっと同じことを反復している民族的でどこか懐かしさもあるリズム。この2つがうまく調和している。
調べていくうちにミニマル・ミュージックという存在を知った。
当時、モーツァルトとかハイドンなどの古典派音楽ばっかり聴いていたこともあり、この新しい音楽に興奮して、ライヒ以外にもフィリップ・グラスなど聴き漁った。
旋律・和音・リズムの比率
改めて構造について考えてみると、音楽の3要素は、旋律・和音・リズムと言われているが、クラシック音楽や私達がよく聞くポピュラー音楽は旋律と和音の比率が高い。
ギターをやったことがある人はタブ譜なんかは正に和音がメインだし、ピアノも左手がドミソなどの和音で、右手が旋律というのが基本だということはなんとなくわかるだろう。和音という土台があり、その上で旋律が奏でられるという考え方だ。
つまり音楽の3要素の中でも「和声と旋律」の比率が高い構造となっている。
私の中ではこんな感じの比率。和音が1番強いのが特徴。
ちなみに西洋音楽はクラシック音楽をベースに発展してきているので、その発展の過程を見るのも面白い。
クラシック音楽はドミソの3和音を基本として構築された理論で、ジャズはドミソシの4和音を基本として体系化されている。
ミニマル・ミュージック
話を戻して、ミニマル・ミュージックは「和音と旋律」の構造ではなく、また別の概念「差異と反復」からなる。
お経のようにずっと同じパターンのリズムと旋律を「反復」する。しかしそれが時間を追うごとにそのパターンがズレたり、発展することで「差異」を生み出す。これがミニマル・ミュージックの基本構造だ。つまりクラシック音楽と違い「リズム」の比率が高い音楽と言える。
私の中ではこんな感じの比率。リズムが強い。
音楽の3要素の旋律・和音・リズムの中で、心臓の周期的な鼓動があるため人間は生まれ持ってリズムを感じている。また手を叩くだけでリズムは作れるので、リズムは最も原始的な音楽の起源とも言える。だからこそ日本を含め様々な伝統音楽は太鼓だったりリズム楽器が多い。
リズムの比率が高いミニマル・ミュージックにどこか民族的だったり懐かしさを感じるのは、そこにつながる。
この動画はそれこそ手だけで演奏しているライヒの作品だ。
ちなみに意外と知られていないことだけど、久石譲や坂本龍一などもミニマル・ミュージックの曲をたくさん書いている。
坂本龍一のこの曲は、ほぼライヒのDifferent Trains感ですが。
インドの民族音楽
また、音楽の3要素の比率を「リズム」に置き、「差異と反復」ではなくリズムの複雑化にもっていたインドの伝統音楽であるヒンドゥスターニー音楽も非常に面白い。
もう笑えるほど楽譜にするのは困難なもので、この動画に強引に楽譜にしたものが載っているが、みるとその凄さがわかる。
私の中ではこんな感じの比率。和音が基本無い。
また、ヒンドゥスターニー音楽のリズムの複雑さを語る上でタブラという楽器がとても大事なので、ザキール・フセインのプレイを聴いてもらいたい。
3連符4連符どころではない、複雑で細かな連符の嵐である。
おかあさんといっしょの音楽の凄さ
小さなお子さんをもつ親の救世主であるところのEテレ「おかあさんといっしょ」で作られる曲って凄くて色んなジャンルの音楽を扱っていて、情操教育として素晴らしい。
本物がyoutubeにはなく、カバーになりますが「てとてとパタン」はヒンドゥスターニー音楽のリズムを児童向けにアレンジしたものだ。
子供向け音楽にインド要素を入れたのって本当に素晴らしい仕事だと思う。
作詞が日本語ラップの先駆けである「いとうせいこう」、作曲がタブラ奏者の「ユザーン」という音楽をわかっているお二人が作ったというところも嬉しい。
「おかあさんといっしょ」だけでなく、「みいつけた!」なども様々な音楽ジャンルを子供向けに昇華させているので、ぜひチェックしてみてほしい。
まとめ
このように音楽の3要素の比率という観点で音楽を見てみると面白いですね。
他にも低音を持続するドローンだったり、工具や電子音などを使うノイズミュージック、単位時間あたりにどれだけ多くの言葉を入れるかというラップなど音の情報量という観点でみる音楽というのも面白いのですが、それはまたどこかで。ハッピーバースデー Mr.ライヒ。
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