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百瀬恒彦 写画展 慈しきひと ーマザーテレサー

写真家百瀬恒彦氏のポートフォリオを拝見したときに、見慣れたはずのマザーテレサの肖像がありました。
そこには、見たことのない、言葉では表現できないこちらを見つめる眼差しがあり、
この時代にこそ、皆様に見て頂きたい百瀬恒彦さんの作品をと、展覧会を企画させて頂きました。
和紙に乳剤を添付して印画紙を作り暗室でプリントしたもの数点、越前和紙にインクジェットでプリントしたものとで20点ほどを展示致しました。
百瀬さんのメッセージの文章、ぜひご覧下さい!!

「特別な人」 マザー・テレサ                           

仕事柄、女性雑誌を中心に数えきれないほどたくさんの人のポートレートを撮ってきたけれど、そのなかでも僕にとっての「特別な人」がいる。マザー・テレサ。
僕がマザー・テレサと出会ったのは、彼女が亡くなる2年前の1995年2月、インドのコルカタ(カルカッタ)にあるマザーの教会「神の愛の宣教者教会」でだった。このときも雑誌の仕事で、事前に施設などの撮影許可は得ていたのだが、当日、マザーがその教会にいるとはかぎらず、しかも彼女は大の写真嫌いで有名だった。
けれどもその日、ミサにマザー・テレサがどこからともなく、影のようにふっとあらわれた。思ったより小柄な人だった。世界中から集まった人々がどよめくなか、一人ひとりに声をかけながら彼女が僕に近づいてくる。マザーの姿を間近で撮りたいと思った僕は思わず、目の前に来た彼女に「ミサのときの写真を撮らせてください!」と言っていた。一瞬、マザーの人の心を見抜くような鋭い視線に睨まれた。永遠にも思われた時間が経過したあと、マザーの口から出たのは「よいでしょう」という一言だった。
あとで聞くと、マザーがミサで祈る写真を撮ったフォトグラファーはほかにいないのではないかということだった。僕自身、あのときの緊張の一瞬一瞬を思い出すと、いまでも心が震えてくる。

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