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現場の下見

電力技術者から、希望して職能転換させて頂き、総務課の経理・資材・渉外などの仕事をしていたことがあります。電柱の敷地管理も含まれていました。電力の特別高圧設備の維持・運用をしていると、一般のお客さまと交渉することはほとんどありませんでしたので、お客さまとの直接交渉は、かなり気を使います。


調査員が青ざめて帰ってきた

お客さま対応で電柱の調査員から、非常に強く文句を言われた、ということで出かけて行ったことがあります。
お客さまは、「電柱を持って帰れ、と言われています。」とか、「前にも話ししたじゃないか。」とかいう事例です。
調査を委託している会社の調査員の女性は、困り果てていました。
その前の話というのが前任者から伝わっていないというのは、組織としては非常にまずいことです。

私もそういうお客様との話というのを、やがては周囲の人から「得意だ」と言われるようになるのですが、実際は得意ではありません。
そういうお客様を1日に何件も相手をする気持ちが、なかなか出てきません。重要なお客さん対応と思われる場合には、1日1件が精一杯です。
そこにかなりの集中はします。

電柱を持って帰れ!

第一に心がけてたことは、まず現場を見るということです。
具体的に言えばお客様と約束がある時間よりも、1時間前には現地に行って、実際に問題になっている電柱やその周囲がどういう状況なのかということについて自分なりによく考えてみます。

こういうことがありました。時間になりそのお宅を訪問すると、厳つい男性が、すでに腹を立てているという表情で出てこられました。
「その調査員が気に入らない、説明の言い方が気に入らない。」ということで非常に立腹されていたお客さまは、会ってしばらくすると、
「この敷地にある電柱をすぐに撤去しろ。」と言われました。

私は先ほど言ったように、1時間前からその現地を見ていましたので、非常に難しい位置に建つ電柱で、しかも重要な位置にあるということが分かっていました。

ですからお客様が撤去しろと言われたらすぐに、「この電柱はとても重要な位置にあります。会社として、この周囲にこの電柱を動かせる位置はなく、非常に重要な場所です。
ですから引き続いて是非お宅の土地を使わせて頂きたいです。調査員が以前の話を知らずに非常に失礼な物言いがあったことはお詫び申し上げます。」という話をしました。

筋が通った人

するとその方は、
「電力会社はこの柱を建てるときに、複数の課長や担当者が何人も来て、『どうしてもこの場所でないといけない。』ということで頼み込んできたから、しょうがなしに建てさせてあげた。そういう経緯があったから、自分が撤去しろと言った時、もしあなたが『お話を会社に持ち帰って検討します。』というようなことを言ったらもう絶対に許さないと思っていた。

あなたは、ここは重要な場所だから、絶対に置かせて欲しいと、すぐに言った。それは建てた時と同じ話だから納得した。だから電柱のお金の精算等は決まり通りでいいから、ちゃんとやってほしい。それから、調査員の人にもこのことをちゃんと伝えて欲しい。」
ということで最初の頃の、強い剣幕はなくなり、ちゃんとした話ができました。

逃げられないから一生懸命

冒頭に書いたように、お客さまとの折衝などは、全くしたことがありませんでした。それまでに経験があったのは、メーカーや請負業者の方との話だけなので、請負金額の話、技術的な話、安全対策のような話ばかりです。

怒っているお客さまに、一人で出かけて行って、話をするなど、出来ればやりたくないところです。
このnoteでも、今後もいくつかご紹介する時が来るかもしれませんが、お客さまも様々ですから、一律な対応が出来るわけではありません。ただ、現場状況を整理し、社内の扱いを理解し、重要なのは相手の立場や思いを理解することだと感じます。
とにかく現場に早く行くというのは、当時から心がけていたことですが、試験対策としても、試験場には必ず早く行くと決めています。

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