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すこし・ふしぎで「SF」なエッセンスの歌謡曲

こんにちは!オーキです。『歌謡曲に魅せられて』今月も音楽雑談を風の吹くまま気の向くまま更新していきたいと思います!

最近ハマっている歌謡曲といえば、ベーシストであり多くの歌謡曲を世に送り出している音楽家の細野晴臣さんが手掛けた曲たちが、マイ・プレイリストを席巻しています。

ハマったきっかけは細野さんのエッセイ本からなのですが、細野さん目線で切り取られたエピソードが面白いんですよ、これが!

読み始めは音楽のことが書かれてるのかなと思ってページをめくっていくと、それだけじゃなかったんです。街中で同じ宇宙人のような存在(人間とは違ったもの)に2回も遭遇したという不思議な実体験も他の話と同列に語られていたりして、この感じは…藤子不二雄先生たちが描いた「日常にすこし・ふしぎ」で「SF」というものを地でいっちゃってるのか!!と衝撃を受けました。

藤子不二雄イズムを受け継ぐ昭和っ子の思考回路では、リアルドラえもんは細野晴臣だったのかぁぁぁ!と勝手な妄想をしだす始末。

年末に細野さんのドキュメンタリー映画「サヨナラアメリカ」を見に行って、より確信しました。人を楽しく踊らせることもできるドラえもんであると…私はね、思ったわけですよ!勝手な仮説すらサンボマスター山口さんの口調で言い切ってみると、自信がわいてきます。

脱線しましたが、日常ですこし不思議なノリを体験をしている細野さんだからこそ、やってきたバンドを含め提供している曲をみると、この曲も作ってたの!?と驚くようなものまで、ドラえもんのひみつ道具のように多彩な楽曲が並びます。

その中からすこし・ふしぎなエッセンスが88%ぐらいありそうな、松本隆×細野晴臣×松田聖子による、「ありえない組み合わせ」でもヒットしたといわれる曲を紹介したいと思います。

聖子ちゃんが歌う、つかみどころがない歌詞と、細野さんのリアルドラえもん説を確信する時代を先取りしたリズムに注目したい1曲です!

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■「ピンクのモーツァルト」ありえない組み合わせがシナジーを生む。

昭和の女性アイドルといえば、「ぶりっこ」の代名詞であり、多くのヒット曲と共に名前が挙がる松田聖子さんではないでしょうか。

作詞・松本隆、作曲・細野晴臣コンビによる聖子ちゃんの曲は8曲あるのですが、松本隆さんが当時を振り返る中で「何を書いて良いかわからなかったが、何を書いてもヒットする」状態だったと言われていたそうです。

この発言で気になるのは「何を書いて良いかわからない」というところだと思います。
何を書いてもヒットしてしまうアイドル無双状態の聖子ちゃんに何を歌わせたらいいのか、まさに禅問答の世界です。

そんな答えのない自由な創作という禅問答から生まれたのが、世界的な音楽家「モーツァルト」と、アイドルである聖子ちゃんを連想する「ぶりっこ」と並ぶ、代名詞的なイメージカラーの「ピンク」が合わさって化学反応を起こした、瞬発力のあるタイトルじゃないかと思います。

いうなれば、ギャグを繰り出すときの瞬発力に近いなと。「ピンクのモーツァルトですが、何か問題でも?」ってな感じでほら、おぎやはぎにもスッとなじみます。M1チャンピオンの錦鯉なら「ピンクのモーツアルトは見た目で損してる」みたいに、やっぱりなじむわけです。

言われて一瞬、ギャグ化した思考でフリーズするタイトルにも負けていない、歌詞にも注目してください!「何を歌ってもヒットする」と言わしめただけある、つかみどころのないファンシーな歌詞に、人を楽しく踊らせるドラえもん(勝手に命名してます。)細野さんによる変化球のリズムがすこし・ふしぎなテンションを曲に与えています。

そんな玄人が好みそうな変化球がきても、聖子ちゃんが歌うと不思議とメインストリームになってしまう構図ごと、お楽しみください。

♪ピンクのモーツァルト(1984年 / 松田聖子)


ピンクのモーツァルト ねえ感じている
高まる胸のモデラート
ピンクのモーツァルト ねえもうじきね
揺れる音符が飛び散れば
華やかな淑女

(ピンクのモーツァルト・松田聖子)

この曲の体を揺らす跳ねるようなリズムは、ピンクとモーツァルトを組み合わせたみたいに、意外な化学反応によって生まれていました。

跳ねる、急ぎ足のような早いリズムは、90年代に小室哲哉とダウンタウンの浜ちゃんによってメジャーになった「ジャングルビート」なんだそうです。とはいっても、90年代のものとは全く同じものではなく細野さんが取り入れたのは、1950年代に生まれた伝説的ブルースメンによるドラミングのリズムだそうです。ディープな音楽的素養が、細野さんのフィルターを通して日本の歌謡曲に落とし込まれたのが……トップアイドル松田聖子が歌う「ピンクのモーツァルト」になっていたんですねー。

そんな側面も持っている曲なのに、「風の谷のナウシカ」のような浮遊感のあるポップスに仕上がっているのって、すごくないですか!やっぱり細野さんはリアルドラえもんですね。
ここまでなんやかんやと書きましたが、まとめるとアイドル全盛期の聖子ちゃんの歌声は、歌詞の不可解さすら、リスナーには「かわいい」と変換されてしまう。ド・変化球の曲だってメインストリームになる、歌手松田聖子の器の大きさを感じる曲じゃないかと思います。

ちなみに、松本隆×細野晴臣コンビによるアイドルソングの中で、今でも聴く度にグッとくるメロディーでいうと「風の谷のナウシカ」が一番好きです。

えっ!そもそもナウシカの歌がわからないっ!?というそこのあなたは、安田成美さんの完成されてない歌声をいまこそググって聴いて欲しい。歌が始まるときに少し切ないような気持ちになる感じがたまりません。書いて気付きましたが、ナウシカとピンクのモーツァルトは同じ年にリリースされていました。

♪風の谷のナウシカ(1984年 / 安田成美)

細野さんの手掛ける歌謡曲は耳を惹きつけてやまない曲がたくさんありますね!
その中で、鼻歌のようにラフな歌い方がサイコーな、いしだあゆみ×ティン・パン・アレーのお洒落な1曲を紹介したいと思います。

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■「恋のドライブいかがです?」さらっと歌ういしだあゆみに夢中。

学生の頃、音楽好きな友人が渋谷系アーティストを好きだったこともあり、影響されておすすめされたCDは片っ端から聴きまくってました。その中でサニーデーサービスだったり、かせきさいだぁの曲がきっかけになって、細野晴臣さんと松本隆さんのバンドはっぴいえんども聴きはじめ、独特な世界観の歌詞もメロディすべてが、面白くて新鮮に聴こえました。

当時のヒットチャートは小室プロデュース全盛期でしたが、私に昭和の音楽の魅力を教えてくれたのは、ピチカートファイブの小西康陽さんプロデュースの和田アキ子さんのCDだったり、お洒落すぎる夏木マリさんの歌声でした。歌謡歌手の弘田三枝子さんの歌も、小西さんのイベントで知るなど、渋谷系から昭和歌謡を知る入口になったと思います。

そんな感じで人生のところどころで昭和の音楽がリバイバルしてきたはずなのに、なぜ今までこんな素敵なアルバムを聴かずにきたのかぁぁぁ!と後悔した作品を紹介したいと思います。それが細野さんが在籍するティン・パン・アレイ・ファミリーと、いしだあゆみさんによる「アワーコネクション」です。

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発売日を見ると1977年だそうで、アラフォーの私とほぼ同年代の、ほどよく年季が入った熟アルバムというところでしょうか。

当時のいしだあゆみさんは「ブルーライト・ヨコハマ」がヒットし、歌謡曲界でも人気シンガーでした。アルバム参加アーティストは、細野晴臣、鈴木茂、佐藤博、林立夫らティン・パン・アレイ・ファミリーと共に、キーボード矢野顕子、コーラスは吉田美奈子と山下達郎が名を連ね
ており、バックミュージシャンまで気になる、聴きどころ満載のアルバムなんです。

そんな名プレイヤーたちによる、グル―ヴィーで都会的なサウンドとクールないしだあゆみさんの歌声によって、音楽に魅了される名盤だと思います。

昨年には、松原みきさんの「真夜中のドア〜Stay With Me(1979年)」が海外発でリバイバルヒットしたように、70年代に生まれたシティーポップの洗練された上質なメロディーと共に、時代を反映する詞のギャップが絶妙なバランスでミックスされ、今の時代のものとは違う、新しさを感じるのかもしれません。

そんな70年代のシティーポップ界で、ダークホースとなるおすすめの曲がアルバム収録曲の「ムーンライト」です。正直、アルバムを通してどれも良すぎて、どれにするか悩みましたが、いしだあゆみさんのまるで鼻歌みたいに、自然体でラフな歌い方と、歌詞ムードにやられてしまったので、こちらを推してみたいとおもいます!

♪ムーンライト (1974/いしだあゆみ ティン・パン・アレイ・ファミリー)

誰に聞かせるのでもなく、鼻歌みたいに自然体のラフさが、曲の主人公の女性がまるで部屋で歌っているかのような距離の錯覚が起こります。いしだあゆみさんの楽しそうな表情までみえてくる、親密さがリスナーに生まれる曲じゃないかとも思います。

女優さんでもあるのでフレーズごとの節回しが素敵で、詞がセリフみたいに際立ちます。

♪~
楽しいお酒が好きだよなんて 
互いの心に割り込んだのよ

あームーンライト ムーンライト
二度目の恋って素敵じゃない
あームーンライト ムーンライト
海辺の町まで10マイル
恋のドライブいかがです

(ムーンライト/いしだあゆみ ティン・パン・アレイ・ファミリー)

注目したいのは、サビに入る「♪ あー ムーンライト」部分の頭にある助走みたいな「あー」もしくは「あぁ」と入っているところです!「あー」という感嘆詞が入ると一気に人間味が出て、リスナーに親近感を与えているのかもしれません。
とくに座るときなど「あー、どっこいしょ。」とついつい言ってしまいがちな、私のようなアラフォーも安心して聴ける【会いたくて震えることがなくなった世代】に贈る、恋愛ソングです。と自信をもっておすすめしたいっ!

奥さま~!ここに、まだトキメキがありますよー」って。
noteの中で声を大にして書いておきたいです。

キラーフレーズ「恋のドライブいかがです?」と歌ういしだあゆみさんが素敵すぎて、顔がほころびます。恋の幸せな気持ちをおすそ分けしてもらった気分がします。

今回はアルバムから1曲紹介しましたが、ジャケ買いしたくなる大人カッコイイ、いしだあゆみさんの写真が印象的なアルバム「アワーコネクション」は、興味がある方はぜひ1枚通してそれぞれの曲を堪能してもらいたいおすすめの名盤です!

松田聖子、いしだあゆみ ティン・パン・アレイによる70年代の空気を感じる音楽で幸せな気分になったので、最後はいまある幸せをうんと噛みしめてみたくなる曲を紹介しようとおもいます。

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■「美しい日」とはどんなとき?

最後はバンド、SUPER BEAVERのタイトルから曲ができたエピソードも丸ごと、いまある幸せだったり、あー今日もいい1日だったなと噛みしめたい、シンプルにいい曲を聴いて締めたいと思います。

♪ 美しい日 (2017/SUPER BEAVER)

シンプル故に「美しい日」という言葉のインパクトが際立つタイトルは、バンド10周年の最後を締めくくる記念ライブがあった日をメンバーが振り返る際に「今日は美しい日でした。」と言ったことが印象に残って曲のアイディアになったそうです。

最初はメンバーだけだったバンドが、活動を続ける中で多くの人との繋がりが生まれて今日と言う日(10周年記念ライブ)が成り立っている、その素晴らしさを「美しい日」と表したのが的を得ていて印象的だったというエピソードを読んで、バンドを続けてきたからこそ出た、言葉の持つ美しさだなーと感動したわけです。
歌詞をみるとそのメッセージが、ちゃんと反映されていました。


僕は人に生かされて 人と生きている
ああ いくつもの愛と生きている
(~省略~)
だれかにとって「たかがそれくらい」のありふれた歓びでも
嬉しいと思えたら特別じゃない今日はもうきっと
美しい 美しい日なんだよなぁ。

「美しい日なんだよなぁ」その瞬間に感じた気持ちを噛みしめるように、独り言みたいに歌われる歌詞は、スピーカーの向こうにいるリスナーにも語りかけます。

思わず「そうだね」って自然と相づちを打つように、バンドと歌詞を共有しながら聴き入ってしまう、おのずと共感力まで引き出されてしまう曲です。

ちゃんと意識しないと普通の中に紛れてしまい、どんどん過ていってしまう「美しい」と感じられるものを、歌を通じてSUPER BEAVERと共有してみてください!

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2/23に新作フルアルバム『東京』をリリースするSUPER BEAVERの特別番組を、120分の生放送でお届け!
メンバー4人での初ロケの模様や未公開のライブ映像も交えながら、生放送で様々な企画を実施!
事前にTwitterで募集するフルアルバム『東京』の感想や質問にメンバーが答えるなど、見どころ盛りだくさんでお届けいたします。
その他、番組内でもプレゼントが当たるクイズも実施予定!お見逃しなく。

初回放送
2/26(土) 21:00~23:00

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