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2023年夏スタディツアー参加レポート8/18 京都大学宇宙ユニット訪問


前置き

2023年夏SMJYCスタディツアーにて,京都大学宇宙総合学研究ユニット 寺田昌弘 特定准教授に宇宙ユニットでの取り組みについてご講義いただきました。その後は研究設備の見学や先生を囲んでディスカッションなどを行いました。

今回は参加レポートとして大阪公立大学修士2年米山まうむが執筆させていただきます。私自身のバックグラウンドは航空宇宙工学で、CubeSatと呼ばれる手のひらサイズの衛星の開発(超小型人工衛星ひろがり)に関わってきました。SMJYCの活動には今回初参加で医学分野に関して疎くはありますが,また違った視点で執筆できればと思います。

前半の講義

京都大学宇宙ユニットとは

 端的にはHPを参考にすると,「宇宙に関連した異なる分野の連携と融合による新しい学問分野・宇宙総合学の構築を目指して、2008年に設置された組織です(HPママ)」と説明されています。私自身宇宙といえば工学系や理学系をまず思い浮かべがちですが、京大宇宙ユニットでは人文系や医学系なども含めた様々な分野が集まり、学際的な研究やユニークな取り組みが行われています。京大の宇宙分野の研究の中心的役割を果たしているようです。各先生方のコアの研究以外にも学生向けのプログラムなどが実施されており、過去に実施されたものの中で、

  1. パラボリックフライト学生実験

  2. バイオスフィア2におけるスペースキャンプ

などが特に印象的でした。
パラボリックフライトは、飛行機による数十秒間の微小重力環境での実験を通じて、訓練された飛行士ではなく、一般の人の宇宙空間への適応について考えるという趣旨で実施されたものです。1G環境と微小重力下、それぞれでの人の時間認知や感情の変化などを測定するそうです。限られた参加枠に対して学生を選抜する中で、実際には微小重力を体験できないバックアップクルーも設定するとのことでした。それは、さながら宇宙飛行士のようで、チーム・プログラムマネジメント的な面でも興味深く感じました。
バイオスフィア2は外部(地球)と空気まで遮断された閉鎖空間で、人工的な環境や集団生活の維持を実証するための施設として建設された、アメリカの砂漠に建つ巨大な施設です。スペースキャンプはここでの滞在を通じて、将来の有人宇宙ミッションに必要な知識を学ぶことを目的としたプログラムとのことでした。この施設に関する賛否は様々あるようですが、環境維持の困難さなどの経験は、現在の宇宙分野のトレンドでもある月面基地や将来的な火星移住などの参考になるものだと感じました。以上のように,京大宇宙ユニットでは学生が関わることのできる取り組みにも力が入れられており、宇宙分野に関わることができる大小様々な機会が提供されているようでした。

筋シナジー

 筋シナジーとはいくつかの骨格筋がまとまりとなって同時に活動する筋活動のパターンだそうで、寺田先生が取り組まれている研究になります。筋肉を動かそうとするとき(例えば歩くときに)、中枢から末梢に向けてパーツごとに一連の細かな動きの命令を伝達するのではなく、一定の動きの命令の型のようなもの(筋肉の組み合わせ)があり、それらを使い分けて動き(歩行)を達成しているというような概念です。この筋シナジーは一般的な日常生活の中では通常変化はなく、ある動作に対しては同じ筋シナジーを使うそうです。”身体の使い方の癖”のようなものだそうです。しかしながら、宇宙飛行士の宇宙での長期滞在の前後でこの筋シナジーに変化が見られる場合があるそうです。また、事実として宇宙飛行士は地球に帰還してからリハビリ後も、外見上大まかな歩行動作に変化はないにも関わらず、本人としては身体の動きに違和感を感じるケースがあるそうです。寺田先生は、この一見異常の見受けられない違和感と筋シナジーの変化との関連について取り組まれているそうです。貴重な宇宙飛行士を被験者とする実験となるため、そのハードルについてもご説明いただきました。JAXAやNASAに対する説明や準備を尽くしてやっとデータをとることができるという点は、人工衛星の打上げに際して必要な宇宙機関の各種申請や審査から連想しても、かなり苦労があるだろうと感じました。今後の宇宙の発展に向けて,宇宙分野の研究・開発の敷居について考えさせられる良い機会となりました。

後半の見学・ディスカッション

 ご講義いただいた後は、寺田先生のご研究で使われる筋運動の測定機器などを拝見し、先生を囲んでディスカッションを行いました。
 ディスカッションでは、医学系の学生から今後宇宙医学への関わっていくにあたってのアプローチの相談や学生それぞれの今後の宇宙との関わり合い方、宇宙と人類の展望など幅広く意見を交わしました。宇宙と人類の展望については、人がなぜ宇宙に出るのか?人が宇宙で暮らす未来は来るのか?それはどんな状況なのか?といった答えのない問いで、考えさせられるものでした。文章にまとめるにはまだまだ言葉のまとまらない議論ではありましたが、宇宙に関心を寄せる者たちで意見を交わす良い機会となりました。
 
最後に、ご対応くださった寺田先生はじめ、企画運営、当日参加者の皆さまに感謝申し上げます。


 (上図 ディスカッションの様子)


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