宇宙医学実習インタビュー①フクダ電子

2023年文部科学省・宇宙航空科学技術推進委託費「将来の有人宇宙活動を支える宇宙医学人材育成プログラムの創出」の一環として、宇宙医学実習が開催されました。今回宇宙医学実習に参加できなかった方や、来年参加したいという方向けに、参加者の方に感想を聞くインタビューです。今回は東京理科大学です。初回はフクダ電子実習です!

鈴木康星(以下鈴木):本日インタビューにご協力いただくのは。大阪公立大学医学部医学科の黒松俊吾さんです。よろしくお願いします。

黒松俊吾(以下黒松):黒松俊吾です。よろしくお願いいたします。

鈴木:今回黒松さんが参加したのはフクダ電子株式会社という企業での実習でしたが、まずフクダ電子とは一体どんな会社なんでしょうか?

黒松:そうですね。フクダ電子は基本的には医療機器に関する会社で、元々は心電図計を作ってたところから会社自体は始まったらしいのですが、今では結構海外の商品を仕入れてきて、日本で販売代理店みたいな感じで売っているというケースも結構多くなっています。

鈴木:医療機器を作っているとのことでしたが、宇宙医学とは一体どんな繋がりがあるんでしょうか?

黒松:そうですねホルター心電図計という24時間心電図を記録する心電計があるんですが、フクダ電子さんは完全防水でそれを作っていて、それがJAXA の目に留まって宇宙へ持って行きませんか?
みたいな話になって実際に宇宙まで行ったという感じですね。

鈴木:意外な所から宇宙と繋がったわけですね!
では当日現場でどんな体験を行ったのか詳しく教えていただきたいです。

黒松:まずはフクダ電子の見学ですよね。これは会社の中にギャラリーのような自社で今まで作ってきた商品とかがずらっと並んでるところがあって、そこを案内してもらいました。

心電図は昔は結構サイズが大きいものが多かったのですが、どんどん小さく性能も上がって行く過程を実際に見させていただいたりしました。

そのあとは、フクダ電子の中で凄く宇宙に可能性を感じている方がいらっしゃいまして、その方からお話を伺うというものでした。

鈴木:ギャラリーを見学してる中で一番印象に残ったものとかありますか?宇宙医学に関係ないものもたくさん見てきたと思うんですけれども。

黒松:宇宙に直接は関係ないですけど、災害医療でフクダ電子が関わっているものがありました。僕も細かくは理解できていないのですが、フクダ電子は日本中に支社があってですね。いろんな病院に医療機器を提供している会社ですので、災害時にですね、急に医療機器が壊れちゃったりとかするとすごい困るので、全国の支店を通して療養者の状況を確認して、物資を提供することを行っているらしいです。
それは非常に良いシステムだなと思いますし。実際自治体とかとも連携してってなると。素晴らしい取り組みだなと思って印象に残ってますね。

鈴木:僕も医療機器の会社が災害時に全国的なネットワークを貼って対策をしているというのには、衝撃を受けました。

続いてギャラリーを見学したあと、どんなことをしたのか教えていただけますか?

黒松:そうですね。担当の方が結構ここまで喋っちゃっていいの?!みたいなお話をしていただいてですね。

今まさにフクダ電子さんが宇宙医学に関する医療機器を作っているというわけではなく、これから作れたらいいよね。みたいな話なんですけど。じゃあ実際作るってなったらどういうことが課題になってくるとか、どれぐらいお金かかってくるんだろう?とか採算は取れるのかとか。そういう話がいろいろあってですね、その後で質疑応答という形でいろいろ質問させてもらったという感じですね。

鈴木:結構医療機器業界の内情とか、あんまり話しちゃいけないようなところまで詳しくお話をされて、医学部にいるだけじゃ知ることもなかったような内容とかも多くて刺激になったと僕も思います。
宇宙医療機器を作るにあたって、黒松さんが感じた課題っていうのは何ですか?

黒松:まあ、個人的には宇宙ってなるとどうしてもNASAの力がやっぱり強いんだなというところは感じていてですね。宇宙で。なにか実験をするとか、機器を作るとかってなった時にじゃあどんな基準を満たしたら、宇宙に持っていっていいのか、などのルールを誰かが決めなきゃいけないわけですが、それを現状アメリカがしているという形になっているんですけど、日本でもやっぱりやっていかないとと思いました。

鈴木:そうですね。アメリカの方が先導してやってる部分は宇宙業界だけでなくて、例えば医療機器の会社の規模等のランキングを紹介してくれましたが、日本の会社はほとんど入っていなくて、アメリカが日本の先を進んでいるという印象は受けました。
黒松さんが感じた課題を解決していくために、何ができるのかなって思ったことはありますか?。

黒松:やっぱりアメリカは宇宙開発でも歴史があるし、そこに対して日本がもう完全に独立した形で宇宙でのルールとかを作っていくっていうのはちょっと難しいのかなと思っていて、やっぱり日本とか他のヨーロッパの国とかもそうですけど、やっぱりアメリカ単独でやるんじゃなくて色んな国が関わって一緒にルールを作っていくっていうのが、やっぱり今のところはいい解決策なんじゃないかなと思いますね。

鈴木:アルテミス計画など、アメリカだけでは手に負えないからこそ、日本やヨーロッパに参加を呼びかけていると思いますし、課題解決のチャンスはたくさんあると思います。

そろそろインタビュー時間も終わりに近づいてきましたが、フクダ電子に行く前と行った後で何か医学に対する考え方とか変化はありましたか?

黒松:はい、やっぱり宇宙医学の中で医療機器を作るというのも 1 つトピックとしてあるというのは分かっていたんですが、それじゃあ宇宙で使う機器を作るとなった時にどういう課題があって、それがどれぐらい難しいものか全然理解できていなかったので、そこをまず教わったというのは良かったなと思ってます。その辺が見えてきて、これからどういうことやっていけばいいか考えられるようになったことが良かったなと思ってます。

鈴木:最後に黒松さんはこれから、どのような形で宇宙医学に関わっていくおつもりでしょうか?

黒松:僕は宇宙医学に対してビジネス的なアプローチがしたいなと思っています。

自分で最初から立ち上げていくっていうのは、宇宙に関しても医学に関しても全然自分がエキスパートではないので難しいのかなと思っています。そこでまずは投資する立場として色んなヘルスケアの事業に投資をしたいと思っていて、その中に宇宙医学の事業とかもあればいいなと思っています。そこで経験を積んで、自分で宇宙医学に関する事業を起こして、人類に貢献できたらいいなという風に思ってます。

鈴木: ビジネス展開をしていく上で、今回のフクダ電子株式会社での実習で学んだ経験を生かして頑張っていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

黒松:ありがとうございました。

鈴木康星:横浜市立大学医学部医学科2年
黒松俊吾:大阪公立大学医学部医学科5年


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