「毎日が実験です」 一歩踏み出した先にある景色/スペースマーケット Host Story
「何かにチャレンジしたい」
日々の生活で、ふと感じることはないでしょうか。
そんなとき、「何から始めれば」とか「自分にできるのかな」と思い悩む前に、「まずは試しだ」と、今あるだけのものでそのまま始めてしまうのも「アリ」なのかもしれません。
ちょっと不十分くらいのところで始めたとしても、毎日試して、試して、試しているうちに、気づけば、ずいぶんと前に進んでいる―
そんな話を、「両国ガレージ」のホスト、山口政紀さんに伺ってきました。
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工作少年の秘密基地「両国ガレージ」
JR両国駅から徒歩3分。
両国花火資料館の裏手にある、落ち着いた佇まいのビルが「両国ガレージ」です。
スペースは、小学校の家庭科室を思わせるような、どこか懐かしい感じ。
所狭しと並べられた調理器具に、ヨガマットやギター、電子ピアノまである。「ここなら何でもできそう!」と、なんだかわくわく。
とくに目立つのは、スペース中央のキッチン。
ぶら下がりの棚や調理台など、至るところカスタマイズされている。
すべて、ホストのまさきさんの手によるものだ。
「もともとは電子工作が好きで。小3からの趣味です。
部品を仕入れてきて組み合わせてものを作ってました。
電子回路を作ったり、発光ダイオードを使ってゲームを作ったり…。
スペースにあるものは、昔からの延長線ですね」
調理器具もふんだんに取り揃えられていて、使い勝手は抜群。
レンタルスペースでは備品をしまうとどこに何があるのか分かりづらいので、全部出しっぱなしにできるように工夫しているそう。
「体験の価値を分かち合いたい」人が集まる場所
まさきさん自身が、何度もDIYで改良を重ねてきた「両国ガレージ」。
建物は、まさきさんのお祖母様が建てたもので、築52年になる。
当時はテナントビルで、寿司屋、雀荘、事務所、バイク屋として貸し出されていたそう。
そこから約20年後、まさきさん一家はこのビルに引っ越し、以来家族で住んでいる。レンタルスペースをはじめる前、1Fは倉庫代わりになってしまっていたそうだ。
テナントを入れるのではなく、レンタルスペースをやろうと思いついたのは?
「大分ボロボロだったので、そのまま貸せる気がしなかったんですね。
それなら、自分で何かおもしろいことに使ってやろうと思っちゃった。
秘密基地、大好きなんで(笑)」
そこで、自分の手で建物をDIYし、レンタルスペースに。
名前は1Fに入っていたバイク屋さんに由来して「両国ガレージ」にした。
今では人気スペースだが、「最初からずっと模索ばかり」と笑うまさきさん。
「最初は床を貼っただけの状態でしたが、何かに使えないかと、演劇をやっている友だちに練習場所を探してないかきいてみたり。
あと、変わったところでは、オンラインサロンに入会して、車の開発スペースとして貸し出すよと打診したり…。結局その話自体ポシャっちゃったんですが(笑)
そうした流れで、スペースマーケットに登録しました。
ユーザーも今よりずっと少ない時期です。
何に使うかは自分では思いつかないから、現状だけ書いて出せば、何か提案してくれる人はいるんじゃないかなと考えていました」
スペースマーケットに登録した当初は、どんな利用があったんですか?
「おもしろかった利用は、自転車のフィッティング。
ダンス用に、『ジモティ』でもらってきたバレエの練習用の鏡を写真に載せたところ、『仙台にある自転車屋さんと、ここでフィッティングをしたい』と言われて。一日中鏡の前で自転車をこいで調節したりしてました」
スペースの活用方法を模索する日々で、転機となったのが、
当時ミールシェアサービスを行っていた「kitchhike(キッチハイク)」の会場利用だった。
「模索の一貫で、『ご飯会をやる場所』というのが流行るんじゃないかなと思っていて、キッチハイクがちょうど、「民食(みんしょく)」をはじめるときに応募したんです。
50年前のキッチンそのままだったのを、急いでぶっ壊して、シンクをつけて(笑)一般常識的にはNGじゃないかなというレベルからスタートしちゃいました
そんなスタートでしたが、これまで200回くらいかな、スペースをつかった食事会が開催されました。
キッチハイクで利用されつつ、並行して継ぎ足し継ぎ足しでスペースを整理していったという感じですね」
まさきさんは、スペースマーケットのホストの集まる場で料理を振る舞うなど、料理好きなイメージ。
もともと人をおもてなしすることが好きだったんですか?
「もともと料理は好きでしたが、人を呼んでおもてなしというのは全然。
でも『民食』の場合は、みんなで作ってみんなで片付けるという文化があり、これは楽しいな、と思いました」
「ホストが何もかもやっておもてなしするんじゃなくて、みんなで一緒に楽しむというスタイルがよかった。
今もはっきり言えるのは、みんなが集まって一緒に準備してご飯食べて片づけて...このパッケージがすごくいい。楽しい。幸せを感じる。それは大発見でしたね」
キッチハイク以外にも、こちらのレンタルスペースのゲストは、みんなで作って食べて...という使い方が多いですか?
「8割方そうですね。同じように楽しみを感じる方が集まります。
アプリを使うか、知り合い同士かという違いはありますが、
『体験の価値を分かち合いたい』という、根っこの部分が一緒の方が、このスペースに集まってくるんじゃないかな」
世代も立場も越えた人との出会いから、「シェア」の世界へ
「両国ガレージ」に集まる人との関わり方を見ていると、世代やジャンルを越えて、まさきさんの交流の輪がものすごく広いという印象があります。
「じつは、20代〜30代、仕事以外の人との繋がりが全然ありませんでした。今とは違う人みたいです(笑)
40歳くらいの時、仕事の都合で語学学校に通い始めたんですが、
フレンドリーな人が多く、学校をきっかけに、世代や分野を越えた人との繋がりが徐々に出てくるようになりました」
さらに、まさきさんの子どもが小学校に上がり、「子ども会」の会長・副会長として、子育てや地域を拠点にたくさんの人と関わることに。
今までいかに狭いところにいたかを感じ、だんだんと視野が広がったんだそう。
「40代半ばで仕事以外の人との付き合いが増えてきた時に、レンタルスペースもスタートしたんですね。
ここを拠点に人と繋がれたらいいなという気持ちもありつつ、ものづくりの場所にしちゃおうかなと思ったときも(笑)」
まさきさんは、スペースマーケットのほか、子育てシェアの「AsMama」、学びをシェアできる「ストアカ」など、積極的にシェアリングエコノミーを活用している。
シェアリングエコノミーを使うきっかけは何だったんですか?
「最初に使ったシェアリングエコノミーのサービスは、エアビー(Airbnb)なんですね。場所柄、ほとんどが外国人のゲストで、その頃は両国周辺を案内したりしていました。
両国は相撲だけかと思ったら、探せばいろいろと面白いものがあるんですね。江戸時代の見世物小屋にいたオットセイの墓とか、寿司の発祥の地とか、ねずみ小僧の墓とか...(笑)
エアビーでゲストを受け入れるようになって、これまで住んできたところを見直すことになりました」
現在、まさきさんは、シェアリングエコノミー協会のアンバサダーとしても活躍している。
サービスを使うだけにとどまらず、「広める」ことも考えたのはなぜですか?
「エアビーでは、ホスト同士の繋がりの広がりも楽しかったんです。
同じホスト同士、やっぱり話があうんですよね。
スペースマーケットに登録したのもエアビーでの繋がりがきっかけでした。
エアビーでのホスト同士の繋がりが、シェアエコを楽しむきっかけをくれたように、協会の『シェアリングネイバーズ』同士の繋がりを強めて、
シェアの良さを広めていきたいですね」
「試しにやってみる」で第一歩を
まさきさんの生き生きした様子を見ていると、
人は、こんなにもしなやかに生きられるんだと、わくわくしてくる。
今度は、これからチャレンジしてみたいことをきいてみた。
「定年後に1日2時間だけ働いて..みたいな生活がしたいんですよ(笑)。
たとえば、電気工事士の資格をとって、一日1箇所で設置して。
午後は別のことをやって、夜はご飯会やって…。
そんな感じで、複数の生業を組み合わせてやっていきたいなと。
いろいろな人たちと関わりを広げながら、
いろんなことをちょっとずつちょっとずつやったら楽しいんじゃないかな」
まだまだチャレンジを続けたいと話すまさきさん。
最後に、同じく「今何か始めたい」と思っている方に向けて、メッセージをきいてみた。
「自分が持っているものを、まずはそのまま提供して、
『これでよかったら誰か使ってみますか?』
というところからスタートできるのが、シェアエコの良いところ。
最初のチャレンジから新しい発見が出てきて、次につなげられると思うんです。
自分はもともと実験が好きで、そのせいでハードルが低かったのかもしれませんが、
『試しにやってみる』っていうのはリスクも低いし、失敗しても得るものが大きい。
すべて整えてやるよりは、ちょっと不十分くらいのところでも
まずはやってみるというのが良いんじゃないかなと思います」
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インタビュー後、改めて「両国ガレージ」を見学した。
キッチンや収納棚のひとつひとつ、ゲストの声を反映して手を入れていったそう。
「毎日が実験です」という、まさきさんの言葉が印象的だった。
床を貼っただけでスタートした「両国ガレージ」は、
今、たくさんの人に愛される場になっている。
一歩踏み出した先に広がる、すてきな景色を教えてくれた気がします。
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インタビュー:スペースマーケット ホストコミュニティマネージャー 吉田由梨
文:スペースマーケット カスタマーサクセス 山口優希