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【私のアウトドア履歴書♯8】西谷 圭介さん(Amazon Web Service Japan ソリューションアーキテクト)

スペースキーの小野(@tsugumi_o_camp)です。今回のアウトドア履歴書は、多くの人が大変お世話になっているAWS のエンジニアである西谷さんにお話を聞きました。「キャンプ好きエンジニア Meetup」というエンジニア向けミートアップも主催する西谷さん。キャンプとミートアップ、アウトドアへの想いについて聞きました。



西谷 圭介さん(@Keisuke69)
SIerにて基幹システムの開発、新規サービスの企画・バックエンド開発およびインフラのリード、PMを経て、現在はAWSのスペシャリストとして多くの企業の技術支援を行う。エンジニアに対してAWSの使い方を伝える活動にも注力。私生活ではキャンプとFUJI ROCKを愛する1児の父。


西谷さんがキャンプにたどり着くまで


-本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、これまでのアウトドア歴から聞かせてください。幼少期はどのように過ごされていたのですか?

子どもの頃から、超がつくインドア派です。スポーツも特にしてこなかったし、海水浴とか登山とか、家族でアウトドアを楽しむようなこともなかったですね。虫も嫌いなので、友達と虫取りをした経験もないです。大人になってからも、休日は基本外に出ない生活を送っていました。

それが変わってきたのは直近の10年くらいで、妻の影響が大きいですね。妻はアクティブ派で外に出かけるのが好きなので、結果的に僕も外出が増えていったという感じです。

-すごい変貌ぶりですね!キャンプに行くようになったきっかけは何ですか?

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(写真:PIXTA)

10年くらい前にアメリカに滞在した時期があったのですが、そこでヨセミテを観光したことがきっかけです。キャンプはさすがにしなかったのですが、ヨセミテの絶景やそこでキャンプする人たち、ヨセミテのショップで売られているアウトドア雑貨などを眺めているうちに「なんかキャンプいいな」と純粋に感じたのを覚えています。

日本に戻ってきてしばらくして、実際にキャンプをやり始めたのは5年くらい前から。妻の友達が行ったという話から相模湖のPICAに行ってみようとなって、そこの常設テントでキャンプをしたのが一番最初です。アウトドアもほとんどしたことがなかったのですが、楽しかったですね。その頃から少しずつ行くようになって、直近3年くらいは本腰を入れて楽しむようになりました。

-きっかけがヨセミテってところが100点です!

もともとFUJI ROCKが好きで毎年行っていたので、フェスとの親和性も影響しているのかもしれません。ただFUJI ROCKもキャンプサイトは「絶対にイヤだ」と思ってましたけど(笑)。

それで少しずつキャンプに行くようになったら、すっかりハマってしまって、一時は毎週のように行くほどに。さすがに妻と子どもからクレームを受けてしまって、今では月1程度で落ち着いています。なのでまだキャンプ歴は3年程度ですが、行く頻度や楽しみ方を少しずつ変えながら楽しめているという現状です。始めるときは「ハードル高いな」と感じていたのですが、最初に常設テントを選んだのが良かったのかもしれませんね。

-ハマっていく過程が実に明快!西谷さんは凝り性だったりします?

熱しやすく冷めやすいです。しかも形(道具)から入るタイプ(笑)。

-では最初から道具もかなりこだわったのですか?

いえ、キャンプもイニシャルコストが結構大きいので、最初はリーズナブルなギアで揃えました。スノーピークのアメニティードームに、DODのヘキサタープとかだったかな。それから徐々にギアにこだわりだして、今では買い替えして3周目のものもあります。

-拝見しましたが、サイトに統一感があってキレイですね。

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ありがとうございます。最近は統一感を意識して、ギアを選んだり買い替えたりしています。色味とか質感を揃えて工夫していますが、インスタ映えするオシャレキャンパーのサイトのようにはなかなかいかず、難しいですね!そう考えるとすごいなぁ。

-西谷さんにとって、キャンプの一番の魅力って何でしょうか?

やはり、“秘密基地感”があるところでしょうか。男子はそういうの好きですよね。好きなもので揃えた、自分だけの基地を持てたら最高。だから男子はガジェットやギアに走るんでしょうねー。

-それ納得です。西谷さん同様、ご家族もキャンプは好きなんですか?

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聞いたことないですね、どうなんでしょう……。実はそうでもなくて、僕に付き合ってくれているだけということもあり得ます(笑)。もしかしたら、キャンプというくくりではなく、旅行の一環と思っているのかも。キャンプに行ったら周辺も観光してくるので、その一部として捉えているのかもしれないです。

もともと旅行は好きで、海外旅行は時々していました。妻と外出するようになってからは国内にも行くようになって、キャンプも相まって、より外出が楽しくなったなと感じています。

-キャンプで知らない土地の魅力を知れるのも楽しいですよね。すごく共感します!


西谷さんとギアの話


-お気に入りのギアについて聞かせてください。

ギアはいろいろあって、どれがイチオシか悩みますねー。今使っているギアはどれも気に入っています。例えば、テントはランドロック。大きいところが気に入ってます。これを買うときに選んだ観点は広めの2ルームでした。ベアボーンズ・リビングのランタンも、雰囲気があっていいですよね。比較的定番と言われるギアも好きで、バックナイフ(レンジャー)やオピネルのナイフも、機能性とシンプルさ、無骨な雰囲気もあって好きです。

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-いろいろ出てきましたね。ギア選びも統一感を意識されているとのことでしたが、どのような基準で選んでいるのですか?

現代っぽさがあまりない、質素な感じというのでしょうか。色味でいうとカーキやタンなどのアースカラーで揃えるようにしています。機能性よりも雰囲気重視。ウォータージャグは、イタリア製のオイルジャグを使っています。ポリタンクのほうが軽いし扱いも楽なんですが、サイトの雰囲気がグッと締まるのでいいですね。バーナーなどの小物類はアンモボックス(弾薬入れ)にまとめています。見た目からして無骨でカッコいいなと。

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-たしかに、雰囲気でますね!

あ、思い出した。アンモボックスには炭なども入れて持っていくのですが、その炭が一番のお気に入りかもしれません。「オガ備長炭」というものなんですが、備長炭特有の火持ちの良さと成型炭ならではの扱いやすさを兼ね揃えた炭なんです。これは一番最初から使い続けているし、毎回必ず持っていきます。

-炭!

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僕のキャンプの楽しみのひとつに、「肉を焼くこと」があるんです。冬の寒い日でも、雨の日でも、キャンプに来たら炭火で肉を焼く。キャンプに来たら肉しか食べません。だから、炭は必需品であって僕のキャンプには欠かせないものです。

その文脈でいうと、ユニフレームのユニセラもかなりおすすめです。冬キャンプが好きで、上述の通り天候に関係なく肉を焼きますが、さすがに家族から「寒い!」とクレームがきてしまいました(笑)。ランドロックの中で暖を取りながら肉を焼くにはちょうどよく、かなり重宝しています。そう考えると、オガ備長炭とユニセラのセットが一番かもしれないですね。

-西谷さんのキャンプの楽しみを象徴するギアですね!


キャンプとエンジニアリング


-西谷さんが主催する「キャンプ好きエンジニア Meetup」について聞かせてください。なぜ開催しようと思ったのでしょうか?

キャンプ好き×エンジニア
キャンプ好きなエンジニア同士がネットワーキングできる場として開催します。エンジニアがよく参加する勉強会というよりはキャンプきっかけのエンジニアのネットワーキングです。
秋に突入してキャンプによい季節になってきたということで開催します!
これまで同様、「エンジニア」と言ってはいますが、エンジニア属性じゃない人(デザイナーとか)などもWelcomeです。
(https://camping-engineer.connpass.com/ より引用)

僕も含めて、キャンパーって「自分がどんなスタイルのキャンプをするか」を話すのが好きだと思っていまして、あるときTwitterでもそういう話題になったことがありました。僕をフォローしてくれている人の中にも一定数いるのがわかって、みんなはどんなキャンプをするのか単純に聞いてみたいと思ったのがきっかけです。あと、技術系など仕事に関わる勉強会のLTなどは参加したり開催することもありましたが、全く違う軸でもやってみたいという想いもありました。

-実際にやってみていかがでしたか?

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自分の業界の中で、キャンプ関連の話ができる知り合いを増やしたかったのが一番の目的だったので、そこは大成功でした!普段出会わない人と出会って話をしてみて、得るものも非常に多かったかと。自分と違うスタイルで楽しんでいる人たちばかりだったので、単純にその話がおもしろかったし、初めて知ることも多くて貴重な場となったと感じています。

-目論見通り!

あと、エンジニアというくくりにしたのも結果的に正解だったと思っています。あのような雰囲気で好きなものを伝えるというのは、LTなどの文化が浸透しているエンジニアだからこそうまくいったのだと。広く「キャンプ好き」としてしまっていたら、スピーカーを集めるのが大変だったなと思っています。「キャンプ」と「エンジニア」、どちらもある程度ニッチなカテゴリだったからこそ、程よい規模感と熱量のあるイベントになっているのかなと個人的には感じています。

-ニッチという割には、Twitterの盛り上がりがすごい(笑)。

そうですね、集まっている人数と比較するとTwitterの盛り上がりはたしかにすごいですね。これまで3回開催しましたが、回数を重ねるごとに盛り上がりも増しているような印象。アウトドアの盛り上がりと比例しているんですかねー。そろそろ次の開催も計画しています。

-本当に人それぞれのスタイルがありながらも、共感できるポイントがたくさんあるのはおもしろいと感じました。

自分では気づかない、知らない方向から魅力を聞く機会って、大人になればなるほどないように思います。その点で「キャンプ好きエンジニア Meetup」は、知らなかったアウトドアの魅力に出会える貴重な場としての役割があるかなと。僕もこのイベントをきっかけに、いろいろな楽しさに触れることができました。これきっかけで買ったものもたくさんありますし。

-そうなんですね。例えば?

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火吹き棒とか、あとメスティンもそうです。僕はキャンプでご飯を食べないので、メスティンが流行っていても全く興味がなかったのですが、「キャンプ好きエンジニア Meetup」でメスティンについて熱く語っていた人がいたんです。そのプレゼンでメスティン愛をすごく感じて、欲しくなって買ってしまいました。そのメスティンで炊いたご飯と一緒に食べる肉は最高!新しいキャンプの魅力に出会えた瞬間でした。なので、このプレゼンを聞いて興味持ったり買ったりしたものは結構多いです。それだけ影響を受けていますね。

-人からのアドバイスをポジティブに受け取っている、西谷さんの姿勢も素晴らしいなと思いますよ!これからも多くの発見があるといいですね。

↓ 「キャンプ好きエンジニア Meetup」過去のレポートはこちら ↓


これからのアウトドア業界について思うこと


-アウトドア業界について思うことはありますか?

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一番に思いつくのは、以前と比べてキャンプ場の予約が取れなくなったということ。ほんとに取れなくて切実に困っています(笑)。予約が取れないということは、キャンプが盛り上がっている証拠であって、それはいいことなのではと捉えています。人が集まりすぎて一部には弊害もあるでしょうが、業界全体で見たらポジティブな状態なのではと。ユーザーだけでなくガレージブランドも増えてきている。事業者としての新規参入も増えて、ユーザーにとっては選択肢が増えてよい傾向だと感じています。

ただ、そうは言ってもキャンプ場の経営は大変なんじゃないかなー。高齢で経営しているキャンプ場さんもありますよね。僕らとしては受け皿であるキャンプ場がなくなってしまうのはつらいので、継続のために何ができるかとかは考えてしまいます。

-そうですね、従業員や後継者問題は切実です。

なので、まずスペースキーさんには『なっぷ』で予約できる施設をもっと増やしてほしいなと。僕もそうですが日中は仕事をしているので、電話予約のみのキャンプ場は予約できない。それで困っている人は結構多いと思います。あと、知られていない秘境的なキャンプ場もあるはずなので、そういう所も網羅してほしいです。ネット予約にするとレビューとか口コミも載ってしまうので、キャンプ場のリスクもあるだろうとは思いますが。それでも『なっぷ』が今以上に拡充してくれるとユーザーとしては嬉しいです。

-たしかにそうですね……!

また、アウトドア全般として、始めるためのハードルがまだまだ高いなと感じます。リーズナブルなギアもだいぶ増えてきていますが、それでも全部揃えると金銭的には結構きつかったり。レンタルサービスとかもっと広がってくれるとありがたいと思っています。

Rentio(レンティオ)とか結構便利で重宝しているのですが、家庭ごとに向き・不向きがあると思うので、そこを買う前に見られるのは大きい。テントのレンタルサービスも徐々に出てきているようですが、そういうサービスも手厚くなったらいいなと。アウトドアの新たな魅力に出会うためにも、気軽に足を踏み入れるための仕組みがあったらいいのではと思います。

-参考になります。今後、やってみたいアウトドアはありますか?

海釣りもやってみたいし、登山もしてみたいですね。ただ興味はあるのですが、知り合いでこれらをやっている人がいないので、なかなか踏み出せずにいます。一緒に行けるレベルでの知り合いが近くにいないのも障壁のひとつですね。いつか冬山登山をしてみたいなぁ。(妻は嫌がっていますが……。)

キャンプでは、原点であるヨセミテでキャンプしてみたいですね。海外のキャンプはまた日本と楽しみ方も違うようなので、海外のキャンプを体験してみたいです。

-海外のキャンプもいいですね!

仕事柄、海外出張も多いので、海外旅行はもともと好きなんですが、海外のアウトドアショップは見ているだけでワクワクしますね。海外のギアは日本にないものが多く、目新しくてつい買ってしまいます。キャンプで以前使っていたチェアも海外で買ったものだったんですが、スーツケースに入らなくて持って帰るのに苦労したり。そんな体験も楽しかったりするのですが。

-海外はどこに行くことが多いのですか?

仕事でAmazon本社があるシアトルに行くことが多いです。本社の近くにREIという大型アウトドアショップがあるので、そこによく行きますね。向こうはハンモックがたくさんあったなーとか、とにかく店が大きくてスケール違うなとか、そんな印象です。

-(……いいなぁ!)今度はビジネスとして、アウトドアでやってみたいことはありますか?

そうですね、もともと好きなことを仕事にするという思考ではないので、正直考えたことがないのですが……。敢えて挙げるなら、利用者を増やすためのプラットフォームのようなものをつくることがあれば、何かやってみたいかもと思います。僕はエンジニアなので、キャンプが好きでも「キャンプ場経営」はなんか違う。オンラインとオフラインをつなぐプラットフォームをつくるようなことができればおもしろいですね。デジタルをうまく使って、アウトドアのハードルを下げる仕組みをつくれるといいかも。

-結局、初心者だと「できる・できない」の判断基準さえもわからないですからね。

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最悪、初心者でもがんばって調べれば、ある程度の情報は取得することが可能です。一番大変なのは、師匠のような、アウトドアを楽しむための“道しるべ”を示してくれる存在をどう探すか。周りにやっている人がいない中、“道しるべ”的存在をどう探すかで、割と途方に暮れることがあります。ここがなんとかなれば、アウトドアを楽しむ人はグッと増えるのではないでしょうか。集客とか安全性とか、クリアする課題はたくさんありますが、ここが改善されれば僕も今以上にたくさんのアウトドアを楽しめるようになるので、何かできるといいかなーと思います。

-多くの人が感じている課題なので、ぜひ西谷さんのスキルもお借りしながら解決できるといいなと思います。その時はよろしくお願いいたします!本日はありがとうございました。


■ お知らせ ■

「キャンプ好きエンジニア Meetup」を不定期で開催しています。「エンジニア」と言ってはいますが、エンジニア属性じゃない人(デザイナーとか)などもWelcomeです。次回開催予定や参加方法は下記URLよりご確認ください。


■ 編集後記 ■

キャンプ好きエンジニアの第一人者である西谷さんに、念願のインタビューを実施できました。休みは外に一歩も出ないほどのインドア派から、週1でキャンプに行くほどのアウトドア派への変貌ぶりを聞き、ここまで人を変えてしまうキャンプのすごさを改めて実感しました。

西谷さんにとってアウトドアを表すキーワードは“広がり”。アウトドア、キャンプを始めたことで人生の楽しみや遊びが広がったこと、またこれをきっかけに人との関わりも広がったからとのことでした。今後もアウトドアを通じて、未開の分野への広がりを楽しんでいただきたいです。(小野)