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【私のアウトドア履歴書♯6】高宮 慎一さん(株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー)

スペースキーの小野です。今回の「私のアウトドア履歴書」は、ベンチャーキャピタリストで、株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナーの高宮 慎一さんにお話をお伺いしました。ベンチャー界隈でも釣り好きとして有名な高宮さん。釣りの魅力をはじめ、ビジネスとしての釣りについてもお話いただきました!


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高宮 慎一 氏  株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー

戦略コンサルティング会社アーサー・D・リトルを経て、グロービス・キャピタル・パートナーに参画。コンシューマー領域、ヘルスケア領域における投資を担当。投資先に社外役員として参画し、成長をハンズオンで支援。
投資実績にはIPOにアイスタイル、オークファン、カヤック、ピクスタ、メルカリ、ランサーズ、M&Aにしまうまプリントシステム、ナナピ、アクティブな投資先にビーバー、タイマーズ、クービック、リブルー、ミラティブ、ファストドクター、グラシアなどがある。
東京大学経済学部卒、ハーバード大学経営大学院MBA修了。
Twitter: @s1kun


高宮さんが釣りの“沼”にハマる理由


-よろしくお願いいたします。まずは幼少期から、どのように過ごされてきたのでしょうか?

元々それほどアウトドア気質ではなかったのですが、生き物が好きで、家の近くで普段の遊びの一つとして釣りはちょいちょいやっていました。海釣り公園でキスとか、近所の川や池でクチボソとか。両親も釣りをしていたわけではなかったので、釣りを始めたのは近くに釣りができる所があったからなんとなく。教えてくれる人もいなかったので、恐ろしく釣れなかったです(笑)。

小学5年生の頃に父の転勤でイギリスに住んでいた時期があったのですが、そこは超がつく田舎町。遊ぶ所もなくて、ただ海が近かったので1日中釣りをして遊んでいた思い出があります。海岸で自分でイソメを掘って、それでシタビラメを釣ったりとか。近くの牧場では趣味でトラウトを飼っている人がいて、頼んで釣らせてもらったりとかしてました。

-おもしろい思い出ですね。

そんな感じでゆるゆると釣りと付き合ってきました。釣りの“沼”にハマりだしたのはここ3年くらいで、割と最近なんです。ライトゲームをやり始めたタイミングで、たまたま出張で行った宮崎で、アジングタックルで40cm近い大きなチヌが釣れたんです。それが第一のきっかけ。

それからもっと釣りたくなって、平日夜間に比較的気軽に行けるものとして、シーバスを始めました。松岡さんという投資先のCTOにオカッパリに連れて行ってもらって、でも夏でなかなか釣れなくて「どうやったら釣れるようになるんですか?」と聞いたら、「2年間週2でやることです」という体育会系のアドバイスをもらいました。

-結構ハード(笑)。

そのアドバイスを真に受けてしまったんです(笑)。僕は魚の大きさや量よりも、どんなシチュエーション、どんなタイミングでも、何とか1匹はひねり出したい派。いろいろな技の引き出しを増やして、仮説を立てて、答え合わせをするような釣りが好きなんです。なので、ボッコボッコにボイルしてて入れ食い状態よりも、渋い状況の方がおもしろみを感じます。

オカッパリって、最初まったく釣れないんです。釣れないから、やり取りも下手で、バラしも多くて、悪循環。(※バラし:針にかかった魚を逃してしまうこと。)それで、まずはノったら絶対バラさないようになるぞと、練習のためにボートに乗るようになって、オフショアにもハマる。という流れで、釣れないことでよりどうしたら釣れるようになるんだと試行錯誤した結果、自然と“沼”にハマっていったんですね。

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-釣れないからこそおもしろいというのは、たしかにハマっていきそうですね。

あるとき松岡さんが、釣り友達を紹介してくれたんです。Sacanaさん(https://www.instagram.com/sacana_inc/)という年間釣行約250日程度、シングルフックベンチャーを立ち上げようとしているような変態(笑)。彼が言うには「釣りたかったらウェーディングだ!」と。ウェーディングって言うので膝ぐらいかと思ったら、いきなりディープウェーディングに連れていかれたんですね。(ウェーディングとは、海の中に浸かる釣りのこと。)初スズキサイズが、ディープウェーディングでした。それでまたこれにハマってしまって!

-ハマったポイントは何だったんですか?

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夜の海で周囲は真っ暗で何も見えない状況の中、巻き抵抗や自分に当たる潮の強さなど感覚だけを頼りに釣りをするんです。風を感じながらルアーを投げて、ルアーの抵抗やボトムに当たる感覚から、脳内イメージでポイントのマップを描いていく。海や自然と一体になれるあの感覚は何とも言えないものがありますね!五感をフルに活用することで、仕事のことなど左脳的なことがリセットされるので、頭や気持ちの切り替えにもすごく効果的だと感じています。

ただ、ディープウェーディングは自分もさることながら、周りに迷惑をかけないように、本当に気をつけてやっています。ライフジャケット、エイガード、位置を知らせるフラッシャーライトは絶対に必須。基本下げ(潮)しかやらないし安全に時間に余裕をもって引き返す。絶対に一人で行かない。連絡にはBonxという携帯とBluetoothを使って常時接続しっぱなしのトランシーバーみたいなデバイスを使ってます。Bonxは何かあったときに安心というのもありますし、ちょっと離れてても、仲間と会話しながら釣りもできるから、すごい楽しいです。万が一が起きてしまうと危ないので、ちゃんと注意が必要ですね。

-先ほど、釣りの目的として「技を極める」というお話がありましたが、そこが高宮さんにとっての魅力になるのでしょうか?

そうですね、ルアーで釣るというこだわりはあって、ルアーって普通に考えるとただのプラスチックや木片であって、それをいかにして魚に食わせるか。技を尽くして魚を釣るのが楽しいですね。様々な制約がある中で、技を尽くして楽しむ遊びが釣り。結果(釣果)を極めようとすると、突き詰めるともはや漁になってしまいます。釣るためのメソッドに焦点を当てれば、釣るという過程を楽しむことができます。この時期のこのタイミングの回遊パターン、潮の状態、風向き……、その時の状況に合わせて、最適な引き出しを増やしていくのが私にとっての最大の楽しみ。違うジャンル釣りのメソッドが功を奏することもある。新しい引き出しが増えるのは、RPGでレベルアップして「タカミヤは呪文を覚えた!」みたいな楽しみもありますね。

-理論派ですね!

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極端な話、ソナーと魚探積んで、魚がいるところに行って、餌で釣りをすれば釣れるんだと思います。でも、それこそ「マッチ・ザ・ベイト」や「マッチ・ザ・バイト」の考えに沿って、今この状況で、このポイントで魚はこういう食い方をしているっていう仮説を立てて、その状況に当てはまりそうなルアーの種類、レンジ、カラー、流し方を選んで、検証していく。それが釣りの醍醐味なんだと思います。

仮説・検証という点ではWebサービスを作るのと同じ。Webサービスと違うのは、生き物相手なので、スレるとか状況が刻一刻と変わる、不確実性が高いという要素があること。魚は気まぐれなので、同じ状況でも、何かの理由で同じ挙動をしない。その年その年の状況で、回遊パターンが少しでもずれれば、全然魚が入ってないみたいなこともあります。まさに不確実性との戦いなんですね。だからこそ、自分で何とかできる部分の可能性を少しでもあげて、確率を上げたい。メソッドであったり道具であったり、そういう部分に目が行くようになったら、自然と“沼”にどっぷりハマりました(笑)。

例えば、魚が少なくて活性も低い真冬の運河でセイゴでも、たまたま釣れたんじゃなくって、「釣ったった!」ってなるのが楽しいですね。

-かなりギークですね!


高宮さんの推しギア


-次に、推しのギアについて聞かせてください。

釣りにハマりだした当初は、そんなに道具へのこだわりはありませんでした。ただ、いろいろな釣りをやるようになって(特にGTですが)、"このルアーで釣りたい"志向になってきましたね。釣るための性能でいったら、プラスチックの移動重心のルアーの方が釣れるかもしれない。でも、「このルアーで釣りたい!」というこだわりで釣るのがまた楽しいんですよね。元某プロショップの店長の名言があって、「ちゃんとしたパーティーに呼ばれているのに、ジャージでいきますか?タキシードで正装しないなんて魚に失礼ってもんでしょ」っていうのがあって(笑)。元々は、技を駆使してルアーで釣りたいという中で、ルアーという制約だけだったんですが、だんだん沼にはまると“このルアーで”という制約が厳しくなってきました(笑)。そんな感じで、道具にもこだわるようになってきて、男子のコレクション魂みたいなのにも火がついてしまいました。

するとどんどんコレクションの“沼”にもハマりだして、知り合いが作ったハンドメイドのウッドのルアーで釣りたいみたいに、マニアックになっていきました。

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これはマレーシアのビルダーさんがGT用にハンドメイドしてくれたウッドのルアーです。このルアーにまつわる釣行がまた壮絶なんですけど、マレーシアのオイルリグGTのフィッシングツアーに参加した際に、たまたま港で隣の船に乗ってた現地のビルダーさんと仲良くなって、後から作ってもらったもの。ハンドメイドで、削り出し、ワイヤーつける、塗装する、乾かすなど、いちいち工程を写メで送ってくれて、それはそれで楽しく、思い入れがある一品。

同じGTフィッシングでも、日本とマレーシアだと考え方が違って、メソッドも違ったりして、すごい勉強になりました。このルアーは、日本のGTルアーにはあんまりない、シンペンみたいにちょっとレンジが入ってタイトなS字を描く動きをするのが特徴で、トカラ列島のめちゃ渋い状況とかで大活躍してくれました。

-釣行が壮絶だったというのは?

今までの遠征で、最もハードだったかも……。車中泊+船中泊4日間+機内泊という0泊6日みたいな強行スケジュール、しかも船がマレーシアの田舎の漁船で、釣り用ではないので転落防止のレールもないし、まぁまぁボロいんですよね。そして初日は大荒れで、雷も鳴る中、船の屋根の上にビニールシートみたいなものを張っただけの所で、山小屋みたいにぎゅうぎゅうで雑魚寝だったんです。シャワーも雨水をたらいで水浴びみたいな。でもGTを5匹釣ることができました!マレーシアは20kgが出ればいいサイズみたいな中、30kgオーバーもつれて、GTとのやり取りにだいぶ慣れました。でも、ちょっとやりすぎた感はありましたね(笑)。

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※現地ではGTは食用となっており、漁船に同船しているので、釣った魚は漁師さんが生活のために市場に卸しています。いわゆるキャッチアンドリリースのゲームフィッシングとは、現地の文化が異なります。

-想像以上にサバイバルなツアーですね!

魚も、見たことない動きのルアーに興味を持つというのはある気がします。そういう点では、他の国の釣りのメソッドを開拓し取り入れるのも面白いなと思いました。出張などで旅行すると、現地のルアーを買ってくるようにしています。

その他に推しのルアーでは、

萬葉ベイト 230BDF

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国内初GTはこのルアーでキャッチしました。このルアーも思い入れがあります。もともとは相模湾マグロで有名なルアーなんですが、ビルダーさんと知り合いになって、ツートンアワビのオリジナルカラーでGT用にワイヤーも太くカスタマイズしてくれました。知り合いのビルダーさんに、そこまでやってもらうと思い入れも強くなって、このルアーで釣りたい!ってなっちゃうんですよね。このルアーで30kgGT、50kgオーバーのセイルフィッシュとか釣っているんですが、GTの噛み跡が残っていて、樹脂で補修して使ってたりしたのですが、テイルのウッドが割れたりワイヤーが曲がったりしたので、殿堂入りで引退させました。「この嚙み跡は、あの時のトカラの国内初GTだ」に思い出しながら、思わずニヤニヤしています(笑)。

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ワンズフィッシング しぼり

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これはオカッパリによく一緒に行く仲間が、釣り好きが高じてインディーズのブランドを立ち上げてしまった、ワンズというところのワームです。すごく張りがあって、節でちぎって使える、スレている、渋いときに圧倒的な効果を発揮するワームです。張りからくる微妙な波動が効くんだと思っています。湾奥の運河などでは、圧倒的なチート感で釣れるの、封印しようと思ったりしつつ、最後は頼っちゃいます。

いずれにも共通することとして、仲良くなった人が作ったルアーとかだと、やっぱり思い入れが沸いて、このルアーで釣りたくなる。釣れた後もこのルアーで「釣れたよ!」みたいなコミュニケーションが生まれるのも、いいですね。

-そういうつながりもステキですね。ロッドはどのようなものを使っているんですか?

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GTにはリップルのウルティモの83ML RVTZ Tuneをメインに、カーペンターのエンドレスパッション82/38、テンリュウのスパイクSK803S-Kを使っています。特にウルティモは気に入っていて、軽いので一日中GTルアーを投げていても疲れないし、よく曲がるので、40kgのGTのスレがかりも上がるほどのパワーもあってすごい使いやすいです。実はこれ、欲しいなって思った時には、ほぼ日本中のプロショップに問い合わせてもなくて、ネットで探したら、香港のショップにあって。で、たまたま出張が入っていたんで、香港でデモをやっているさ中、その横をすり抜けて、買いに行ったんです。そうしたら、そこのオーナーがまたマニアックで、お店の10周年にカーペンターの小西さんがオリジナルのルアーと作ってくれたこととか、福井さんのビッグディッパーの常連でみたいな話で盛り上がって、友達になりました。(すごい釣り内輪ネタごめんなさい。)こうやって釣りを通じて、世界中に友達が増えるのもいいですね。

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頻度的に一番よく行くのがシーバスのオカッパリなんですが、G-CRAFT(通称ジークラ)のミッドナイトジェッティー 湾岸ドリフトスペシャルを愛用していて、現在のは2本目になります。感度が高い高弾性のロッドが好きなんですが、これは最初はパツパツなんですが、使い込んでるくると適度にへたってきて、よく曲がるし、ティップも入るんで、すごい気にいっています。87という長さ、リールロックがアップロック、ダウンロック両方ついているので長さの調整が効き、湾奥の運河から、ウェーディングまで色々つかえます。そして、キャストが決まった時の飛距離がめちゃでます。

-なるほど~。「ギア=〇〇さん」が見えるのがさらに愛着を高める要素になっているんですね!(やばい、話がマニアックすぎて付いていけない。笑)


師匠との出会い


-高宮さんのように釣りにハマる人を増やすには、どうすればいいでしょうか。

釣り業界ってインターネットで調べても、他の領域に比べるとまだまだディープな情報が少なく、そういう意味では“インターネットの高速道路“がまだ届いていない領域だと思います。なので、始めたい人・始めたばかりの人が進みたくても進みにくい状況が生じているのかと。僕がラッキーだったのは、何人ものいい”師匠“との出会いがあって、教えてもらえる機会があったこと。

釣り人って、自分のポイントを荒らされないように最初こそ警戒しますが、マニアックな釣り談義で仲良くなると、「相手を釣らせたい」みたいな感じで、めちゃくちゃ教えてくれいます。そういう、マニアックで突き詰めている師匠たちとの出会いも、人のコクみたいなのに触れられて、めちゃ楽しいんですよね。

-高宮さんの師匠とは例えばどのような方なんですか?

先ほど出てきた松岡さん、Sacana、アングラーズという釣りアプリを経営している藤井さん、ワンズの友人、あとはGTはなんといってもビッグディッパーの福井健三郎さんですね。福井さんは、ビッグディッパーというGT船の船長なんですが、世界一のGT船と言っても過言ではないかと。

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(GT界の憧れ。福井健三郎さん)

以前福井さんが、「走ってる途中にマグロがいると、マグロをやりたいっていう人もいるかもしれない。でも、オレなんかはGTしかできないから、GTしかやらないんだよ。」と謙遜しておっしゃってて。GTに対する思い入れ、こだわり、お客さんを釣らせようとする想いみたいなものが半端ないんですよね。長年の経験でポイントを知っているのはもちろん、ポイントの中でもピンポイントで沈み根の場所とか把握してるし、潮の流れるタイミング、風向きとかが、完全に一致するタイミングでポイントを流すんです。そして、ヒット、キャッチしたデータを全部メモしているんですよ。

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船上で出る食事とか生活面とかも、リッツカールトンかっていうくらいお客さん一番でホスピタリティにあふれてる。とにかく、気持ちよくGTを釣らせてくれようとするんです。で、こっちもGTが釣りたいから、日が暮れるまで最後まで投げ倒していたりすると、めちゃめちゃ教えてくれるんですよ。最終日とかも、ギリギリまで釣らせてくれる。一回なんて、ギリギリまで釣りしすぎて、飛行機に間に合わなくなりそうになって、ホームの港に帰る時間がなくなって、女将さんに途中の港まで車で迎えにくるように手配してくれたり。

とにかく福井さんのGTフィッシングへのこだわりとお客さんを釣らせようとするのが、突き詰めている人のすごみ、プロとしての姿勢みたいなのが、もう何かすごくて、福井さんに会いに行くだけでも価値があると思います。(ただ、人気で予約が全然取れないんですけど。笑)

-すごい。まさに福井さんはGTで“人”を釣っているのでしょうね。

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そうですね、私も福井さんに魅了された一人です。そういう師匠との会話が楽しいんですね。また、GT界隈ってせまいので、話の中で知り合い同士がつながるんですよ。それでまたつながりが強くなって、コミュニティが広がって。GTを通じて、本当に世界中に知り合いができました。釣りで人がつながるっておもしろいですね。

そうそう、本当は3月にも福井さんのところに行く予定だったんです。知り合いになったプロの人と一緒に、ビッグディッパーに行くという釣りファンとしては夢のような機会だったのですが、コロナで断念。福井さんにも申し訳なかったし、本当に悔しい。早く気にせずに釣りに行ける日がくればいいなと思います。そして、その日まで釣り船とか、超お世話になっているショップとかに、自分が何ができるかなぁとか考えちゃいますね。

-こればっかりは悔しいですが、仕方ないですよね。

釣りに行けなかい時とかは、無駄にノットの練習とかしちゃってます(笑)。どうやったら現場でも早くできるか、ドラグチェッカーでどれくらい強度がでるか測ったりして、練習しています。特にGTみたいにバイト数があまりでない釣りだと、一回バイトが出た時にいかに確実に乗せて、キャッチするかみたいな発想になって。ドラグ設定×本線の状態×リーダーの結束×リーダーの状態×リングの結束×リングとルアーの接続×フックの状態みたいに、それぞれが確率の掛け算になっているので、一つ一つをいかに万全を期すかみたいになってきました。そういうGTの考え方がシーバスに応用できたりするのも楽しいです。あと、釣りって釣りに行くまでも楽しくって、釣りのことを妄想しながら準備するのも楽しくって……。でもやっぱり、早く海に行きたいです!

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高宮さんが思う、業界の今後


-アウトドア(釣り)業界に期待することは何でしょうか。

私は偶然、いい釣り友達や師匠に巡り合えたのでここまでハマることができましたが、きっかけがないとなかなか入り込めないレジャーなのかなと思います。でも、メディアとしても、ただネットで情報を出せばいいとか、そんな単純な話じゃないのが難しいところですよね。情報次第ではポイントが荒れたり、今楽しんでいる人が傷ついたりと、マイナスの影響が出てしまう恐れもあります。

Webメディアで言えば、コンテンツのエンタメ性とマネタイズのバランスは大事。怪魚釣行記とか下記のような記事とかはエンタメとしてはおもしろくて僕は大好きです。でも、すぐ釣果につながるという即物性はないのでマネタイズはしにくい。ここがビジネスとして成り立たせる難しさだと思います。

また、今は情報が供給者目線で整理されているので、ユーザー目線で整理するみたいなところはチャンスがあると思っています。例えばシーバス動画とかって、雑誌やメーカーごとに分散してしまっているんですが、特定のシーズンやパターンごとに雑誌やメーカーの情報を横断して集約してほしいし、ともすると売り手側のマーケティングになってしまうこともある情報を客観的に取捨選択してほしいんですよね。

あとは一般論、入門編でなく、もっと踏み込んだ深いコンテンツも欲しいです。さっきも出た“インターネットの高速道路”を敷いてほしいんです。ポイントや状況に合わせて釣れるメソッドなど、深い情報が欲しい。そうなってくるとポイントが荒れないように絶妙な塩梅で一般化してボヤかすとか、書く人の釣り経験が必要とか、コストが高くなるなどの課題もでてきますが、それは使い分け次第かと。コンテンツミックスのやり方次第で、マネタイズするコンバージョンコンテンツ+集客をするエンタメコンテンツなどポートフォリオを組むんだと思います。

思いっきり仕事のベンチャー・キャピタルっぽい発言になっちゃいましたが、公私混同できたら最高だなぁって思うので、釣りスタートアップにはどんどん出てきてほしいですね!

-う~ん、参考になります。

釣りに限らず、メディアのビジネスモデルに関しては個人的に、今後は「PV×広告単価」というモデルはキツイと思っています。ユーザ課金、EC、どのようなマネタイズにしろ、ベースに濃いファンコミュニティがないと収益性は上がらないと。メディアの行きつく先は「ファンコミュニティ」であると考えています。領域によって最適化する形は変わりますが、ユーザ課金、広告、EC、リアルイベントなど色んなマネタイズの手段を積み重ねていき、収益性を高めていく。

キャンプ、登山、釣り、それぞれ最適なマネタイズポイントは違うので、スペースキーさん全体として見たときに「アウトドア」という括りでやるべきなのか、キャンプや釣りとか特定のバーティカルに集中すべきなのかは大きな論点かなぁって思います。単純に売上・利益みたいな経済的価値の観点からすると、最初は色々な領域をやる中で、一番収益化しやすくてスケールもするところを見つけたら、そこに集中して一点突破するのがセオリー。ただ、企業とは経済的価値だけでなく“それをやる想い”もあるので、そのバランスをどこにおくかも大事ですが。

-ううむ。

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釣り人口600万人と言われる市場で、日本の全人口からするとニッチなジャンル。でも、僕のような重課金ユーザに課金をして、無料ユーザでスケールを出すという方法もある。その場合も適切なバランス設定がポイントになります。釣り業界のマーケ予算などお金の大きな流れが、まだまだオンラインにシフトしていないという課題はありますが、世の中の大きな流れ的に見るとそれも時間の問題だとは思います。


高宮さんが釣りで達成したいこと


-高宮さんにとって、釣りは仕事にどのような影響を与えていますか?

私はベンチャーキャピタリストとして日々、ベンチャー企業やその起業家たちを見ています。起業家と釣りに行く機会もあるのですが、釣りをするとその人の“芸風”が見えてくるんです。僕でいうと、過程、行先よりも旅路にこだわるとか。

釣りは事業と一緒だと思っていて、例えば下記のような部分で共通する部分があります。

・大きなトレンドを読む力
 =季節の回遊パターンを読んで今ならどこに魚がいるのか。魚がいそうなポイントを読む力。
・事業のドメイン探し(どこに事業機会があるのか)
 =ポイントの中でどこに魚がついているのか。
・ビジネスモデルの仮説、検証
 =どんな動き、どんなカラー、どんなレンジのルアーなのかの仮説、検証

だから、イケてる起業家は釣りがうまい!……という言い訳で起業家の友達と釣りに行っています(笑)。

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-ビジネスにも大いに役立っているんですね!ではプライベートでは影響はありますか?

「禅」のような、頭と心をリセットできるのはとてもいい効果だと感じています。前に仕事が忙しかった時に、禅に興味があって試してみたりしたんですね。でもなんだか気軽にできる感じではなくて、ちょうどその頃にディープウェーディングと出会って「これだ!」と。頭をシャットダウンして、五感だけで自然を感じる。その感覚はまさに禅と同じだと思いました。自分が無になって自然と一体化して、リセットされる感覚は、すっとしますね。

-釣りの中でもウェーディングに特にその効果がありそうですね。おもしろい!では最後に、アウトドアや釣りでやってみたいことはありますか?

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釣りであれば、シーバスとGTは極めたいですね!どんな時でも必ず釣れるみたいに、うまくなりたいです。あとは……最後はクロマグロかな~。クロマグロ100kgを釣ったら引退するかもしれないですね(笑)。

あと、子どもと釣りにたくさん行きたいですね。中学生になったら、一緒にビッグディッパーでGTとか、ウェーディングとか、釧路でカヌーに乗ってキャンプしながらとか、夢が膨らみます。

-いいですね~!お子さんも釣りが好きなんですか?

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子どもが魚オタクなんですよ。さかなクンが大好きで毎年、東京海洋大学の文化祭にも行くぐらいです。マニアックなんですが競技金魚すくいもやってて、全国大会で小中学生の部で2年連続10位入賞しています。将来は魚の研究者になりたいそうです。

実は、釣りにハマる第二のきっかけっていうのが、子どもが小さいときに、釣りに行きたいって言って。自分も小さいころに好きだったのを思い出して、またハマったって感じです。

-す、すごい……!実績もそなわっている!

子どもが反抗期になって、会話がなくなっても、一緒に釣りにいくから大丈夫みたいになれるといいなと。

-釣り×ビジネスでやってみたいことはありますか?

釣りコミュニティはいつか、本業のベンチャー投資でもやりたいですね。釣りはレジャー産業で2位、一次流通だけで2000億円と言われており、その規模は決して小さくはありません。コミュニティ化の流れを作り、新たな釣りビジネスがあればいいなと。

釣りの一番の魅力は、人とのつながり。釣り人同士はもちろん、釣具屋の店長さんや師匠など、釣りが生むつながりは強く楽しいものでもあります。そのコミュニティとしての強さにハマるようなビジネスモデルが理想ですね。

-たしかに、“人”がその価値を高めている部分はありますね。

初心者のエントリーハードルを下げる点でも、“人”との出会いは重要です。初心者と師匠をつなぐサービスとかがあってもいいかもしれないですね。例えば、シーバス@豊洲というコミュニティサイトを運営している方は、ガイドやリアルイベントなどもしています。

そういった人たちをつなげコミュニティを強くするようなプラットフォームがあってもいいかな。教えてくれる師匠や友達がいないと始められないのが釣りでありアウトドアなので、そこを解消するようなビジネスがあったらと考えています。

-そう、アウトドア全般の課題なんです。だからこそ、こういうことができたらいいですね!

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好きな友達と好きな釣りが仕事になるような事業ができたら最高ですね。大いに公私混同できるような釣りベンチャーがでてくることを期待しています!

-我々も、新しい釣りビジネスに期待したいですね。本日はありがとうございました!


■ 編集後記 ■

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釣りは人とのつながりを作るレジャーですが、高宮さんはそのつながりがギアにも表れているところがとても印象的でした。「このルアーはあの人が作ってくれたものだから」そう思うと、その人からパワーをもらっているよう。「釣る」の裏側にあるエピソードはとても人情的で、だからこそ高宮さんをはじめ多くの人も心をつかんでいるのかなと感じました。

今回はキャピタリストとして、スペースキーに貴重な提言もくださいました(ありがとうございます!)。釣りの新たなビジネス、スペースキーでも挑戦できるようにがんばります!