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リーグワン2023/24シーズン終了 サンゴリアスファン目線で振り返る

ジャパンラグビーリーグワンの2023/24シーズンは、リーグ戦2位の東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)が5/26の決勝で、リーグ戦を全勝で1位通過した埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)を破って優勝し、幕を閉じた。

私の推しチームであるリーグ戦3位の東京サントリーサンゴリアス(東京SG)は、準決勝でBL東京に敗れたものの3位決定戦でリーグ戦4位の横浜キヤノンイーグルス(横浜E)を倒し、3位でフィニッシュした。

この記事ではそんな今シーズンをサンゴリアスファンの目線で振り返ってみたい。


前説 サンゴリアスファンになった頃の話

さて私は今年で23になる年齢だが、2010年ごろからサンゴリアスのファンだ。サンゴリアスと言えば、アグレッシブアタッキングラグビーが身上だが、当時サンゴリアスのヘッドコーチにエディージョーンズ氏が就任し、超攻撃的なラグビーを志向したのがその始まりだ。

当時はまだリーグワン前身のトップリーグの時代で、2010/11、2011/12、2012/13シーズンと三連覇したのを覚えている。うち初めの2シーズンはエディージョーンズHCの下での優勝であり、その後エディーさんは日本代表のHCに就任。2015年ワールドカップで南アフリカを倒したのはあまりに有名だ。(その後、イングランド代表監督で2019年ワールドカップ準優勝し、2023年大会でオーストラリア代表HCとしては予選敗退に終わったが、現在は日本代表HCに再就任)

そんなわけで、当時小学生だったわたしは、巨人大鵬卵焼き精神というのだろうか、当然のごとく強いチームが好きだったので、サンゴリアスファンになったというわけだ。(多分今ならワイルドナイツかブレイブルーパスのファンになっただろうなあ)

ちなみに当時好きだったのはCTB12番でプレーしていたニコラスライアン選手。192cm、100kgの体躯で愚直に突進、オフロードも決めまくるバックスのかなめだった。タックルも強く、ゴールキックも蹴っていて、とても魅力的だった。私は今でも一番好きなセンターコンビを聞かれたら、絶対にニコラスライアンと平浩二と答える。この二人の並びでさらにWTBには小野澤宏時がいるとか最高すぎるだろ。

今シーズンのサンゴリアスについて(評価できる点)

今年のサンゴリアスは3位に終わった。リーグワンが開始してから3シーズンたち、2位、4位、3位ときている。優勝はないが、必ず4位以内に入るという実力を見せつけているといえるだろう。ファンとしては優勝が見たいが、どのチームも強化を進める中、かなり評価できる結果だとは思っている。

さて、個人的に今期のサンゴリアスの評価できる点を考えてみる。
・カテゴリーCが少なくても戦えていた
・新人賞の高本やベストラインブレイカーの尾崎などなど
・ネバーギブアップの精神

カテゴリーCが少なくても戦えていた

まず、カテゴリーCが少なくても戦えていたという点だ。カテゴリーCというのは他国代表歴があるメンバーのことで、同時に3人までしか出場できない。サンゴリアスはカテゴリーCが1人や0人という試合がかなりあった。

対照的なのはワイルドナイツで、LOのデヤハー(南ア代表)、CTBのデアレンデ(南ア代表)、WTBのコロインベテ(南ア代表)の3人が同時に出るのが今期のベストメンバーだった。ブレイブルーパスもフリゼル、モウンガがほとんどの試合に出場して活躍していた。

サンゴリアスのカテゴリーC出場が少なかったのは、別にサンゴリアスが意図したわけではない。サンゴリアスもFLのケイン(NZ代表)、SOのサンチェス(アルゼンチン代表)、WTBのコルビ(南ア代表)を獲得していた。なんならサンチェスの前にウエールズ代表のSOアンスコムを獲得していたが、怪我で出られずということで、サンチェスを獲得したくらいだ。

ただ、ケインは怪我で途中から出場できず、コルビはプレーオフには戻ってきたものの途中怪我、サンチェスは怪我かはわからないが、おそらく高本が素晴らしすぎたのもあって短い出場時間にとどまった。

カテゴリーCといえばメンバー登録はされなかったが、FLのマクマーン(豪代表)が在籍し続けている。長引く怪我のためか、昨シーズンも出場がないが、インスタグラムやYouTubeにその姿が登場することから来シーズンの復活に期待がかかる。もしケイン、マクマーンのFLコンビが見られたら涙を流して喜ぶぞ、私は。もちろん、下川、山本も見たいけどね。

ともかく結果としてカテゴリーCの選手があまり出場しなかったが、それでも3位に食い込んだというのは非常に評価できると思う。

カテゴリーCについては、しかしいるだけでは結果が伴わないというのも今シーズン浮き彫りになったことかもしれない。トヨタヴェルブリッツ(トヨタV)は、FLにデュトイ(南ア代表)、SHにスミス(NZ代表)、SOにバレット(NZ代表)を擁したものの7位にとどまった。豪華メンバーをそろえたところで勝てるとは限らないのが今のリーグワンなのかもしれない。

とはいえ、HOのマークス(南ア代表)が抜けてチーム力が下がったように見える昨季優勝のクボタスピアーズ船橋東京ベイ(S東京ベイ)やFLサベア(NZ代表で昨季年間最優秀選手)の加入したコベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)の躍進を考えると、影響力ははっきりしているが。

来シーズンに向けては、ケインとコルビが残る。マクマーンも退団しなければこの3人で戦っていくことになるだろう。あるいは、マクマーンの代わりにまたスペシャルなカテゴリーCが入るのだろうか。注目だ。

新人賞の高本やベストラインブレイカーの尾崎などなど

続いては、サンゴリアスが誇るプレイヤーについて見ていきたい。今季やはり特筆すべきはSOの高本だろう。モウンガをして、日本代表での活躍が楽しみと言わしめた逸材で新人賞を獲得した。ペナルティ後のタッチキックで、ぎりぎりを攻める度胸を持ち、インプレーキックで隙あらば50:22を狙い、欄も鋭い。サンチェスの出場機会が少なかったのはこの人があまりに良かったからだと思う。今後、ディフェンスがさらに良くなれば日本代表も期待できると思う。

ベストラインブレイカーを受賞した尾崎晟也は、もちろん突破力やトライ獲得力もすごいが、攻守にわたって非常に運動量が豊富でラグビーIQが高い。もはやサンゴリアスに欠かせないベテランの域に到達してきている選手だ。その安定感は目を見張るものがある。

他にも今シーズンのサンゴリアスではHOの堀越キャプテンやLOのホッキングスなど常に試合に出続けている、チームの核となる選手の安定感が目立った。堀越はキャプテンとしてチームをまとめ、スクラム、ラインアウトの核となり、フィールドプレイでもゴール前でトライを量産するなど大活躍。ホッキングスは自慢の206cmの体格を生かし、ラインアウトキープやあのヴェルブリッツ戦の劇的逆転を生み出したマイボールキックオフの再確保などでも不可欠な存在だった。

また、今シーズン覚醒したと思われる選手もいる。それがCTBのプニヴァイと尾崎泰雅だ。プニヴァイは昨シーズンから在籍の選手でまだ23歳だが急成長している。

プニヴァイをベストフィフティーンに選ばれたワイルドナイツの12番デアレンデと比較してみる(両者のプレー時間は1029分と1025分でほぼ同じ)と、以下のようにそん色ない結果となっている。ラインブレイク数ではプニヴァイが上回っており、非常によいアタックスキルを身につけていることがわかる。またディフェンス面でも80%以上のタックル成功率である。私としては、さらにパスのオプションも増やして、ニコラスライアンのようなセンターになってほしいと思うのである。


プニヴァイとデアレンデのスタッツ比較

尾崎泰雅は晟也の弟であり、パワフルなランニングが魅力の選手だ。今シーズンは中野の怪我やケレビの退団もあり、WTBやCTBとして多くの出場機会があった。13番での出場が多かったことから、こちらもベストフィフティーンのワイルドナイツのCTB、ライリーと比較してみる。プレー時間はライリーの方が約50分多いが、得点以外ではほぼ同等の結果を出しており、今シーズンの活躍ぶりがうかがえる。シーズン開幕のスピアーズ戦で魅せたダイナミックなトライは今シーズンの活躍を予感させたが、そのような結果となった。ただ、タックル成功率は両者ともやや低いので、そこを改善すればさらに良いプレイヤーになれるだろう。


尾崎泰雅とライリーのスタッツ比較

ネバーギブアップの精神

今シーズンのサンゴリアスは、リーグ戦終盤こそ失速してしまったものの、多くの試合でネバーギブアップ精神をいかんなく発揮した。接戦をものにしたのが今期のサンゴリアスの順位につながっているといえるだろう。

前半22分時点で0-29のビハインドとなった第6節の三菱重工相模原ダイナボアーズ(相模原D)戦のラストプレーでの逆転勝利や、ヴェルブリッツ戦での相手のPGがトライにつながる不運があった中でのラストプレーでの逆転勝利がこの代表例だ。もちろん、3位決定戦のイーグルス戦のラストプレーでの勝ち越しもそうだ。

これらはもちろん戦術的に修正してよいアタックをするようになったということもあるが、それ以上に負けるはずがない、というメンタルの問題も大きいと思う。エディーHCが日本代表に勝ち癖をつけることが大事だと口を酸っぱくして言っているが、まさにその通りだ。

逆に接戦を勝ちきれなかったといえるのがスティーラーズで、リーグ戦の得失点差は+188で2位だが、順位は5位にとどまっている。これは接戦を落としてしまっていることが大きな要因だといえる。

リーグ戦の順位は勝ち点で決まるが、いくら接戦であっても勝つか負けるかで勝ち点が雲泥の差である。サンゴリアスのスローガンである、プライド・リスペクト・ネバーギブアップの精神は来シーズン以降も是非とも継続してほしいものである。

一方で、リーグ終盤戦から後半での失速が増えたのは改善点だろう。本来スタミナに優れ、後半の後半に力を発揮することが多いサンゴリアスにとってらしくない結果だった。特に前半終了時に35-10とリードした状態から逆転負けした11節のイーグルス戦や後半開始直後で21-7とリードしていた状態から引き分けに持ち込まれた14節の静岡ブルーレヴズ(静岡BR)戦などだ。相手のインパクトプレイヤーを交えた縦への突進でディフェンスが崩されスタミナが消耗する様子が見られ、流れが相手にあるときのフィジカルフィットネスは来シーズンへの課題となるだろう。

今シーズンのサンゴリアスについて(来シーズンへの課題)

今シーズンのサンゴリアスは悪くない結果ではあったが、優勝に届かなかったことも事実だ。また、リーグ戦で5敗しており、勝った試合でも接戦が多かった。リーグ全体のレベルが向上し、戦国時代の様相を呈してきている今、サンゴリアスももはや安泰とは言えないだろう。

個人的に考えた今シーズンのサンゴリアスの課題は、以下の3つである。

・選手層の薄さ
・敵陣ゴール前での決定力
・ディフェンスの粘り

選手層の薄さ

有名大学選手を多数獲得していることで有名なサンゴリアスだが、ポジションによって選手層が薄いといえる。代表的なのがHOとSH、SOである。

HOはキャプテン堀越があまりに素晴らしいというのはあるのだが、リザーブで多く出ていた呉が怪我をした後は、宮﨑が入ることが多かった。しかし、ラインアウトスローなどで弱点があり、なかなか堀越を交代させることができなかった。現代ラグビーでフロントローがフル出場するのはスタミナ的に相当きついということもあり、HOの育成は急務だろう。イーグルスに中村が移籍してしまったのも大きかった。

SHはクイックボールによるアタックを続けたいサンゴリアスの生命線だが、日本代表の二人、流と齋藤がレギュラーに定着していたたため、流が怪我をした後は齋藤がフル出場することになった。大越や岡などSHの人材がいないわけではないが、交代枠を使うほどの存在感を出せなかったというのは残念だ。齋藤が退団する来期に向けてSHをどうするかは注目だ。

SOは今シーズンルーキー高本が素晴らしい活躍を見せた。しかし控えがカテゴリーCのサンチェスで、今シーズンのみで退団する。SOについては1シーズン限りのカテゴリーCを多く用いてきたここ最近のサンゴリアスだが高本をファーストチョイスとできた今、控えSOをどうしていくのかも気になるところだ。

選手層の薄さにはもう一つの側面がある。それは、ペネトレーター不足だ。ここでいうペネトレーターとは問答無用系の選手といってもいい、個人のパワーで局面を打開できるような選手だ。昨シーズンまでで言えば、フォワードではタタフ、バックスではケレビが担っていた役割だ。他チームでいえば、フォワードはスピアーズのヘルやレヴズのヴェーテー、イーグルスのハラシリ、バックスではワイルドナイツのコロインベテなどだろうか。

このような選手が存在しないと、ディフェンスシステムが整備されてきた現在ではなかなかチャンスを作り出すのが難しい。ここに絡んでくるのが、カテゴリーA外国出身選手の存在で、日本代表出場資格のある外国出身の選手が重要になってくる部分でもある。どうしてもカテゴリーC、Bでは出場枠に制限が厳しいので、日本代表候補になり得るパワープレイヤーをあと1人2人加入させることが必要かもしれない。特に功労者である大ベテランのツイが今シーズンで退団ということもあって、ここの補強は重要だ。一方で、日本人選手が多く活躍するというのもサンゴリアスのアイデンティティであるので、底のバランスを取りながら仕事人の日本人選手とパワープレイヤーのバランスを取っていけるとよいかもしれない。

敵陣ゴール前での決定力

アタックを継続することを強みとするサンゴリアスだが、敵陣ゴール前での得点力がやや欠けていたように思われる。

代表的なのが準決勝のブレイブルーパス戦で、前半相当な攻勢だったにもかかわらず得点できたのはわずか1トライ&ゴール、1ドロップゴールの10点にとどまった。敵陣深くに侵入した際にいかにしっかり得点に結びつけるかというのは非常に大きな課題だ。

通常のアタックでは素早く左右に展開するのが持ち味のサンゴリアスだが、ゴール前ではじっくり攻めることも重要になる。スーパーラグビーなどの試合を見ていると、ゴール前に攻め込んだらパワーで押し込むアタック側がかなり優位になっている状況がある。ここのフィジカルバトルでサンゴリアスがやや劣勢になっているかもしれない。このあたりは先ほど述べたペネトレーター不足も原因だろう。

ただゴール前に居座ってじっくりとした攻めの継続ができれば、どこかで得点できるはずだ。安易に外に振ることなく、ミスなくブレイクダウンで確実にマイボールキープしながら継続する能力をもっと強化すべきなのかもしれない。個人的には堀越の抜群のトライセンスもできればチーム内で共有してほしい。

ディフェンスの粘り

劣勢になった時のディフェンスのもろさも今シーズンの課題だ。シンプルな縦突破に対して後手後手に回ってしまうシーンがかなり見受けられた。ディフェンスにおけるフィジカル強度が足りていない部分があった可能性がある。

リーグワンに入ってから特に顕著だが、ディフェンスが強いチームが上位に行くようだ。ワイルドナイツはもともとディフェンス主体のチームでリーグワンに入ってから全て決勝に進出している。今シーズンはブレイブルーパスの優勝で幕を閉じたが、その理由の一つは固いディフェンスにあるだろう。決勝でも今シーズン得点力もかなり高かったワイルドナイツを相手に2トライしか許さなかった。完全に崩されたのは最後のあの幻のトライくらいだろう。

とにかく簡単にトライを許さず、粘りのディフェンスをして相手のミスを待つというのは非常に重要だ。取られたら取ればいいという発想はスティーラーズのように強いのに勝ちきれないチームの特徴になりつつある。アグレッシブアタッキングラグビーは継続しながらも、特に今シーズンのようにキックを多く織り交ぜてオーガナイズしていくラグビーを志向するならばディフェンスの改善は特に必要不可欠だろう。

来シーズンに向けての期待

サンゴリアスは優勝を目指すチームだ。もちろんリーグワンでプレーしているどのチームも優勝を目指していると思う。その中でもサンゴリアスはトップリーグ時代、いや社会人ラグビー時代から優勝を争ってきた伝統あるチームだ。もちろん、私が見てきたのは2010年代以降であるが、そのような伝統の下にチームがあると理解している。

流が準決勝後に本当に悔しそうにしていたのが印象に残っている。心から優勝を信じ、そのために取り組んできたからだろう。ベンチで見守るしかなかったその悔しさは来年牙をむくと確信する。そういえば移籍のガセネタが出たが、彼のサンゴリアス愛を知っていれば信じることはできないものであった。

サンゴリアスはメンバーが変わっても同じ優勝という目標を掲げ、ハングリーにチャレンジしていくチームだと思う。私の知っている過去最低のシーズンはトップリーグ時代の2015/16で9位に終わった。その翌シーズンからキャプテンを務めたのが流でトップリーグ連覇を達成した。

リーグワンが始まってから優勝できないシーズンが続いている。ライバルも着々と強化が進んでいる。日本ラグビーが進化を積み重ねている中、サンゴリアスにとって以前よりますます厳しいトーナメントとなっているかもしれない。しかしその中でも常に優勝を目指してアグレッシブにプレーする。そのアイデンティティがある限り、どんな選手が入り、どんなラグビーをプレーし、結果がどうなろうと、私がサンゴリアスの応援を止めることはない。優勝の2文字を信じて応援し続ける。

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