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なぜ人は宇宙にロマンを感じるのか?

「宇宙」と聞いて皆さん何を思うだろうか?

私は現在、宇宙関係の会社に所属し、来年は研究者を目指して総合研究大学院大学というところで、太陽系天体について研究しようと考えている。

このことを周りの人に話すと、きまってこのように帰ってくる。

「ロマンがあるね~」

もしかしたら、「社会人にもなって宇宙なんて途方もないことやって」という皮肉が含まれているのかもしれないが、それでも「宇宙=ロマンのあるもの」という意識はあるように思える。

**これはなぜだろう?
なぜ人は宇宙にロマンを感じるのだろうか?
**
今回はこのテーマについて、深掘りしてみたいと思う。

初めての「宇宙」との出会い

私が初めて宇宙に興味を持ったのは、小学4,5年生くらいだったと思う。
きっかけは、近所のプラネタリウムに併設されている図書館であった。

特に、プラネタリウムの内容は覚えていなくて、さほど興味をそそる内容ではなかったと思う。
そのプラネタリウムに併設されている図書館でよく、「解決ゾロリ」などの児童書を読むのが週末の日課だった。
しかし、何を思ったか、その日は恐竜の図鑑や宇宙の図鑑を気ままに読むことにした。もともと恐竜は好きだったので図鑑を眺めては、恐竜の名前を暗記して親戚に自慢していたらしい。(今ではすっかり忘れてしまったが...)
ただ当時は宇宙にはあまり触れる機会がなく、存在自体もよくわかっていなかった。
しかし、その日初めて開いた宇宙の世界に圧倒された。(かなり昔のことだが、これは結構鮮明に覚えている)
下の写真のような土星の写真が目の前に出てきたのだ。

(Credit: NASA)

この写真を見て皆さんは何を思うだろうか?
多くのかたが、「すごい」「綺麗だな」「神秘的だな」と感じると思う。

小さい頃の自分も例外ではなく同じことを思っていた。
でもそれだけではなかった。

なんでこんなものが存在するのか?
なんで輪があるのだろうか?
そもそも本当に実在するのか?
なぜ周りは真っ黒なの?

そんな疑問が頭の中でいっぱいになっていた。
これが私と宇宙の初めての出会いだった。
その時以降、私は色々な宇宙関係の専門書や雑誌を読み漁り、今の今まで宇宙を仕事にしたいと思ってやってきた。宇宙の魅力に取り憑かれていたのだ。

もしかしたら、ここまで宇宙をやりたいというのは特殊かもしれない。

でも、少なからず、皆さんも上の写真を見た時、すごいと思ったのでないだろうか。
また、上のような非現実的な天体では興奮しないという方も、例えば満点の星空を見ると感動することはないだろうか?

なぜ、宇宙にロマンを感じるのか?

この問いへの私なりの"現在"の回答は、以下の3つである。

1. 宇宙を完全に理解することは不可能であるから
2. 人類の英知の全てを用いて挑戦するべき目標になるから
3. 人間本来の持つ知的好奇心の行き着く先であるから

1. 宇宙を完全に理解することは不可能であるから
これまで、幾多の天才的な科学者が宇宙の謎を解こうと研究してきた。
そして今現在も、世界中の頭の良い研究者が宇宙の起源や構造、太陽系天体の調査などを行っている。
これにより、我々人類は宇宙に関して本当にたくさんのことを理解することができた。

しかし、それでも宇宙の4,5%しか、人類は理解していないらしい。
(私が思うにもっとパーセンテージは低いはずである。)
これを考えると、我々人類が宇宙を完全に理解することは不可能に等しいと思う。
しかし、そこが魅力を感じるところなのではないかと私は思う。

野球に例えてみよう。
プロ野球では、打率3割を残せば1流と言われる。
では、ある選手が打率10割で打てるようになったら、その選手はその先何を目指すのだろうか? その状態は果たしてワクワクするのだろうか?
本来なら、誰もが10割バッターを目指すはずだが、それを達成してしまったらおそらくつまらないし、魅力を感じないのではないだろうか。

しかし、宇宙に野球のような "10割" は存在しない。
我々が "10割" だと思い込んでいることを遥かに凌駕してくる。それが我々人類の宇宙に対するロマンにつながっている気がする。

2. 人類の英知の全てを用いて挑戦するべき目標になるから

もう一つの理由としては、宇宙は昔から人類の英知を結集させ、チャレンジする目標になっていたということだ。

わかりやすい例が、「アポロ計画」である。
(ここでは、戦争が絡むなどの話は避けることにする)
アポロ計画では、ロケット技術、パソコンなどの計算機、人工衛星による通信技術の発展など、人類の最先端の技術を結集して見事に月まで到達した。
その偉業に "世界中の人" が熱狂し、憧れた。

これは単に宇宙に憧れがあるというだけではなく、実際に宇宙を目指し、やろうと思えば手に届くことを証明した。
このことにより、宇宙への興味がより一般の人に広がっていったことは間違いない。

3. 人間本来の持つ知的好奇心の行き着く先である
最後は少し宗教的というか、哲学的な意見かもしれないが、結局のところ人類は本能的に宇宙へ知的好奇心を持つ存在なのではないかということである。

もともと我々の体も昔の星々の残骸からできており、「なぜ私たちが今存在しているのか」、「私たちはどこからきたのか」、「私たちの他に知的生命はいるのか」という本質的な人類の定義を考えた時に、結局のところ私たちは宇宙に答えを求めることになる。
だから、無意識に宇宙にロマンを感じ、宇宙の成り立ちを知りたくなるのではないだろうか?

このように、「なぜ人は宇宙にロマンを感じるのか?」について考えてみたが、結局のところ結論は出ないというのが正直なところである。
ただ私は、このような広大な宇宙がどのようにできたのか?、地球以外に生命が存在しうるのか?という、少なくとも自分の人生の中では明確な答えが出ないであろう問いを一生と通して探求してみたいと思っている。


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