宇宙産業の立役者を目指す。Space BDが描く日本の宇宙ビジネスの未来像
2024年9月19日に開催されたSpace BD初のキャリアイベント「ジョブフェス」での代表の永崎と社外取締役・共同創業者の赤浦によるトークセッションを”ほぼ”書き起こしでレポートする本記事。後編では、業界の現状を踏まえたSpace BDの存在意義や展望を語ります。
※前篇はこちら
日本の宇宙産業を支えるSpace BD
司会:
Space BDは何を目指しているのかを永崎さん、そして赤浦さんは投資家目線でSpace BDに何を期待しているのかをそれぞれ教えてください。
永崎:
いわゆるミッション・ビジョン・バリューでいうところのビジョンを、この1年かけてみんなでディスカッションし、『宇宙を自在に、熱く誇れる産業を。』としました。
冒頭のとおり、私には赤浦さんと出会った時から「世界に誇れる一大産業を作る」という原点があります。そのテーマとして宇宙を選び、面白がって集まってくれた仲間と作ったビジョンなので、とにかくこれが全てです。宇宙を舞台にした一大産業を作ろう、それを作るための立役者である会社は世界ですごいと言われる会社になるべきだよね、となるのが自然でしょう。
中核事業である衛星打ち上げサービスに関して言えば、繰り返しになりますが、宇宙ビジネスを始めるにはまず宇宙空間に出ていかないわけにはいかず、それであれば打ち上げプロセスを使い勝手の良いものにしようと、手間を一手に引き受けてハードルを下げているわけです。宇宙ビジネスをやる上での技術革新に専念できれば、参入する企業は増えていきます。
また、「宇宙 ✕ 〇〇」という塊を押さえながら自分たちのビジネスを作るという観点では、先ほども触れたライフサイエンスもあります。宇宙空間でしかできない結晶があるとしたら、宇宙でしか作れない薬ができる可能性があるわけです。
そうして製薬企業をサポートできることもあれば、方や「宇宙 ✕ 教育」も僕らはやってるんですよね。僕の出自が教育分野にあることが大きいですが、今では宇宙飛行士候補者の訓練を正式にJAXAから受託して提供しています。現代はもはや答えがない社会ですから、自分で模索しながら問いを立てて心折れずにトライアンドエラーを繰り返す必要がありますし、グローバルを当たり前に考えねばなりません。工学に限らず、法学、ビジネスの世界、サイエンスの世界でも同じです。その象徴としているのが、宇宙飛行士です。このあたりを再構築して「教育」に落としこんだらどうなるんだろうというのが、僕らのコンセプトです。
総合商社出身の私が目指す最終的な会社の形態も総合商社に近いものがあります。技術力に立脚した事業開発のプロ集団を作ることによって、何でもビジネスしてしまえと。やりたいこと・やらなきゃいけないことだらけなので、7年かけて業界内のいいポジションに立てたと思っています。ただ、もっと爆発力を持って、「あいつらおかしいよな」と思われる集団にしていきたいですね。
赤浦:
結論から言うと、絶対にSpace BDは必要なんです。それをまず申し上げたいです。
先ほどの話の続きをすると、今北朝鮮もロケットをガンガン打ち上げています。我々は本当に安全安心な時代に、高度経済成長期からゆとりがある世代も含めて幸せに生きてきました。自分の父親は戦争を経験していますし、いま世界情勢も物騒になってきている中で、もし中国とアメリカの対立が激化したら日本はどうなっていくんだろうか。生命の危機すら感じるいま、必要なのは経済力だと思うんです。
日本は経済的に非常に豊かで、世界、特にアメリカに必要とされねばなりません。宇宙開発においては先ほど申し上げた通り、SpaceXが断トツです。この中で我々は指を咥えて見てるだけではいけないんです。当時僕はベンチャーキャピタル協会の会長だったので、首相にアポイントをとりお願いしたのが、SBIR制度すなわち政府調達でした。スタートアップからの調達の優先枠を設定してほしいと。
その時に事例として挙げたのがSpaceXです。彼らは政府の売上の相手として成長しました。日本は今それをやらなきゃいけないと申し上げ、岸田前総理は2022年2月11日にスタートアップから調達すると宣言するに至りました。そこから「スタートアップ育成5ヵ年計画」として動いています。そして、その政府調達のほとんどが「宇宙」で、総額もどんどん増えています。
さらに、宇宙予算のうち、1番ついているのは防衛費です。宇宙戦略基金(※)も10年で1兆円ついてます。さきほどの世界情勢を鑑みると、日本は衛星をどんどん打ち上げないといけません。常にセンシングし、どこが動いてるのか等を自らの情報として得る必要があるので、ますます予算がつくわけです。そのためには、まずロケットを打ち上げないといけない。現時点で、一番の打ち上げ手段はSpaceX社を利用する方法です。
そんなSpaceXと日本でいま一番契約し、たくさん売り上げている日本の会社がどこだか知ってますか?Space BDですよ。
これからいろんなことがありますけど、我々は諦めるわけにいきません。産業をもっと発展させ、経済を強くしていかねばなりませんし、何より命を守らないといけないし、日本をもっと強くしなきゃいけない。ということで皆さんもひとりの経済人として経済をより豊かに発展させていこう、という中で宇宙業界の存在意義を強く感じていただけたかと思います。
宇宙業界で十数社を立ち上げてきましたが、そのコアとなってるのがSpace BDといっても過言ではありません。ほぼ全社との取引があって、何かあると永崎さんとなっているのがSpace BDの存在意義でしょうか。
Space BDの企業文化と展望
司会:
なぜ永崎さん、そしてSpace BDはいろんな方から頼られる存在になっているのか。Space BDらしさや競争力を赤浦さんはどう思われますか。
赤浦:
Space BDのロゴは「人」が 3つ重なっていますよね。要はカルチャーだと思うんです。
少しカジュアルな話をしますが、僕は運動神経があまり良くありません。もう何の話か想像ついたかもしれませんが、永崎さんは僕が動かなくて僕の”ここ”を抜けた球を拾ってくれます。絶対に負けないぞと言わんばかりに1セットオールになってタイブレイクを何回やったことか……もう最後は粘り勝ち。彼がさらにすごいのは、そうやって人一倍動いた後にシングルス戦もしなきゃいけないんですね。シングルスだと若い対戦相手が多く、ときにマナーの悪い相手もいるのですが、粛々と礼儀正しくやり続けていくわけです。
そういうカルチャーが Space BD には社風として伝わっていて、「何かあったら永崎さん、Space BDを頼ろう」と業界から見られ頼られてるんじゃないかなと。
司会:
「カルチャー」というキーワードに関連した質問をします。永崎さんは「Space BD は人・組織、そして情報が強みだ」とよく言いますが、では今後どういう組織・カルチャーにしていきたいのでしょうか。
永崎:
当たり前かもしれないけど、いま、産業として本当に必要な人材要件と、こうありたいというものが無理なく交差してる感じがあるんですね。
どういうことかというと、そもそも仕事は人生の中でものすごく長い時間を使うものですから、僕は仕事と人生は一体だと思っています。これはワーク・ライフ・バランスみたいなものを時間の「量」で否定するのではなく「質」の意味です。なので、自分にとって最も打ち込めるもので、ここでこんな形を作ったら自分を誇りに思える、そんな仕事に挑めるかで人生の豊かさは変わるんじゃないかなと。
では、その仕事をした結果、何があれば誇らしく思えるか。それは僕らにとっては「一大産業を作る」こと。その立役者である会社自体がユニークで、こんな感じなんだね、すごいねと言われる。そういう姿を演じている社員がみんな堂々と生きていて、その姿に家族や恋人や関係者がまた感化されて……とさらに広がっていく。こんなことを目指して創業しました。
産業としてどんなチームが必要なのかというと、赤浦さんがすごく嬉しい説明をしてくださったように、形がなかなかないものに直面し、どうするの?誰に持っていけばいいの?となった際に、もうここ(Space BD)に投げたら、逃げずに丁寧に心を込めてやりきってくれる。しかもその姿勢だけじゃなくて、実力や技術力に立脚した事業開発力がある。そんな頼られる存在を作ってさえいれば、どんなシナリオになったとしても頼られます。それだけは源泉・根源的に持っておこう、と。それが表層化すればどんな時代になったとしても勝ち残っていける、あるいはリーダーとして生きていける。そんな感じですかね。
具体的な人材像としては、社内では「無限の当事者意識」とよく言っていますが、自分が頑張らなかったら会社・産業は止まってしまうかもしれない、くらいの当事者意識を持ってできることをやりきれることですかね。会社も僕ももっと進化するために、現状の経験と知識とスキルで傷つかずに勝負しようとするには難しいアジェンダを設定しています。そうなると、自分自身を拡張するための謙虚さ・素直さ・向上心……そのあたりがキーワードになるでしょうか。
テーマの大きさゆえに一人でできることはほとんどない、ということも独立してから気づきました。社内外問わずとにかく他人と一緒にいろんなものを共有して合意して励まし合って、時に耳の痛いこともストレートに伝えながら前進していく必要があります。そういう信頼関係は言葉だけではやっぱりダメで、アクションで見せなきゃいけないところもあるし……つまり会社の文化は「人としてどうあるか」みたいなところに行くんじゃないかな。照れくさがらずにいっぱい表に出して、そういう人が活躍できる会社にしていきたいですね。
司会:
赤浦さんとSpace BDの社員は株主総会や飲み会などでご一緒することがありますが、どんな人が多いと感じますか?
赤浦:
カラオケも行きますよね(笑)
とにかく気持ちを持った人が多いかな。できるかわからないからとにかくやりますっていう人が多い気がします。結果としてできる時もあればできない時もありますけど、結構無茶なことも「あ、できちゃうんだ」となったことが結構あったかな。
初の黒字化を経て
司会:
では、会場からの質問に答えていただきます。「Space BDの売上は今どのくらいですか?一番結果が出ている事業は何ですか?」とのことです。
永崎:
未上場企業なのであまり社外に出していませんでしたが、今日は本気の会なのでね。
我々は8月末決算なのでちょうど今決算を締めていてずれる可能性はありますが、前期の売上は20億円前半、前々期からは倍ですね。また、創業以来初めて黒字化しました。
売上を牽引したのは、やはり衛星を打ち上げていくところですね。その他売上に貢献したものだと、TSUKIMIプロジェクトといって、月を周回し水資源を調査する衛星のバス部(衛星が宇宙で存在・動作するための共通的な機能・性能)の全体設計を担っています。我々はファブレスで、我々が設計したバス部をパートナー企業様サポートのもと製作し、センサー部分と統合して無事にお客様である総務省に納めるという一連の技術的な案件もありました。
では今後どうなっていくかというと、大型案件の有無などで多少凸凹はしながらも当然右肩上がりを目指しています。そのために注力すべきは、強い会社にすること。強い会社とは結局「人」なので、採用すること、いい文化を作ること、そして本当にやりがいのある仕事を提供し続けること。これこそが最大の戦略だと思っています。
司会:
投資家である赤浦さんは、宇宙スタートアップで黒字化という事実をどう捉えていますか?
赤浦:
そもそも黒字になっている会社はスタートアップだと珍しいですよね。Space BDは”宇宙商社”ですし、永崎さんの百戦錬磨の商社での経験があるので、ビジネスをやってちゃんと利益を得るということを重視しています。
逆にもっと投資するフェーズもあって。先ほどのTSUKIMIのプロジェクトの件でいうと結構技術的なチャレンジなので、エンジニアもより多く採用していましたね。”商社”のみならずテクノロジーカンパニーの一面も持っています。先行投資やR&Dも含めると赤字になることもきっとあるとは思います。「人」と「資金」を持っていないとチャレンジのしようがないので、そこはどんどん集めていくべきです。
これまでの話しでわかるとおり、宇宙業界は膨大なお金が動きます。産業化、つまりお互いが必要とし合うと、A社からB社、B 社がC社に、C社がB社に、B社がA社に……とカオスになっていきますよね?仮に1億円が100回取引されたら100億円になるわけで、そこに1兆円を超える資金が政府から投入されるわけですから、それはもう複雑にバンバンバンバン動くわけですよ。
その時に一番取引をする会社はどこだか分かりますか?僕だけで十数社取引していますが、みんなSpace BDを頼りにするんです。ビジネスをちゃんとやっていくにはSpace BDに頼らざるを得ないんですよ。そう考えるとますます発展していくでしょう。
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