short story series『知らない』 person 26

作・木庭美生

東雲千鶴。20歳。女。

疲れた。もうやだ。明日も頑張れない。疲れたし、あいつには会いたくないし。はぁ。

大学からの帰りの電車の中はどうでもいいことばかり考える。どうでもいいから考えてるのかどうかもよくわからない。いやたぶん考えてはいるんだろうけど。

この間テレビで大学生のモバイルバッテリーが発火したってニュースで見た。

晩ご飯食べながらなんとなくかかってたニュースで見た。でもそれだけしか知らない。

なんで発火したとか、なんていうモバイルバッテリーが発火したとか、どのあたりが発火したとかそんなことは全然知らない。なんでニュースでそういうこと言ってくれないかな、1番大事だよ。どうでもいいから聞いてなかっただけかな。いや言ってないはず。うん。言ってない。わたしのこれも爆発するのかな、あ、発火か。どこが燃えるんだろ。充電コードのこの切れてる部分とか中見えちゃってるけどここも燃えるのか、こわ。

あ、もうつくのか。あぁ、また時間無駄にした。もっと電車の中時間を有効に使えばいいのにわたし。はぁ、やだな。どうでもいいことしか考えてないよ。

ふぅ、明日も頑張るか。

2018年11月21日

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