short story series『と、私も前々から考えていた』「スーパーマーケット」case04

作・渡邉大

〇スーパーに行くと駐車場が埋まっていた。
店員さんは生き生きとしていた。
僕の好きなお菓子は売り切れていた。

〇つぎに行ったときは駐車場は開いていた。
店員さんは相変わらず元気だった。
僕の好きなお菓子は今日はあった。買った。

〇つぎに行ったときは黒い車が多かった。
店員さんは違う人だった。
僕の好きなお菓子は今日もちゃんとあった。よかった。

〇つぎに行ったときは駐輪場の自転車が一つ倒れていた。なんとなく気になったから立て直した。
店員さんはあの元気な人だった。
今日はお姉ちゃんに頼まれたゼリーも一緒に買った。

〇つぎに行ったときは駐車場は埋まっていた。
店員さんは今日もあの元気な人だったけど少し疲れている気がした。大丈夫かな。
今日はお姉ちゃんの「今夜は鍋だ!」という言葉で今日のごはんが鍋になったのでおつかいを頼まれた。お金がなくてお菓子は買えなかった。

〇つぎに行ったときは5台くらい自転車がなだれていた。さすがに起こす気にはならなかった。
店員さんは今日は違う人だった。元気な人はしっかり休んでるといいな。
僕は今日はお姉ちゃんがアイスを買ってくれるというのでついてきた。
帰り道、スーパーは毎日いろんなものが変わっていくねと話した。
駐車場も、店員さんも、僕も、行くたびになにかが変わっている。
明日は何がどう変わるのかな。

2018年10月25日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?