short story series『知らない』 person 39

作・橋谷一滴

33歳。女。会社員。
23時31分
先週ツイッターに上がっていた動画を
私は眺めながらこれからどうしようかと思っている。

最近、シールを集めている。
飛行機搭乗中にのみCAさんからもらえる都道府県のシール。
そう。これはただのシールではない。
仕事の関係でここ3ヶ月は飛行機に乗ることが多く私の楽しみはこれだけである。
明日も例の如く飛行機に乗る。
ツイッターには私と同じようにシールを集めている人がいてなんだか仲間を見つけた気分になる。
23時31分
私は見つけた。
それはあのシールを眺めている男の人の動画である。
あ、こっちむいた
「何枚もらったの」
「4枚。なんか集めて来てくれたみたい。申し訳ない」
「俺CAさんに話しかける自信ないわ」
「でもこれ来年の3月で終わるから欲しいなって」
「次いつ乗るの。飛行機」
「次は来週の火曜」
「めっちゃ乗るじゃん」
「来週のは仕事だから」
「お前、飛行機好きだよな」
そうだ彼は飛行機が好きだった。
好きとか言うレベルではないほど詳しくて将来の夢はパイロット、
あれ、

私と彼は高校の同級生で
特別仲が良かったわけではなかったけど
3年間同じクラスだった。

来週の火曜、
明日じゃないか。
何なんだ。
完全に掻き乱されてしまった。
私たちは明日会ったりするのか
わからないけど
少しそうだったらいいと思った。

23時43分
私は掻き乱されたまま眠りについた。

2018年12月14日

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