short story series『知らない』  person 13

作・草場あい子

外を歩いてて見た男の人について。

福島茂雄。59歳。
配電線工事の仕事。

よし。ここの配線で終わりだ。
「よし。下ろしてくれ。」

今日の仕事は終わった。何事もなく。
場所は違えどいつも同じ作業。
家に帰って風呂に浸かる。

はぁ。今日も疲れた。
高校卒業してこの仕事一筋。
辞めようと思った時もあったが、なんだかんだ41年。

俺の人生はこの仕事でできている。知識。思い出。金銭面。あと人間関係。良子と会ったのもこの仕事がきっかけだったか。
しかし、俺も来年60。辞めどきか。
体も衰えてきた。すぐ疲れてしまう。

だが、山もっちゃんは辞めていない。
来年63って言ってたが。元気だな。
よし。俺も63まではやるか。
年金もまだ貰えないし。体もつか分からんがとりあえず今は動くし。山もっちゃんもいるし。

そういや、竹中最近頑張ってるな。
前はへまばかりしてたが。
後輩に指導するまでになった。成長したな。

...はぁ。喉が乾いた。長湯しすぎた。

夕飯が並ぶ食卓の中にキンキンに冷えたビール。
毎日の唯一の楽しみ。
はぁ。うまい。

今日が終わる。
明日からも俺は仕事をする。とりあえず63までは。

2018年11月8日

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