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インドのサリーを知っていますか?

皆さんはサリーを「インドの女性の衣服」と既にご存知のことと思います。サリーについて「インドの女性の衣服」のほかに何かご存知のことはありますか?今日は日本のみなさまにサリーについてより深い内容を知っていただき、少しでも興味を持っていただきたいと思い書きました。

サリーはインドの文化を育んでいます!

サリーは一枚の長い布で、インドの伝統的な女性の衣装です。サリーを身に纏うときは、まず腰に布を巻いてから、上方向に向きをかえ胸部を巻くように肩を覆い、肩から下に布の端を垂らします。この垂れた端はパルー(Pallu)と呼ばれます。女性はパルーを、地面に着くことのないよう、肩の辺りでプリーツを作ったり、安全ピンで止めたり、腕にかけたりします。 ゆりかごの中の赤ちゃんは母親のパルーに巻かれるのが大好きです。だから母親のパルーは「Parameshwar(至高)」と表現されます。赤ん坊はやがて大きくなると母親のパルーにつかまり、歩き方を学びます。赤ん坊の生育にもパルーが役立っているので、パルーは布の端のみならずインドの文化を育てる端緒といっても言い過ぎではないですよね。

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通常サリーでは、パルー(Pallu)の部分は色や柄が変わっています。上の写真では黒く色のついた部分がパルー。

インドでは、昔からサリーといえば長い布で、イギリス人が測ったら9ヤード(約8メートル強)ありましたため、伝統的なサリーの長さは9ヤードと言われてきました。しかし今日では長過ぎて不便と考えられ、短い6ヤード(約5.5メートル弱)のサリーが多くなりました。9ヤードのサリーは、農村部の女性や一部の都会の女性の間で、特に礼拝の儀式などで、現在でも伝統的な正統サリーとして着用されています。サリーは今では、5ヤードから9ヤードの長さまで、さまざまなスタイルの織りや柄があり、数多くの種類の着こなし方を生み出しています。着こなし方はざっと確認しただけでも80を超え、種類はインドだけでも30種類以上の地域に根ざしたサリーがあります(後述)。

サリーの布には絹、綿、化繊など様々な素材がありますが、伝統的にはシフォン(Chiffon)かジョーゼット(Georgette)の手法で織られた絹(シルク)が女性の憧れです。歴史的には、メッシュ状の平織りで軽やかな仕上がりになり、柔らかくエレガントな印象を演出するシフォン(Chiffon)が先にあり、そのあとに強い縒りの糸で耐久性を高め張りとしなやかさを併せ持ち、なおかつ女性の体型の曲線美を際立たせるジョーゼット(Georgette)が登場しました。絹で織られたシフォンサリー(Chiffon Saree)、同じく織られたジョーゼットサリー(Georgette Saree)、どちらもたいへん人気があります。また安価で手入れしやすい綿や化繊も季節や機会に応じて着用されます。

【インドの地域別サリーの種類】

サリーは、地域の気候や産業に継承されてきた技術、過去の歴史などの違いから、必然的に地域ごとに特徴の異なるサリーを生み出してきました。サリーで有名な地域のうち代表的な地域のサリーを並べてみました(サリーの名称のアルファベット順)。

バナラシサリー (Banarasi Saree)

バナラシサリーは、ベナレスとも呼ばれる古都バラナシ(Varanasi, またはVanarasi)のサリーです。古くはマハーバーラタに記述も見られるバナラシサリーはインドの最高のサリーの1つで、かつて古都を支配した王族に献上されたBanarasi Silk (Benarasi SIlk)を使い、ザリ(Zari)と呼ばれる金糸・銀糸を使った立体的で豪華な金蘭錦織刺繍を施します。刺繍のモチーフはムガル帝国由来のペルシャ模様です。一枚のサリーを仕上げるために、縒り、染色、織りの職人3人が、2週間から長い時は半年をかけて完成させます。

→ バナラシサリーのイメージ
https://www.indianclothstore.com/sarees/banarasi-style

バンダニサリー (Bandhani Saree)

Bandhej Saree としても知られ、ラージャスターン州とグジャラート州で多く見られます。Bandhaniは絞り染めのプレス服地で、絹、綿、ジョーゼットなどの布に、様々な技法や色彩で、Bandana模様(いわゆる水玉模様に近い模様)を染め出します。祭事や結婚式のシーズンになると、インドのあちらこちらで売られています。

→ バンダニサリーのイメージ
https://www.myntra.com/sarees/unnati-silks/unnati-silks-pink--orange-pure-silk-printed-bandhani-saree/11723866/buy

ガドワルサリー(Gadwal Saree)

ガドワルサリーは、Telangana州のGadwalで作られるサリーです。上質な綿で本体を織り、シルクでザリを縁に施し、同じくシルクで織ったパルーの部分を綿の本体に結合させます。

→ ガドワルサリーのイメージ
https://www.pothys.com/pure-silk-sarees/gadwal-sarees.html

イリカルサリー(Ilkal Saree)

イルカル(カンナダ語で斜面の意味するラカルルに由来)は、カルナタカ州バガルコット地方の南東隅に位置する渓谷の静かで小さな町です。ここで織られるイルカルサリーは、先に織った綿の本体(主に無地、または単純なパターン)に、カスティ(手を意味するカイと綿を意味するスイという言葉に由来)と呼ばれる刺繍(最近は人工絹を使用)を施した縁と、通常は赤と白で織られるpallu部分を後から縫合する、Tope Teniと呼ばれる技術で仕立てるサリーです。カルナタカ州の花嫁は、カスティで刺繍されたサリーを着る伝統です。

→ イリカルサリーのイメージ
https://www.oyorooms.com/travel-guide/ilkal-saree-travel-guide/

カンジーヴァラムサリー(Kanjeevaram Saree)

カンジーヴァラムサリー(またはカンチプラムサリー (Kanchipuram sari) )は、南インドのタミルナドゥで織られるお宝級のサリーです。サリーの重量は500 gにも達することがありますが、これは金に銀糸が縫いこまれたザリの縁が太いためです。通常はサリー本体と縁は別々に作られ、後で縫い合わせられます。先に紹介したバナラシサリー(金蘭刺繍のザリを使う)とよく似ているため、北インドでも需要があります。カンジーヴァラムサリーのほうが、南部らしい明るく華やかな色と、ザリのボーダーがあることで区別できます。

→ カンジーヴァラムサリーのイメージ
https://kanjivaramsilks.com/

カサヴサリー(Kasavu Saree)

Kasavuはマラヤラム語を話すドラビダの民に伝わる未漂白綿のきめ細かな手織りの布で、現在ではケララ州のマラバール地方の女性(マラヤリの女性)がサリーに用いています。もともとサリーというよりオフホワイトの地に金枠のついた布でしたが、70年代頃からパルーの部分を足してサリー専用に長い布として生産されるようになりました。ケララの祭事「オナム(Onam)」や「ビシュ(Vishu)」では多くの女性がKasavuをサリーとして纏っている姿を目にします。ケララでは男性もKasavuをムンドゥ(mundu、腰巻)やドーティー(dhoti、足に巻いてズボン風に見える)として着用します。

→ カサヴサリーのイメージ
https://makeupandbeauty.com/kerala-saree-kasavu-saree/

カスタサリー(Kasta Saree, マラーティー語:नऊवारीसाडी)

カスタサリーは、私の故郷のサリーで、すなわちマラティの着るサリーです。映画マニカルニカで戦う女性戦士が着ていたサリーといえばお分かりいただけるでしょうか。ドーティー(dhoti)という男性の衣装と同じような着方をするためにサリーが後ろに隠れるようになり、「サリーが後ろに隠れている」ことを指すカスタの名前がついています。このサリーは通常、9ヤードの単一の布を使用するため、9を示すナウバリ(Nauvari)を以ってナウバリサリーとも呼ばれます。

→ カスタサリーのイメージと着方
https://www.aarmus.in/how-to/kashta-saree-draping-easy/

コササリー(Kosa Saree)

インド最高級のシルクの一つと称されるコサシルクで作るサリーです。コサシルクは、チャッティースガルのArjun, Saja, Salの木で育てたカイコ蛾の繭で作り、丈夫さとしなやかさで知られます。くすんだ黄金色がかったナチュラルブラウンの色味の生地は、地元の花由来の天然染料で色をつけると鮮やかな色に仕上がります。本物かどうかを見分ける時は何本かの繊維を焼いて、独特の臭い匂いで確かめられます。

→ コササリーのイメージ
https://www.aprudha.com/collections/kosa-silk-saree

パイタニサリー(Paithani Saree)

パイタニサリー(マラーティー語:पैठणी)は、マハラシュトラ州のオーランガバードの町パイサンにちなんで名付けられたサリーです。インドでも最高級のシルクで作られ、インドで最も有名かつ高価なサリーの1つと考えられています。縁の模様の斜めがかった方形デザイン、パルの孔雀のデザインが特徴です。花柄を方形に配したデザインはプリヤマハル東京のロゴの原案にもなっています。また縦糸と横糸の色を変えて布に万華鏡のような効果を出す技法も知られています。

→ パイタニサリーのイメージ
https://www.youtube.com/watch?v=NQmmJ0-pToM

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プリヤマハル東京のロゴ

パトラサリー(Patola Saree)

パトラサリーは、グジャラート州のパタン、スラト、アーメダバードで織られる絹「パトラ」のサリーです。パトラの絹は「シルクの女王」と称されています。縦糸と横糸を事前に染め分けて模様に織り込む絣(イカット)の技法を使うので、民俗モチーフと燃えるような色の幾何学的なデザインを特徴とします。防染の技法を縦糸または横糸に使ったRajkot Patola(シングル・イカット)、縦糸および横糸双方に使ったPatan Patola(ダブル・イカット)の2種類のパトラが知られています。パトラはブライダルウェアでは最高のシルクと見なされています。
また、ヒンドゥーのSalviカーストによって作成され、イスラムのVohraコミュニティによって東南アジアに輸出されたパトラの技法はインドネシアにも伝わることとなりました。

→ パトラサリーのイメージ
https://www.swadesi.com/news/patola-queen-of-silks/

サンバルプリサリー(Sambalpuri saree)

サンバルプリサリーは、オディシャ州(Odisha、旧Orissa)のサンバルプール(Sambalpur)地方周辺で着られている、染め糸を手織りで仕上げたサリーです。シャンカ(貝)、チャクラ(円形模様)、プーラ(花)などのモチーフが、生地の両面にほぼ同じに映るよう織り込まれ、赤・黒・白といった強い色合わせで表現される場合が多いサリーです。80−90年代にインディラガンディーが着たことをきっかけに広く世に知られ、今ではインド政府公認の地域特産品(GI: geographical indication)となっています。

→ サンバルプリサリーのイメージ
https://craftscollection.in/products/white-red-silk-sambalpur-saree-rshp4061

タントサリー(Tant Saree, Bengali Saree)

タントサリーは手織りを意味するtantから来ていますが、ベンガリサリーとも呼ばれ、その名の通りベンガル地方からアッサム、バングラディッシュの周辺で日常的に着られているサリーです。太い縞や大柄のペイズリーが特徴的な綿織りで、暑いインドの夏に最も快適なサリーの1つです。

→ タントサリーのイメージ
https://fashionmozo.com/blogs/blog/bengali-tant-saree

おわりに

私はサリーを着るといくつかの内面の変化を感じます。日本人が和服を着るときに感じるものと類似しているのではないかと想像しています。
 ー 謙虚な気持ちになる
 ー 自信が増す
 ー 態度が良くなる
 ー 慎み深い雰囲気を醸し出せる
 ー 意識の安定と無意識の高揚
 ー Bhav(感情の発露)を上手に出せる
 ー 母性を意識する

長々と書きましたがここまで読んでくださりありがとうございます。内容も種類もまだまだたくさんありますが、初めてサリーについて触れるには細かすぎたのではないかとも心配しています。とりあえずサリーを知りサリーに興味を持っていただくきっかけを作れたとしたら幸いです。実際にサリーに触れてみたい、身に纏ってみたいという方は、ぜひプリヤマハル東京(https://www.priyamahal-tokyo.com/)へお越しください。ここで紹介した高価な本格伝統的なサリーこそ用意していませんが、インドで日常的に纏うサリーをいくつか常備しております。サリーを着て当店のSNSに写真を載せますとお食事代金は10%オフになります。ぜひインドの衣食の文化を一緒にご堪能ください。

みなさまもぜひ一度サリーをお召しになり、パルーからインドの文化の一端を感じ取ってみてください。

by Rutuja Tarte

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プリヤマハル東京にて、日本人のお客様にサリーをご試着いただきました

参考:
https://www.utsavpedia.com/

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