10.

汚い海と工場の煙の灰色から
茶畑の鮮やかな緑へ

色彩は変わっても、私は変わらず現実逃避の手段ばかり探していて
過眠に傾いたり、小説を読まなきゃと本屋をうろついたりしています

うつ病は治ってきてると思ってるけど
2ヶ月に1回の通院で薬が減らされないことに毎回安心しているし
ふと帰ったら首を吊ろうと考えることもしょっちゅうある

だけど、苦しさで起き上がれなくなったり
淋しさや虚しさに苛まれて、頭を抱えてどうしようもなくなったりすることはほとんどなくなって
淡々と明日を待っている自分がいます


スピッツにハートが帰らないという曲がありまして
最後の方に
「優しい人よ 霧が晴れたら二人でジュースでも」という歌詞があります

私にとって霧が晴れるというのはどういう状態なんだろう
いつなんだろう
と聴くたび考える。
鬱が始まった頃から、ずっと
霧が晴れる日のことを考えてきた

この曲は、ふわふわと君の微笑みなんかを妄想して
両手広げて歌い出しそうな気分にもなっちゃって
でも都合良すぎることわかってて
結局眠りについちゃうところが
気怠くて可愛くて大好きな曲です…


明らかに日が短くなってきた
秋のスピッツの曲といったら
思い出す中に鈴虫を飼うという曲がある

「油で黒ずんだ舗道にへばりついたガムのように
慣らされていく日々にだらしくなく笑う俺もいて」
という歌詞が大好きで。
こんな歌詞絶対書けん…と見るたびに思うんです、

粘っこさ、汚さ、堕落していく感覚
良くない風に日々に慣れていく。
踏んだことがわかった時には思わず顔を歪めてしまうガムの鬱陶しさが
まさしく自分自身みたいだと

わかっていても
結局部屋でひとりゆめうつつでいるだけで。


自分がちゃんとこの場で働けていることが不思議だなあとよく思っている
あの時病院に行かなかったらどうなっていたか知らぬ

国試の時、ずっとPeople In The Boxの
海はセメントという曲を聴いていた。
会場が新宿だったのもあって
その時の自分にとってこの曲がすごく合っていた

自分の中にある苦しさや淋しさ、虚しさを
追い出したいもの、消したいものと思いつつも
おそらくそれを愛する自分もいて。

結局私は何も恨んじゃいないんだろうと思います
頭がおかしくなりそうなくらい、人生って不思議で、苦しい。
何もかもが苦しくて、そして愛おしいんだけど
「無闇やたらとあいさずにいてね
この不確かさを」
という歌詞が逆に優しくて。

いろんなことが醒めていって、全部まぼろしみまいで。
いろんな、去年だったらとっくに取り乱していただろうことも乗り越えて。
そんな集大成によく合っていた曲だったと思います

ただ、苦しかったこと、つらかったことを
美談にしちゃいけんとは思うのです…
これは他者への批判でもあり、自分への戒めでもある
どん底の時こそ心は研ぎ澄まされるんだけど
苦しさに酔いしれるのはだめです


少しずつ自分で余命を延ばしてここまで来て、次の余命もある。
まだ未来のことは何にも考えられないけど、
阿呆みたいなことを言ったりやったりしている自分も間違いなく自分なので
時折気を緩めたらずぶずぶと暗い沼にはまっていく感覚を味わいつつも
とりあえずはそうやって生きていくんだろうと思います

追記)スピッツのライブ抽選には外れました

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