骨巨細胞腫の話

お久しぶりです。以前書いたnoteから2年が経ったpiyaです。
今回は私の持病の話をしたいと思います。
既にタイトルで表記した通り、私の病名は骨巨細胞腫というもの。
私は2015年7月にこの病気が分かり、2023年6月までの8年で再発を3度繰り返し数日前まで入院していました。今は退院してこの記事を書いています。
病気というセンシティブなトピックですが全然暗くはないです!
長文なので必要に応じて読み飛ばしてください。

骨巨細胞腫とは

まずは病気の簡単な説明から。
『こつきょさいぼうしゅ』と読むこの病名、聞き慣れないとは思いますが簡単に言うと骨に良性腫瘍が出来る病気です。
破骨細胞が骨を溶かして、その部分に柔らかい腫瘍が出来て骨が弱くなり、病的骨折を起こして痛みが出ます。
『良性腫瘍』なので基本的に命に関わるような病気ではないのですが再発しやすかったり稀に肺転移をするため中間悪性腫瘍と言われています。
また、再発を繰り返すうちに悪性に変わる場合もあります。

20代~30代くらいの若い世代に多く見られる病気で、膝や肘・股関節などの骨の先端に腫瘍が出来る事が多いです。私の場合は大腿骨(太ももの骨)の下端に腫瘍があり、膝が痛くなったように感じていましたが厳密には膝そのものを痛めているわけではありませんでした。

記事を書いた理由&今まで書けなかった理由

そもそも骨の腫瘍自体が珍しい病気なのですが、その中でも骨巨細胞腫は特に少なく日本で年間150人ほどしか診断されない結構レアな病気です。
そんなレアな病気ゆえに患者数が少なく研究が進んでおらず、いまだに病気になる原因が分かっていないほど。
インターネット上にも情報が少ないので、同じ病気になられた方やそのご家族は少しでも情報が欲しいはず……ということで同じ病気になられた方へ発信できればと思い書くことを決めました。

という構想自体は3年前に再発した時点であったのですが、参考に読んだ他の方のブログなどで書かれている症状に比べて自分の病状がそこまで酷くなかったため、私が書くのもおこがましいな……と思い躊躇しておりました。
しかしこの度4度目の手術をして肺にもちょっとだけ転移したので「もうそろそろ書いても良くない?」と開き直った次第です。
人よりも多く再発しているのでそれだけ伝えられる情報も多いということで! 治療などはあくまで『私の場合』ですが、少しでも参考になれば幸いです。

① 2015年 21歳(初めて)

大学在学中で就活をしていた時、膝が痛む事がありました。この頃、歩いている時に膝がガクッとなりこけそうになる「膝崩れ」がよく起きていました。
あとは短い距離を走ったら膝がじんじん痛くなる、寝転がっていても痛むという症状がありました。

「歳かな(笑)」なんてふざける程度で最初はそこまで重く捉えていなかったのですが、近くの整形外科を受診するとレントゲンに影がありMRIを撮ってくるように指示されました。
家の近くでMRIを撮り、データを持って再受診した際に告げられた言葉は「大きい病院に行ってください」。
骨に腫瘍があるという説明もされましたがその時はよく理解出来ませんでした。いきなり抗がん剤の話をされて怯えまくったのを覚えています。

この地元の先生に「紹介状を書くけど、A病院とB病院どっちがいい?」と聞かれましたが正直今まで健康に過ごしてきた当時の私は大学病院の知識ゼロだったので「……どう違うんですか……?」と答えました。素直。
というわけで、紹介状を書いてもらっていざ大きな病院へ。
データをみた大学病院の先生に「骨巨細胞腫」を告げられました。この時に出会った先生には8年経った今もお世話になっています。

レントゲンとMRIを見る限り、腫瘍の大きくなるスピードが遅くじわじわとゆっくり広がっている所見があったので良性腫瘍だろうという事でしたが、実際に生検をしてみないと良性か悪性か判断できないとの説明がありました。
※生検=腫瘍などの病変を採取し顕微鏡で詳しく調べること

病名を伝えられた後はそのままトントン拍子で手術と入院が決まりました。

手術

手術の方法は、骨の中の腫瘍を取り除いて(掻把法)その穴を人工骨で埋めるというものです。基本的に腫瘍を取って消毒をして悪い細胞を殺せば再発しない&他の場所に転移しない病気だと説明してもらい、怯えていた私は安心しました。
ちなみに、時代が時代なら足を切り落とすしかなかったらしいです。怖~! 現代に生まれて良かった~!

手術ではまず患部を少し切って腫瘍の一部を生検に出し、良性腫瘍だったら手術続行、悪性腫瘍だったら一度傷口を閉じて別の治療(抗がん剤など)をするという流れでした。
私はこの生検で骨巨細胞腫が確定し、手術続行になりました。

全身麻酔から醒めた後が最悪で、気持ち悪い・眠い・高熱・シンプルに足が痛いというコンボでヘロヘロになった記憶があります。麻酔が切れておらずご飯を食べられない程の眠気に襲われる中、様子を見に来てくれた先生や看護師さんに話しかけられるたび頑張って喋ってましたが心の中では「寝かせてくれ~!!」と思ってました。すみません。

入院・リハビリ

この時の腫瘍の大きさは13cmほど。
初めは10日ぐらいだと予告されていた入院期間が、患部を開けてみたら腫瘍が予想より大きかったという理由で結局1ヶ月に延びました。暇つぶし道具を少なく見積もっていたせいで暇な時間が多く困った経験をしたので、これから入院される方は暇つぶし道具を多めに持っていくことをオススメします。整形外科の手術をしたら自由に動けなくなるので……

手術で骨を埋めるのに使った人工骨はすぐに固まらず、徐々に自分の骨に変わっていくというもので、初めのうちは強度が低いため体重をかけられません。
足を浮かせる → 体重の1/3 → 体重の1/2 → 全荷重 という形で徐々に重さをかけられるようになります。ここで無理をして体重をかけて人工骨ごと折れると本当に大変なことになるらしいので、かなり慎重でした。
また膝を切っているため初めは曲げる事が出来ず、全く曲げられないまっすぐに伸ばした状態からリハビリを経て毎日少しずつ曲がっていきました。とりあえず120°~90°ぐらい曲がるようになれば椅子に座れますし、色んな日常生活がしやすくなります。
それまでは 足を延ばしたまま車椅子に乗る・トイレに行っても足を曲げられない・お風呂に入れない期間にシャンプーして貰う時も足を下げられないなど不便な生活を送ります。でもまあそのうち慣れます。

あとリハビリで印象的だったのは足の上げ方を忘れた事です。普段何も考えずに出来ている事が、いざ出来なくなるとどうやって行っていたのか分からなくなる……という新鮮な経験をしました。
手術していない右側を持ち上げて、上がらない左と比べてコツを掴むという方法でクリアしました。

薬物療法

一度目の手術以降は経過観察で定期的に外来で診てもらっていました。
レントゲン(たまにMRI)で再発していないかの確認と、ランマークという注射を打ってソレトンという薬を飲み、様子を見ていました。
以下薬の説明です。

・ランマーク皮下注
ランマークは骨巨細胞腫に効く注射です。悪性腫瘍の方も使用しておられる薬で、骨巨細胞腫の場合は手術で取り除くのが難しい場合に使われる事もあり、私は手術前に腫瘍の働きを抑えるため&手術後の再発予防のために使用していました。

私は痛みに強い方なので大丈夫なのですが、大人の方で泣く人がいるくらいには痛いらしく、いつも看護師さんに「ごめんね~……」と謝られながら注射されます。痛みの感覚としては、しばらく同じ場所をぎゅーっとつねられているような痛さです。
こちらの注射ですが値段が高いです。保険適用の3割負担で14000円ぐらいするので注射した日としなかった日ではお会計が全然違います。高いですが1度打てば効果が半年ぐらい持続するらしく、個人的にはいつも痛みが引くので効き目があると感じています。知らんけど。

腫瘍が小さくなる効果がある一方で、カルシウム不足になったり骨が脆くなって骨折しやすくなる、更には顎の骨の壊死といった副作用も出る場合があるという説明を受けました。この低カルシウム血症などを予防するためデノタスというタブレットのような錠剤を飲んでいます。甘いヨーグルト味で美味しいです。ひと回り大きいヨーグレットみたいな感じです。

↓ ランマーク皮下注

↓ デノタスチュアブル

・ソレトン&レバミピド
ソレトンは本来痛み止めの一種ですが骨巨細胞腫に効くと『言われている』薬です。言われている……? ふわっとした表現ですがコンスタントに飲んでいたらしばらく再発していなかったので効果はありそうだなと思います。
最初の手術から時間が経つと、痛くないしもう大丈夫だろうと気が緩んで飲むのをサボるようになり、それもダメだったのかなーと今更ぼんやり思っています。このソレトンは強い薬で胃が荒れるので、胃を守る薬も一緒に飲みます。これらの飲み薬には8年ずっとお世話になっています。

② 2020年 26歳(再発 at UK)

1回目の手術から経過観察をしていましたが何も問題がなく、5年ほど普通に暮らしていました。主治医からもOKを貰っていたので26歳の誕生日前にイギリスへ渡航し、念願のYMS(ワーキングホリデーのようなもの)生活を始めて2ヶ月ほど経った頃、私は気付きました。
心なしか膝が膨らんでいる……。しかもがっつり手術痕のある場所。再発?

幸い痛くはなかったのですが、ようやくイギリス生活に慣れ始めて楽しくなって来た頃だったので、めちゃくちゃヘコみました。
だってイギリスから帰りたくなかったから!!!!(笑)
帰りたくなかった私はイギリス滞在を粘るために帰国するかどうかを誰かに判断してもらおう、と思い立ち海外保険で受診する事が出来た日系の病院に行きました。
そこで『話を聞く限り再発だろう、海外の医療(※日系の場合)は高いから日本へ帰る飛行機代を考えてもお釣りが来る』というような話をされました。
また、この頃ちょうど新型コロナウイルスがヨーロッパでも猛威を振るい始めた時期だったので、『再発』と『コロナ』2つの理由で一時帰国を決めました。

イギリスでの入院手術をせず帰国した理由

イギリスではNHSという無料の保険サービスがあるのですが、無料ゆえにシステムがパンク気味で、診療予約をしても診てもらえるまで数日かかる事が多いです。また、当たり前ですが全て英語でのやり取りになるので英語力がまだまだな私にはちょっとハードルが高いなと感じました。その他にも色々と帰国を決めるに至る理由がありました。

・入院したとしても自分の病状を英語で伝えられない
・日本だと既にカルテがあり、お世話になっている主治医の先生に診てもらえる
・入院中に家族のサポートが受けられる(差し入れ、荷物の受け渡し、洗濯など)
・海外に比べて日本は医療費が格段に安い
 → 日系の私立病院だと日本語で医療を受けられるのですが、海外でMRIを撮るだけでも20万円ぐらいするらしく、それだけで往復の飛行機代ぐらいになります。手術や入院費用などが加算されるので……恐ろしい金額になります。
・ちょうどヨーロッパでも新型コロナが流行り始めていた
・YMSビザは期間中であれば一時帰国をしてイギリスへの再入国も可能

帰国時期はちょうど初めてのロックダウンが始まったあたりだったので、日本行きの飛行機がなくなるかも?!という別の心配もありました。始めたばかりだったバイト先にも事情を説明し、住んでいたお家の大家さんにも話をし、予定より早めに帰国しました。

入院・手術2

本来、骨巨細胞腫は骨の中に出来る病気のため外側へ膨らむことはなく、多少腫れることがあってもそこまでハッキリとは分かりません。ただしこの時の私の場合は人工骨が既にあったのでその場所に腫瘍が入り込めず、横から大きくなってボコッと張り出す形になりました。見るからに膨らんでいるのですが骨の中はしっかりしていたので痛みがなかったので不思議でした。

こちらも1度目と同じく手術をした後3週間ほど入院し、リハビリを経て回復しました。傷は前回から3ⅽmほど長くなりました。
再発の場合、以前埋めた人工骨を割る作業が追加されるので手術がちょっと面倒くさくなるそうです。申し訳ない。

また、この頃からコロナ禍だったため入院前のPCR必須・家族を含めて面会不可・6人部屋が1~3人部屋になるなどコロナの影響を感じました。

③ 2022年 28歳(再々発)

2度目の手術からしばらくしてイギリスへ戻り、YMSのビザで1年ちょっと滞在しました。そしてビザが切れた2019年の年末に本帰国したのですがコロナ真っ最中だったので2週間ほど自主隔離をする必要があり、海外帰国者向けプランがあるホテルに滞在していました。外にも出れず暇を持て余していたのでベッドでゴロゴロする日々を過ごしてしていたのですが、足をベッドに上げる時に膝が痛いな……と感じていました。
帰国後の日程で予約していた外来がもうすぐだったのでそのまま外来まで待ち、受診したらやっぱり再々発していました。

入院生活も車椅子も松葉杖も慣れてきたせいか、この時の入院に関してはあんまり記憶がないです。
退院から半年経った夏頃に、歩くのも辛いぐらい痛くなったことがありましたがそれはただの炎症だったみたいです。膝に水が溜まりパンパンに腫れていました。それも1ヶ月ほどで治まり、1年の間に起こったトラブルはそれぐらいでした。

④ 2023年 29歳(再々々発)

再々々発って前前前世みたいな語感ですね(どうでもいい)

ここまで、 1度目→5年→2年→1年 と再発のスパンが半減してきているので、今から半年後どうなってるかなーとぼんやり考えてます。何かあればまたnoteを書きますね。

主治医の先生が受け持った他の患者さんはほぼ再発せず、しても1回だったので4回目の手術をするのは私が初めてだそうです。嬉しくない(笑)
私があまりにも再発するので、手術が決まった日の外来で先生から「そろそろお祓いに行こっか。お互いに」と言われて笑いました。

最初の頃から「腫瘍が関節にかかったらアウト、人工関節になる」という説明を受けていました。いつも関節の手前でセーフ!だったのですが、今回はいよいよ関節にかかるギリギリだったので、腫瘍は小さいですが早めの対処をする事になりました。

そして世間ではコロナが5類になりましたが、病院という場所の都合上いまだにコロナ禍から入院の環境は変わっておらず
・入院前のPCR検査必須
・家族を含め面会禁止、荷物の受け渡しも看護師さん経由
・部屋は最大4名まで(大体2人~3人の事が多かったです)
と以前と変わらず厳しめでした。本当に終わらないですね~

4度目の手術における選択肢

というわけでまた再発しましたが今回選択肢を3つ出されました。

① ランマークを打って様子を見る
メリット : 膝を残せる
デメリット : 骨が脆くなるのでずっと打ち続けるわけにもいかない

② 人工関節にする
メリット : 膝+上下の骨をまるまる人工物に置き換えるので、再発率はとても低くなる。
デメリット : 膝が120°ほどしか曲がらなくなる、障害者になる、人工関節にも耐用年数があるので20年後ぐらいにまた手術をしなければならない

③ 今までと同じ手術を受ける
メリット : 膝を残せる
デメリット : 人工関節に比べ再発する可能性が高い

まだギリギリ20代なので今後の事を考えると膝を残せる方が良いというアドバイスを受け、③の今までと同じ手術を選択することになりました。ただし埋めるものを人工骨からセメントへと変更することにしました。
セメントは人工骨より強度が高く、固まる時に100℃くらいの熱を出すので悪い細胞を殺しやすいというメリットがあります。
しかしその熱が原因で軟骨を傷める恐れがあるため、今までの3回の手術では敢えて避けてきました。ですがもうワガママ言ってられない状況になって来たので今回は骨セメントを使ってもらいました。前と同じ方法だとまた再発しそうな気がしたので……

肺への転移

本当に大したことはないのですが、この度左右の肺に1つずつ小さな腫瘍が見つかりました。レントゲンに映らないほど小さいもので何の症状もなく、経過観察でOKという気にしなくてもいいぐらいのものです。たくさん増えてきたり大きくなったりしてから考える、という事でたまに肺のCTを撮ってチェックする予定です。
足の腫瘍が血液に乗って肺に転移するので、足の腫瘍を取ってしまえば肺の腫瘍が増える事もないだろうと言われました。

余談ですが、『肺転移するのは患者のうち約2%』という情報を目にした時はソシャゲのSSR引いたみたいと思いました(どうでもいい2)

最後に

長文になりましたがここまで読んでくださりありがとうございました。
同じ病気でも私は病状が軽めなため、ずっとこのnoteを書いていいのか迷っていたのも本音です。今後、同じ病気に罹られた方がこの記事を読んで、少しでも気持ちが軽くなればという願いを込めて書き切りました。
私自身この先また再発するかもしれないし、肺の腫瘍が大きくなるかもしれないし、はたまた完治するかもしれないし、どうなるかは正直分かりません。でも次に何かあるまでは過度に心配せず日々の健康に感謝しながら悔いの無いよう過ごしていければと思っています。

それではまた! Piyaでした。

※この記事は全て個人的な経験・個人的に調べた情報で書いておりますので、明らかに間違っている点があればご指摘をお願いします。もし何か問題があればすぐに記事を訂正 or 非公開にしますのでご連絡ください。

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