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横須賀美術館『エドワード・ゴーリーを巡る旅』

横須賀美術館『エドワード・ゴーリーを巡る旅』2024.7.6〜2024.9.1

独特な陰鬱な雰囲気の漂う精緻な絵は、どこかの図書館で見た記憶があります。興味があり、何とか休みがとれたのでこの日に出かけてきました。

横須賀は自宅からは遠く、昔から特に関わりのある場所ではなかったのですが、大学4年のとき、横須賀市人文・自然博物館にて博物館実習を行っています。大学の博物館学の恩師は、『ひらけ博物館』で著名な伊藤寿郎(故)氏の弟子である君塚仁彦先生だったこともあり、市民活動をベースにした、博物館の最重要な面である収蔵品を活かした社会教育活動に非常に興味がありました。当時の自宅(東京都小平市)からは通うにはあまりに遠いので、大学の同級生の自宅に3週間も下宿させてもらったのは楽しい良い思い出です。

横須賀に着いたのがちょうどお昼ごろ。前回は美術館近くにあった京急観音崎ホテルの食堂で味わった海軍カレーですが、そのホテルは昨年閉館。今回は市街地に寄って、「横須賀海軍カレー本舗」にて「掃海艦はちじょうカレー」というワンプレートカレーをいただきました。非常にマイルドでした。チャツネを入れるところがまた独特ですね。

横須賀美術館は観音崎のすぐ手前、東京湾と房総半島を望む風光明媚な地にあります。『運慶展』を見に来たのはちょうど2年前の7月。もうあれから2年経ったとは、と月日の流れの速さを実感します。今日もよく晴れて非常に暑い日でした。

チケットは、JAF割が利いてなんと2割も引いてくれました。常設と谷内六郎館も見学できます。

ゴーリーの絵本は、絵本ではありつつも一般的な絵本のイメージとは違い、とにかく救いがない世界が描かれることが多いのです。とりわけ『不幸な子供』は全くもって救いがなく、とてつもなく悲しく暗い気持ちになり、衝撃を受けました。ただ、その強いショックから、かなり印象深いのも事実です。ある意味アンチテーゼとも、現実を突きつけているとも言えるこうした作品には、世の中で様々な反応を生んでいるのも興味深いところです。

この展示室のみは外からの撮影が可能です。「不幸な子供」の原画もここで展示されています。

原画を最初見た時は、とても細い線が大量に描かれて絵が構成されており、一見、銅版画かと思いましたが、紙にペンで描かれたものでした。ちょっと異常なレベルの精緻さは、ひと言でいうとスゴイ。。。さらに、絵そのものの大きさが、予想よりもはるかに小さいのです。その小さな範囲にその細かさなので、老眼だとかなりキツい…(笑)私と同世代以上の方は老眼鏡持参を強くオススメします笑

それにしてもこの精緻さは、相当にすごい精神力の持ち主だったのだろうと思います。展示解説にも「神経質なほどの細かさ」という表現がありました。

印相的なブルーグレーのフライヤ。特殊な印刷がされており、角度を変えると模様が浮き出る仕様です。

あまりにも救いようのない悲惨な現実を、その異様なほどの細かい線でインパクトのある陰鬱さで描き出しながらも、そこに登場する人物や動物、怪物たちは、怖くても暗くてもどことなく愛嬌があったりすることもあります。とにかく悲しく辛い物語が多いのですが、惹きつけられる部分があるというのは、なんとなくわかるような気がします(内容が辛すぎてまだ理解し切れない。。。)。いろいろなものを突きつけられているようにも感じるゴーリーの世界。考えさせられるものがたくさんありました。

下に降りると、常設展示と特集展示を見ることができます。特集展示では、『令和6年度第2期所蔵品展 特集:生誕100年 芥川紗織』と、『令和6年度第2期所蔵品展 特集:新恵美佐子 祈りの花』が開かれています(いずれも10/20まで)。

芥川紗織『神話より4(民話より天かける) 芥川紗織はあの芥川也寸志の奥様とのことです。
特集展示の部分のみ撮影ができます。


新恵美佐子 『海の揺籃』
新恵美佐子 『海の揺籃』

それにしても、この美術館の建物は毎回訪れるのが楽しみです。「建築のノーベル賞」と言われるプリツカー賞を今年受賞したばかりの山本理顕氏がデザインしたもので、いわば"巨大な2重構造の箱"全体が展示室という感じの、非常に斬新な美術館です。

前回に引き続きめちゃくちゃ暑い時に訪れたので、建築そのものの外観をなかなかゆっくり味わえていません…。屋上に行くこともできますし、屋上の造形もかなり見ものです(去年は頑張って行った)。10月に再び『運慶展』があるようなので、その時はゆっくり屋上と、つながった公園にも行ってみたいと思います。

『ゴーリー展」展覧会特設ページ

https://www.yokosuka-moa.jp/.../2024/20240706-852.html

※今年10月の『運慶展』では、浄楽寺の阿弥陀三尊を含む5体が揃って展示される最初で最後の機会とのころです。期待ですね。

https://www.yokosuka-moa.jp/archive/exhibition/2024/20241026-864.html

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