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丁寧にウロを取りました。

文・撮影/長尾謙一 
料理/横田渉 

青森県陸奥湾産 まるごと生むき帆立(ウロ取り)
(素材のちから第42号より)

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新鮮な帆立貝の殻を一つ一つむいて〝むき身〟を取り出し、丁寧に〝ウロ〟を取る。これを高度な凍結法を使い急速凍結させることにより、凍結時の氷の結晶を細かくしてその鮮度を守る。一つ一つの作業にかかったコストを無駄と考えるか、特長としていかすかは料理人にかかっている。

ジューシーな旨みや甘み、そして香りはまるで〝活!〟のレベル

解凍するだけで新鮮な帆立貝の〝生のむき身〟が使える。さらに〝ウロ〟まで取ってある。これは便利だ。もう、大人数の宴会のために、気の遠くなるほどの殻をむくこともない。必要な時に必要なだけ〝活〟のレベルが使える。

〝ウロ取り〟〝生むき〟〝ハーフシェル〟、3つのタイプを使い分ける。

〝ウロ〟まで取ってあればとても使いやすい

今回ご紹介する「青森県陸奥湾産 まるごと生むき帆立(ウロ取り)」は、2年ほど前にご紹介した「青森県陸奥湾産 まるごと生むき帆立」の〝ウロ取り〟バージョンとお考えいただきたい。そんな昔のことなど覚えていないとおっしゃる方もいると思うので、少しふり返ってみよう。

今もだいたいそうだが、干したものや調理加工したものは別にして、一般的に素材として外食店で手に入る帆立貝には、一つは生きている活の帆立貝、二つ目に活の帆立貝をむいて貝柱を取り出し刺身用に凍らせた生の冷凍品、三つ目には帆立貝を殻付きのままボイルしてからむいた、ボイルむき身の冷凍品がある。

「青森県陸奥湾産 まるごと生むき帆立」は、帆立貝から取り出したむき身をボイルせずに〝高度凍結〟した生の冷凍品である。こうした生のむき身を冷凍したものは今でも珍しい。

それまで、こうしたむき身の生冷品がなかった理由は生産効率にある。帆立貝の殻をむくには相当な手間がかかるが、ボイルするとむきやすくなる。このため帆立貝はボイルして機械を使って自動でむくのが一般的だった。しかし、生産効率はいいのだが帆立貝の大切なジューシーな旨みや甘み、そして香りまで失ってしまう。

そこで「青森県陸奥湾産 まるごと生むき帆立」は、新鮮な生の帆立貝の殻を一個一個手でむいて生のまま〝高度凍結〟することにより〝活〟に負けない品質を実現した。

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さらに今回の「青森県陸奥湾産 まるごと生むき帆立(ウロ取り)」は、むき身から中腸腺(通称:ウロ)を取った商品だ。

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殻をむくだけでも手間なのに、〝ウロ〟を取るにはさらにテクニックもいる。むき身のボイル冷凍品とは真逆の商品づくりなのだが、それだけに希少な商品と言える。

これで〝まるで活!〟をコンセプトにする商品は、「青森県陸奥湾産 まるごと生むき帆立」の〝ウロあり〟と〝ウロ取り〟ができた。

さらに、片貝の生冷品「噴火湾産 お刺身帆立ハーフシェル プレミアム(三年貝使用)」も揃っているので、メニュー、コスト、オペレーションによって上手に使い分けたい。

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〝まるで活!〟の品質が新しい帆立の楽しみ方を教えてくれる

それでは「まるごと生むき帆立(ウロ取り)」を〝タルタル〟にして試食してみよう。

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「まるごと生むき帆立(ウロ取り)」の貝柱とぬめりを落としたひもをたたき、細かく刻んだキュウリ、ケッパー、マヨネーズ、塩で味を調え、オリーブオイル、ミニトマト、ディル、レモンを添えた。

新鮮な甘みと磯の香りが口いっぱいに広がり、鮮度のよさがすぐに分かる。たたいた貝柱の弾力のあるしっとりとした食感と、ひものパリパリとした歯ごたえがおもしろい。

次はフライにしてみる。「まるごと生むき帆立(ウロ取り)」を横にスライスし、黒オリーブ、プロセスチーズを挟んで串で刺し、油で揚げ、ベビーリーフ、レモンを添えた。

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衣の中の帆立は低温で熱が入るためにしっとりとやわらかくジューシーだ。甘みも増している。帆立の卵は加熱すると赤くなり、料理の彩りとしても目を楽しませてくれる。

さらに〝グラタン〟も試してみよう。帆立貝を主役で味わうために、ほうれん草、じゃがいも、長ねぎと一緒に豆乳でつくったベシャメルソースで焼いてみた。

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貝柱も真っ赤に焼けた卵もふっくらしているし、さっぱりしたソースでそれぞれの旨みをじっくりと味わえる。

さらに「まるごと生むき帆立(ウロ取り)」を炙ってみる。ひもを取って貝柱を炙り、半分にスライスし、バルサミコ酢、塩、オリーブオイル、バジルで〝帆立炙りカルパッチョ〟に。ひもは食べやすい大きさに切って盛り付けた。

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さて、最後は〝バター炒め〟だ。帆立貝といえば、何といってもバター醤油風味が合う。鮮度のいい「まるごと生むき帆立(ウロ取り)」は、レアに焼いた半生状態が絶品だ。仕上げに醤油を落とせば、もう最高だ。

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真っ赤に色づいた帆立貝の卵を食べながら、「こんなにおいしい食べ方を知らなかったなんて、損してた。」と思った。

「まるごと生むき帆立(ウロ取り)」の品質は、新しい帆立の楽しみ方を教えてくれるかもしれない。


協力/お問い合わせ:株式会社ナチュラルシー

(2021年9月30日発行「素材のちから」第42号掲載記事)

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