〝まるで鮮!〟 を名乗る金華鯖フィーレ
文・撮影/長尾謙一
料理/横田渉
宮城県産 金華鯖フィーレ ワンフローズン(生食可)
(素材のちから第38号より)
〝まるで鮮!〟とは、冷凍商品でありながらまるで鮮魚のようだという、品質の高さからつけられたブランドネームだ。品質の違いは生食してみればすぐに分かる。大型の金華さばだけが持つ上品でキレのいい脂がたっぷりと味わえる。「金華鯖フィーレ ワンフローズン(生食可)」は冷凍商品の概念を大きく超えた。
金華さば×ワンフローズン×セミ超低温がつくる〝まるで鮮!〟の品質。
漁獲直後の鮮度感に挑戦した商品
「金華鯖フィーレ ワンフローズン(生食可)」は旬の時期に水揚げされた石巻自慢の地域ブランド魚〝金華さば〟をフィーレ加工した後トンネルフリーザーで1回凍結し、石巻の冷凍庫でセミ超低温(−35℃)にて保管される、冷凍の鯖フィーレとしては画期的な品質を持つ商品だ。〝まるで鮮!〟というブランド名は〝まるで鮮魚のような品質〟を表す。その新鮮さはまさに鮮魚に迫る品質といえる。
さて、原料の〝金華さば〟だが、宮城県石巻市の東部、太平洋に突き出た男鹿半島のさらに東の海上に浮かぶ小さな島、金華山沖で漁獲される。親潮と黒潮が出会う潮目となっていて世界有数の良質の漁場として知られる海域だ。餌が豊富なため、上質な脂が魚の身に入る。金華さばの旨みの強さの秘密はここにある。
金華さばと呼ばれるには厳しい基準がある。大体500g以上の大型とされ、大きな身にたっぷりとのった良質の脂は脂肪率15%以上というものが目安になる。金華さばの称号を得られるのは上がった鯖の1割にも満たない。
こうして、「金華鯖フィーレ ワンフローズン(生食可)」は〝旬に水揚げされた大型の金華さば〟を石巻で加工し、これを〝ワンフローズン〟、そして石巻の冷凍庫で〝セミ超低温〟で保管するという、この上なき最良の条件でつくられている。
生食すればそのおいしさは分かる。「金華鯖フィーレ」の持つ脂はたっぷりと濃厚だが口の中でさっと溶けてしまい、後味がすっきりしている。臭みはなく旨みだけが残る感じだ。焼いても身が膨らみ、脂の香りがたまらない。
今、大量のさばが日本に輸入されているが、漁獲した国で加工したものも、原料を加工コストの安い国に運んで商品化したものも、結局、船積みされてリーファーコンテナで日本へ運ばれることになる。
リーファーコンテナの保管温度は積み込んださばの価格と冷却コストを比べて選択することになるので、日本市場で低価格で販売されるものについてはそれなりの条件になろう。しかも船便は出港前の準備も含めると日本へ入港するまでには2か月ほどの長い時間がかかるから、冷凍乾燥などの経時変化のリスクがある。さらに原料を移動させて加工するとなればワンフローズンの商品づくりは不可能だ。
「金華鯖フィーレ」を冷凍商品と侮ってはいけない
寿司と塩焼きで「金華鯖フィーレ」の醍醐味は十分に味わうことができるが、たっぷりと良質な脂ののった〝金華さば〟を他のメニューでも楽しみたい。
まずは、〝金華さばの南蛮漬け〟をつくってみた。
南蛮漬けは小アジやイワシなど比較的小ぶりの魚を使うことが多く、さばも食べやすいように小さい切り身でつくるが、せっかくの〝金華さば〟だ、メインディッシュの一皿のように大きな切り身でドンとのせてみた。
大ぶりな身に合わせてビネガーの酸味はやや控えめにし、たっぷりと盛った玉ねぎ、パプリカ、ピーマン、ニンジンと一緒にさばの身を箸で崩しながら味わった。ほどよい酸味とすっきりと切れ味のいい上品な脂に箸が進む。
次は〝金華さばカレー〟だ。カツカレーの主役がカツのように〝金華さば〟が主役のカレーだ。これだけ大きな金華さばだ、脂が悪いと話にならないが実にうまい! スパイシーなエスニック感にさばはぴったりだ。さばカレーは外食店で見ることが少ないが「金華鯖フィーレ」を使ってスパイスとの組み合わせを工夫すれば自慢のスペシャリテができる。
続いては〝金華さば〟をトマト煮(アラビアータ風)にした。
芳ばしいニンニクの香りとトマトの酸味がフレッシュだ。〝金華さば〟の脂がすっきりとしているからだろう。〝アラビアータ〟とはイタリア語で〝怒りんぼ風〟という意味らしいが、ちょっと汗が出るくらい唐辛子の辛味をきかせるのがいい。
最後に最近人気の〝ごまさば〟をつくってみる。
すりごま、醤油、酒、みりん、すりおろし生姜でタレをつくり〝金華さば〟に絡めてねぎを散らした。この料理はさばの鮮度が勝負。とにかく絶品である。
生食であれ加熱調理であれ「金華鯖フィーレ」はそのポテンシャルを存分に発揮する。お試しあれ、同じさばでもこうも違うのかとお分かりいただけると思う。
(2020年8月31日発行「素材のちから」第38号掲載記事)
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