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「追い海老」のすすめ

濃厚な海老の旨みと香りを加える。 

文・撮影/長尾謙一 
料理/横田渉 

〈ニッスイ フィッシャーマンズダイニングシリーズ〉 
・オマールオイル
・甘えびとオマールみそのペースト
(素材のちから第43号より)

ひとふりの〝追い海老〟によって、鮮烈な印象の料理に仕上げる。

「ニッスイ フィッシャーマンズダイニングシリーズ」とは

前号では、オマール海老の産地カナダ・ニューブランズウィック州でつくられる純粋な〝オマールブイヨン〟を原料にした「オマールビスク」、「オマールフィリング」、「濃厚オマールえびブイヨンのカレー」をご紹介した。

製造にあたっては、〝水産加工品にとって、開発の原点は産地にある〟という強い信念を持ち、オマール加工場、ブイヨン工場、日本の工場が一貫した〝産地主義〟を徹底することで国際的なサステナブル認証「MSC」を取得したこともお伝えした。そしてこれらの商品は「ニッスイ フィッシャーマンズダイニングシリーズ」として販売が開始されている。

海老の持つ、筋肉の甘み、殻の香り、みそのコクを別々に調達し、用途に合わせて必要なものを必要なだけ使用する。強い香りやコクがあるがネガティブな口残りはない。

〝漁師めし〟と呼ばれるものがあるが、人生を魚と過ごす漁師だからこそ知るおいしさがその料理には溢れている。

〝フィッシャーマンズダイニング〟は最終的に商品を日本で仕上げるにしても、できる限り産地で原料を調達して加工する。その姿勢は、まさに〝漁師めし〟のイメージだ。

産地でつくるからこそ新鮮な原料が手に入る

さて、今回「フィッシャーマンズダイニングシリーズ」からご紹介するのは、「オマールオイル」と「甘えびとオマールみそのペースト」の2品である。

〝追い海老〟とは…

ところで、皆さんは料理に〝追い鰹〟というテクニックがあることはご存じであろう。鰹節でとっただし汁に鰹節を加えて香りと旨みを加えるのだ。海老は殻に強い香りを、頭部に強いみそを持つため、外食店で提供されるむき海老を使ったメニューは、せっかくの旨みをみすみす捨てているようなものだ。このため海老の風味にちからがある料理に出会う機会は少ない。

それならば〝追い鰹〟のように、料理の最後の仕上げに海老の風味を加えてはいかがだろうか。つまり〝追い海老〟である。そんなことができるのか? とお思いになるのも無理はない。今までにはなかったことなのだから。

しかし、これからは違う。「フィッシャーマンズダイニングシリーズ」の「オマールオイル」と「甘えびとオマールみそのペースト」がしっかりと〝追い海老〟をしてくれる。

オマールリッチ シーフードカレー

上のシーフードカレーには海老が入っているが海老の風味は弱い。そこで、仕上げに「甘えびとオマールみそのペースト」を加えて 〝追い海老〟をしてみた。甘えびの殻のローストした香りと旨みの濃縮感、そしてオマール海老のみそのコクがシーフードカレーに風味を加えている。素晴らしい〝追い海老〟の効果だ。

それでは〝追い海老〟を他のメニューにも試してみよう。ご覧いただきたい。

【オマールオイル】 
香ばしく焼けたオマール海老の香りを持つオイル。

料理に香ばしく焼けたオマール海老の香りを添える

それでは「オマールオイル」からご紹介したい。シンプルに言うと、これはオマール海老の殻をローストしてオイルに香りを移したものだ。

しかし、オマール海老の殻なら何でもいいわけではない。香りが出るパーツを選ばなくてはならない。テールや爪、足をバラバラにしてそれぞれの殻をローストし、どのパーツの殻から一番強い香りが出るかをテストした結果、カラパス(頭部の殻)から強い香りが出ることが分かった。

さらに、水揚げされる漁期によっても香りの強さが違う。オマール海老の漁期は春と秋だが、春の方が殻が厚く香りがいい。

オマール海老のカラパスだけをロースト

こうした試行錯誤を産地で何度も繰り返し、主に春に獲れるオマール海老のカラパスだけを丁寧にローストして、香りを出したものを原料として日本に持ち込む。そして低温でオイルに焼けた香りと色をゆっくりと移して、料理に香ばしい海老の香りを添える「オマールオイル」に仕上げるのだ。

「オマールオイル」で〝追い海老〟してみよう

さて、「オマールオイル」と「甘えびとオマールみそのペースト」は、どちらも高い温度に対してデリケートな特性を持っている。鍋で直接炒めたり、長時間煮込むと風味が失われるため、高温での加熱に注意して試作したい。

〝ペペロンチーノ〟と「オマールオイル」は、盛り付ける前に合わせてもいいし、盛り付けた後に風味のオイルとしてかけてもいい。パスタの熱で立ちあがるオマール海老の香りに何かワクワクしてしまう。

ペペロンチーノ オマール海老の香り

〝餃子〟はタレに加えるだけで、餃子の中に海老はなくとも風味はまるで海老餃子だ。

海老香るタレで食べる餃子

〝しらすのピザ〟にも風味のオイルとして〝追い海老〟してみる。ピザにチリオイルは定番だが、シーフード系のピザには「オマールオイル」もいい。

しらすピザ オマール海老のアクセント

〝追い海老〟は普通のポテトサラダをどう変えるか? そう思って〝ポテサラミルフィーユ〟を試作したが、薄く焼いたバゲットに「オマールオイル」が染みて香ばしく、これがかなりうまい。

オマール風味のポテサラミルフィーユ

その他、ドレッシングにも使えるしマヨネーズもつくれる。和え物にもいいし、みそ汁やスープの香りづけにも使える。応用範囲は極めて広い。さふ

【甘えびとオマールみそのペースト】 
甘えびの旨みとオマール海老のコクを持つペースト。

海老のおいしさに必要な要素をすべて揃え持つペースト

「甘えびとオマールみそのペースト」は、甘えびの頭をローストして香りを移したオイルと甘えびの頭から炊き出したエキス、それにオマール海老のみそを加えてつくるペーストである。

詳しくご説明しよう。この「甘えびとオマールみそのペースト」のポイントは、原料の甘えびが刺身用の品質であることだ。尾の部分を刺身用としてむいて残る頭を使う。だから鮮度がいい。

お刺身グレードの甘えびの頭を丁寧にロースト

油を入れてローストしていると、やがて赤くなって香りが出てくる。頭の中に入っているみそも焼けて香ばしさとコクがどんどん出てくる。

さらに、これに別の甘えびの頭から炊き出すスープを濃縮して混ぜる。もちろんこの甘えびもお刺身グレードだ。これを煮詰めていけば十分に甘えびのおいしさを凝縮することができると思うのだが、さらにオマール海老のみそを混ぜてコクを加える。オマール海老のみそは産地カナダの工場でみそを取り出しローストして炊き詰め、できるだけ水分を飛ばして濃厚なみそペーストにしたものを日本に運ぶのだ。

すべてを混ぜ合わせてできあがるペーストには、海老のおいしさに必要な要素はすべて揃っている。だからアミノ酸は加えない。

「甘えびとオマールみそのペースト」で〝追い海老〟

では、試作してみよう。〝海老チャーハン〟では「甘えびとオマールみそのペースト」を直接鍋肌に落として焦がさず、仕上げる寸前に火を止めてから「甘えびとオマールみそのペースト」を加え鍋を煽った。余熱で十分に風味が立ち上がる。

海老チャーハン

〝ブイヤベース〟も〝海老カレー〟も仕上がる寸前に鍋に加えればいいが、濃厚感を強調するために盛り付けてから添えた。混ぜるにつれてスープにもカレーソースにも濃厚な海老の風味が広がっていく。

ブイヤベース
海老カレー

〝海老汁なし担々麺〟も皿に盛って薬味をのせる前に「甘えびとオマールみそのペースト」をかけて仕上げた。濃厚な海老の風味が麺に絡んで味が変化していく。

海老汁なし担々麺

今回は分かりやすいように「オマールオイル」と「甘えびとオマールみそのペースト」を分けて〝追い海老〟したが、もちろんこれを組み合わすこともできるだろう。さあ、後は皆さんにお任せしたい。


協力/お問い合わせ:日本水産株式会社

(2021年12月28日発行「素材のちから」第43号掲載記事)

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