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低温加熱オマール海老という冷凍商品革命。

文・撮影/長尾謙一 
料理/横田渉 

ネイキッドロブスターE.L.T. 
(素材のちから第38号より) 

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生のオマール海老1尾をそっくりむき身に仕立て低温加熱したものが「ネイキッドロブスターE.L.T.」だ。加熱不要、解凍してそのまま刺身で食べられる。低温加熱で身はこの上なくやわらかだ。

今まで世界中を探してもこんな冷凍商品はなかった。

今までのオマールメニューの調理オペレーションを変える。

オマール海老商品に〝低温加熱冷凍品〟という新たなコンセプトが加わった

70℃で10分間、蒸気量100%の条件でヴァプールされた〝低温加熱オマール海老〟が新発売された。UHP(ウルトラ・ハイ・プレッシャー)の超高圧力によってオマール海老の爪、尾、足、1尾分すべてを生でむき、真空パックして低温加熱し急速凍結したものだ。解凍すれば、生食用としてそのまま料理に使える。

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今までオマール海老の冷凍品には、生をそのまま凍結させた〝生冷凍品〟と沸騰した湯の中で茹でる〝ボイル冷凍品〟があったが、ここに〝低温加熱冷凍品〟という新たなコンセプトが加わった。

〝生冷凍品〟については、キッチンで自在に熱を加えることができ、このところUHP処理されたものも多く出回るようになり、生のまま殻もむける。しかし、一尾一尾丁寧に仕込むのは手間がかかり大人数のメニューには向かない。

そこで使われるのが〝ボイル冷凍品〟である。オマール海老の筋肉繊維は編むようになっていて、強い熱が加わると硬く締まってしまう。このため〝ボイル冷凍品〟に関しては豊富な経験と高レベルの加工技術が求められる。身が硬く締まったボイル冷凍品をよく見かけるのはそのレベルが低いためだ。

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そこに登場するのが「ネイキッドロブスターE.L.T.」である。〝Economy(節約)〟〝Labor(労力)〟〝Time(時間)〟の頭文字をとってネーミングされた「ネイキッドロブスターE.L.T.」は、その名の通りキッチンの労働時間を省き料理のレベルを上げる。

低温加熱の効果

〝低温加熱〟のよさは、オマールの身への熱のダメージを最小限に抑えることだ。次の写真を比較していただきたい。

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左はオマール海老をむいて真空パックし、90℃で10分、蒸気量100%でヴァプールしたものだ。右の70℃で熱を加えた「ネイキッドロブスターE.L.T.」に比べ、身が縮みキュイソンと一緒にタンパク質が流れ出ている。低温加熱した「ネイキッドロブスターE.L.T.」は、身の中に水分が十分に残り、歯ごたえもやわらかく旨みもありジューシーだ。

これはキッチンで生のオマール海老を調理したものに肩を並べる。さらにこの品質を大量調理にも使えるのだから大幅に手間が省ける。これは、今までのオマールメニューのオペレーションを変えるかもしれない。

あらかじめ低温加熱されたオマール海老商品が持つ可能性。

解凍して盛り付けるだけでジューシーなオマール海老の一皿が完成する

それでは「ネイキッドロブスターE.L.T.」を料理してみよう。「ネイキッドロブスターE.L.T.」のよさは、解凍した時点ですでに、オマール海老の殻はむかれて低温加熱が終わり、すぐに生食用の料理として提供できるところである。仕込みの時間を考えると一工程がすでに終わっているのはうれしいはずだ。しかもこれが100人分、200人分となるとそのメリットは計り知れない。

まず、「ネイキッドロブスターE.L.T.」をガトー仕立てにしてみる。

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バターで煮詰めたニンジン1本と玉ねぎをスライスして100gのバターでじっくり炒め、水200㏄を加えて水分がほとんどなくなるまで煮詰める。これをブレンダーにかけながらオレンジの皮、オレンジ汁、塩を加えて味を調えニンジンのピューレをつくっておく。あとは盛り付けだ。

セルクルにニンジンのピューレを入れて抜き、その上にスライスした「ネイキッドロブスターE.L.T.」と塩茹でしたプチキャロットを飾る。まわりにオレンジの果肉を飾り、前日にもどしておいたバジルシードとサフランオイルを置く。クレイジーピーとレッドソレル(マイクロ野菜)を飾り、仕上げにオレンジの皮を全体にふった。

次に、オマール海老のタルティーヌをつくってみた。

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レモンの皮を加えたクランブル生地を仕込んで冷蔵庫で休ませ、好みの形にのばし、もう一度冷蔵庫で締めて160℃のオーブンで15~20分間焼く。パプリカは皮をむいてスライスし、水を加えて水分がなくなるくらいまで煮詰め、全体量の0.2%のゼラチンを加えブレンダーにかけ、塩、オリーブオイルで味を調える。フロマージュブランにはエシャロット、ニンニク、エストラゴン、セルフィーユ、パセリのみじん切りを加え、塩、オリーブオイルで味を調えセルベルドカニュをつくる。

「ネイキッドロブスターE.L.T.」のパックに残るオマール海老のキュイソンはもったいないので取っておき、沸騰させてタンパク質を取り除いてから全体量の2%のゼラチンを加えて透明なジュレをつくっておく。

焼いたクランブル生地にセルベルドカニュを絞り「ネイキッドロブスターE.L.T.」をのせ、皿にパプリカソース2種、セルベルドカニュを絞り、透明なジュレを置く。マイクロアマランサス、マイクロパクチーを飾りレモンの皮を全体にふり仕上げた。

冷たいビシソワーズも簡単にグレードを上げる。

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メロンをくり抜き、「ネイキッドロブスターE.L.T.」を切って皿に入れ、オマール海老のフォンでつくったジュレも加え、ビシソワーズを流す、これだけだ。

どちらの料理も「ネイキッドロブスターE.L.T.」を切って盛り付けるだけでジューシーなオマール海老の一皿が完成する。たとえば、この料理を200人分提供するとしても、それほど驚くことではないだろう。

今まで、オマール海老の商品に〝低温加熱冷凍品〟はなかった。しかも細い足までむき、やさしく熱を入れるという無駄のなさだ。「ネイキッドロブスターE.L.T.」の登場は、今までの調理オペレーションを変えるような気がする。

レストランに〝手土産用料理〟や〝ギフト料理〟があっていいと思う。

新たな販売チャンスを「ネイキッドロブスターE.L.T.」がつくる

このところテイクアウトメニューを提供する店が増えているが、「ネイキッドロブスターE.L.T.」を使って、新しいテイクアウトシーンをつくってみてはいかがだろうか。

寿司屋に土産用の寿司折があるようにレストランにも手土産があっていいし、菓子屋にギフト菓子があるようにレストランにもギフト料理があってもいいと思う。あらかじめお客様にご予約いただいて店頭でお渡しするのだ。

たとえばテリーヌ。〝オマール海老と野菜のテリーヌ〟をつくってみる。塩茹でしたヤングコーン、いんげん、大根、ブロッコリーと「ネイキッドロブスターE.L.T.」を「フォン・ド・オマール」でつくったゼリー液で固めた。

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〝ホタテとオマール海老と枝豆のテリーヌ〟は、ホタテと卵白、生クリーム、「グラス・ド・オマール」でホタテのムースをつくり、カットした「ネイキッドロブスターE.L.T.」と塩茹でした枝豆を加え器に流し湯煎した。これを冷蔵庫で冷やしオマールのジュレを流して冷やし固めた。

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レストランのテリーヌが家庭でも楽しめる、こんなギフトがあってもいいのではないだろうか。パッケージは洋菓子専門店用の洒落たものがあるので流用すればいい。

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さらに、今度はカップオードブルだ。これも洋菓子専門店が使うカップデザート用のパッケージを使う。テイクアウト用にハンドキャリーまで揃っている。

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カボチャ、玉ねぎはバターで炒め水を加え、水分がなくなってきたら生クリームを加えブレンダーにかけてピューレにし、カップに流す。そこにカットした「ネイキッドロブスターE.L.T.」と「ネイキッドロブスターE.L.T.」のキュイソンでつくったジュレ、プチトマトなどの野菜を飾る。これでテイクアウト用のカップオードブルができる。

さらに、今度はグリーンピースのピューレだ。塩茹でしたグリーンピースの薄皮をむいて裏漉しし、生クリーム、塩で味を調えスペアミントを加える。カットした「ネイキッドロブスターE.L.T.」と下茹でしたとうもろこしや枝豆を加えて仕上げる。

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いかがだろうか、レストランに持ち帰りやギフトのチャンスはないだろうか。正月料理としてレストランがつくるおせちがあれだけ売れるのだから可能性はあるように思う。

ただ、テイクアウトメニューの際に衛生面には十分注意することを忘れないようにしたい。


協力/お問い合わせ:株式会社インタークレスト

(2020年8月31日発行「素材のちから」第38号掲載記事)

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