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《トルコ情報》 ロカンタでの食事

安くて美味しいトルコの大衆食堂  

文・撮影/市川路美 

ロカンタとは何なのか 

ヨーロッパとアジアの中間に位置する大国トルコは、古くから色々な国の影響を受け、色々な国へ影響を与えてきました。料理もまた然り。各国の影響を受けたバラエティの豊かさが、トルコ料理の大きな魅力の一つです。星の数ほどあるトルコ料理の中で、何を食べるべきか。悩んだら、まずはロカンタへ行きましょう。

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ロカンタとはトルコの大衆食堂を意味します。魅力は何と言っても価格の安さ。同じような料理でも、普通のレストランの半額以下の料金で楽しむ事ができます。近年トルコはインフレが進み、物価がかなり上昇しました。物価は高くなったのに、お給料は全く変化しないトルコの人達にとって、ロカンタは本当に有難い存在。常に多くのトルコ人で賑わっています。

大都市なら街の至る所にあり、競争が激しい分レベルが高く、コストパフォーマンスが最高に良いです。外国人の目からしても、トルコのレストランの値段は西ヨーロッパ並みに高いです。ロカンタを上手く活用すれば、美味しいトルコ料理を格安で満喫する事ができます。

外国人旅行者にとってロカンタは、別の意味でも有難い場所。大抵のロカンタはセルフサービス式のレストランです。ショーケースの中にずらりと並んだ料理の中から、自分が欲しい物を選んでトレーにのせ、レジで会計を済ませてから席に座って食べます。

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実際に目で見て選ぶ事が出来るので、言葉の分からない外国人観光客には最高のシステム。基本的には好きな料理を自分で取りますが、メイン系の料理は冷めないように取り分けされていないので、指でさすなりしてサーブしてもらいます。

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グリル系の料理の場合は、注文してから焼いてくれます。その場で焼き上がるまで待つか、焼き上がると席まで持ってきてくれたり、呼び出しを受けたりします。言葉が分からないとその判断が少し難しいので、グリル系の料理を食べたいのなら、レストランや専門店へ行った方が気持ちが楽かもしれません。観光大国トルコなので、レストランなら英語の分かる人が必ずいるはずです。外国人観光客の扱いにも慣れています。

ロカンタは地元の人をターゲットにしているので、外国人観光客には敷居が高いかもしれません。そんな言葉の問題がなかったとしても、トルコで焼き料理を食べるなら専門店で食べましょう。ロカンタでは普通のガスコンロで焼きますが、専門店では炭火で焼いてくれます。

お酒を飲みたい人も、レストランへ行きましょう。トルコはイスラム圏ではありますが、ヨーロッパ化されている国なので色々な意味でゆるく、ビールを飲む人が多いです。ゆるくはありますがイスラム圏である事は確かなので、お酒を飲める場所は限られています。ロカンタではアルコール類は一切扱わないので、お酒を飲みたい気分の時はレストラン一択です。

ロカンタは客の回転が早く、混んでくると相席になる事も多いです。ゆったり落ち着いて食事を楽しむ雰囲気はありません。トルコ人も特別な日には、レストランで食事を楽しみます。ロカンタとレストラン、時と場合によって使い分けるのがベストです。

ロカンタで食べる事ができるもの

ロカンタはメニューが本当に豊富です。見ていると、あれもこれも全部食べてみたくなってしまう事でしょう。普段トルコ人が食べている料理は勿論、手間暇かかるメンドクサイ系の料理や、コトコト長時間煮込んで作るお袋の味系の料理も多いです。大衆食堂なだけに高級な食材を使った料理はありませんが、素顔のトルコ料理を知るには最適な場所です。

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トルコ料理を特徴付けるのがメゼの存在。メゼとはメイン料理の前に食べる前菜的な小皿料理を意味します。ロカンタではその前菜も色々と豊富に揃えてあります。

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例えばトルコ料理を代表するジャジュク。ヨーグルトとキュウリで作るソースで、トルコ人の食卓に絶対欠かせない食べ物。

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ジャジュクをはじめ前菜系の料理は、ロカンタで食べても高級レストランで食べても味にそれほど違いはありません。なのに価格は半分以下。お得感が凄いです。

トルコの飲食店ではパンは無料の場合が多いです。金欠のトルコ人は一番安いスープと大量のパンで食事を済ませてしまいます。ロカンタにはかしこまった雰囲気が無いので、自分の懐具合とお腹の減り方によって自由に料理をチョイス出来るのも気楽で良いです。ちなみにトルコはパンもとても美味しいので、煮込み料理などのソースはパンで拭って最後まで食べましょう。

ロカンタにはデザートも数多く用意されています。手の込んだデザートではありませんが、とにかく安い。ただ観光客用には作られていないので、凄く甘いです。トルコ人の殆どが激甘党だからです。

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美味しいロカンタの見つけ方

ロカンタは一人旅の人にも重宝します。そもそも、ロカンタで食べている客の殆どが一人です。ただ、女性一人でロカンタに行くと目立ってしまうかもしれません。トルコでは女性が一人で食事をする事はとても稀な事。特にロカンタは男性客が多く、下手すると客の100%近くが男性だったりします。女性一人だと入りづらいかもしれませんが、女性が入ってはいけないという決まりはないので頑張って下さい。

ロカンタを一番活用しているのが、仕事をしている人達。だからロカンタを楽しむなら大都市の方が良いです。小さな街だと家に帰って食事をする人の方が多いし、そもそも働いている人が少ないです。

ロカンタの数が一番多いのがイスタンブール。トルコ最大の都市で、4世紀以降は東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルとして、15世紀からはオスマン帝国の首都イスタンブールとして繁栄してきました。

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とてつもなく長きに渡った栄華を象徴するような、素晴らしい建造物が集中するとても美しい街。

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イスタンブールには素敵なレストランも多いのですが、コストパフォーマンスに優れたロカンタが沢山ある事でも有名です。安くて美味しいロカンタなら、お昼時には長蛇の列が出来ます。トルコ人はお金にも味にもウルサイ国民なので、どんなに安くても美味しくなければ誰も寄り付きません。並んでいるトルコ人を見かけたら「絶対美味しい」のサインなので、是非とも並んで食べてみて下さい。

ロカンタは朝から晩までノンストップで営業している所が多いので、うまく混んでいる時間をずらして食べに行くのも得策です。ただ、大きなロカンタだと食べ物がなくなれば直ぐに補充されますが、小さなロカンタだと食べ物がなくなったら営業終了。食事時の最後の時間に行くと食べ物の種類が少ない事も多いです。

懐具合を気にせず楽しめるロカンタ

ロカンタでは金額が表示されていない事も多いので、経験豊かな旅行者ほど躊躇してしまうかもしれません。値段がないものは、後になって法外な値段をふっかけられた人も多いかと思います。トルコはイスラム圏の中でも不思議とぼったくりが少ない国。それに、もしぼったくられたとしても、ロカンタならたかが知れている値段です。

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それでも法外な値段を請求されたら、周りの人に救いを求めてみましょう。ロカンタには外国人観光客より地元の人達の方が多く居ます。トルコ人はとても親切で親日家でもあるので、喜んで助けてくれると思います。

とは言っても今現在、トルコで価格の心配をする必要は全くありません。2016年からトルコの通貨であるリラの下落が止まりません。物価の上昇よりリラの下落幅の方が激しいので、外国人観光客には何もかもがあり得ないほど安くなっています。

2015年まで50円台をキープしていたリラが、現在13円台。ロカンタでは前菜やスープが全て5リラ以下、メイン料理でも一皿15リラ以内が相場です。今の激安レートが何時まで続くか分かりませんが、何の心配もなく思いっきりトルコ料理が楽しめるかと思います。


(2021年6月30日発行「素材のちから」第41号掲載記事)

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