〝昆布締め〟の応用力
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〝昆布締め〟の応用力

文・撮影/長尾謙一
料理/横田渉

青森県産 真鱈昆布締め ワンフローズン(生食用)
(素材のちから第38号より)

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青森県八戸で水揚げされた新鮮な真鱈を昆布締めしてワンフローズンで商品化。ほどよい粘りと弾力を持った身に昆布の香りが漂い、まろやかで上品な味わいを持っている。抜群の原料鮮度ときちんと水分を抜く丁寧な作業がおいしさを倍増させている。

刺身はもちろん、〝昆布締め〟はおいしさの可能性を発揮する。

〝昆布締め〟は富山が発祥

もともと〝昆布締め〟は富山の伝統的な料理。江戸時代に日本海を行き来する北前船の寄港地だった富山に、北海道から大量の昆布がもたらされてはじまった。魚の身に塩をあてて水分を抜き、さらに包んだ昆布が水分を吸収しながら昆布の旨みを移していく。もともとは漁師町の保存食だったそうだ。

ご紹介する「真鱈昆布締め ワンフローズン(生食用)」は脂が少なく、クセのない淡泊な味わいで、適度な繊維質を持ち透明感がある。真鱈は〝昆布締め〟には最適な魚の一つだ。

ワンフローズンのお刺身グレード

原料には青森県八戸で水揚げされた新鮮な真鱈を使い、ワンフローズン(1回凍結)で昆布締めにして鮮度を守り、お刺身グレード(生食用)に仕上げている。

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以前にもご説明したが、水産冷凍加工品は漁獲した原料を一旦凍結させ加工コストの低い国に持ち込み、解凍して加工し、再度凍結させるツーフローズン(2回凍結)が多い。さらに凍結回数が多い場合もあるようだが凍結の回数が多いほど商品にダメージがある。

魚体に含まれる水は凍結によって膨張して細胞を破壊し、壊された細胞からは旨みがドリップとして流れ出てしまう。

「真鱈昆布締め ワンフローズン(生食用)」は塩締めと昆布締めの工程によって真鱈の身からきちんと水分を抜くため、こうした冷凍障害を最低限に抑え、昆布のグルタミン酸を身の中に入れる。

〝昆布締め〟によって水分が抜け、昆布の香りをまとうこの真鱈の身を、まずは刺身で楽しみたい。歯ごたえのよさと旨みの凝縮感、そこに加わる昆布の香りは〝昆布締め〟ならではの妙味だ。生産者がひと手間かけて生み出すこのおいしさは、きっと他のメニューでも楽しめるはずだ。早速、刺身でいただいてみた。

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昆布の旨みが移り、醤油をつけなくてもそのままでおいしい。歯ごたえの増した身は噛むほどに旨みを感じ、昆布の風味が口の中に広がる。さらに、白ごま、あさつき、刻み海苔、わさびをのせ、熱いだし汁をかけたお茶漬けは絶品だ。

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身から適度に水分が抜けた食感は歯ごたえよく、旨みが増して昆布の風味がする。魚から脱水シートを使い水分を抜くのを仕込みで見ることがあるが、ちょっと似ている。昆布の風味がすべてのメニューに合うとは思わないが、こうして手間をかけた「真鱈の昆布締め」はもっとたくさんのメニューへの応用力があるはずだ。

昆布締めならではの特長をいかす

さて、「真鱈昆布締め ワンフローズン(生食用)」を使って一口で食べられる手軽な〝手まり寿司〟をつくってみよう。

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水分の抜けた真鱈の身は薄く切ってもしなやかで、酢飯、大葉、いくらと口の中で一体となり、やがて昆布の香りと旨みがゆっくりと広がる。寿司は昆布締めの定番メニューだが、握りだけでなく、手巻き、ちらし寿司などにも応用したい。

次は〝カルパッチョ〟だが、スライスした生の身と炙った身を食べ比べるメニューにしてみた。

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炙ることで締まった身は、ふわりとやわらかく身が膨らみ昆布の香りと旨みが増す。シンプルに塩とオリーブオイルで食べてみたが、生と炙りの違いがはっきりと楽しめてこれは実においしい。

次は「真鱈昆布締め」の身をスライスするのではなく粗いみじん切りにして、アボカド、ボイルしたカリフラワーと一緒に塩レモンソースで和えてセルクルで寄せ、タルタルステーキ風のサラダにしてみた。

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アボカドのとろり、カリフラワーのほくほく、真鱈のぷりっとした食感がレモンのさわやかさの中でしっかりと混ざり合う。昆布締めしていなければ、真鱈の風味も弱く身の水分が邪魔をし、狙い通りのおいしさにはならなかっただろう。粗みじんにした「真鱈昆布締め」の小さな身は噛むごとに昆布の香りと旨みが立ち上がる。

最後は〝冷製パスタ〟だ。

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ソースはニンニクと唐辛子をオリーブオイルで炒め、アサリ、白ワインを加えて加熱して冷ましたものだ。冷水で締めたカッペリーニにこれを絡め、スライスした「真鱈昆布締め」とバジルをのせた。温かな料理に比べて冷たい料理は繊細な味が出にくいが、「真鱈昆布締め」はアサリに負けない旨みを発揮して、水分の少ない身はパスタと上手く絡んでくれる。冷製パスタには最適と言えよう。

本当はもう一品、天ぷらを試したかった。昆布締めされた真鱈がキスやイトヨリとどう違うか、あとは皆さんにお任せしたい。

協力/お問い合わせ:株式会社ナチュラルシー

(2020年8月30日発行「素材のちから」第38号掲載記事)

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素材の生産者や食品メーカー、輸入者の皆さんの商品への深い思い入れを料理人の皆さまにお伝えしたく、2010年より外食店向けの食材情報誌「素材のちから」の発行を続けています。そして2021年noteでも発信をスタートさせます。http://www.sozainochikara.jp/