同人誌の感想書く回①

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いつもはイベント直後にTwitterで書いてるやつです。
例大祭まで大きな即売会がありませんので、去年買った同人誌から適当にピックアップして感想を書こうと思います。
要は、お気に入りだけど感想書くタイミングを逃してしまった本ということです。

『件の店』

サークル:だいたい2トン
作者  :柳太さん(@yanagitaaaan
発行日 :2019/5/5(例大祭16)
サンプル:https://www.pixiv.net/artworks/74360677

秘封の2人に屠自古と青娥、という珍しい組み合わせ。
同じストーリーを漫画と小説の両面で辿る、という変わり種の構成でもあります。

青娥が邪仙と呼ばれる所以を存分に見せつけられている感じがします。
「この店、穴がありませんか」と問われた時の青娥の表情と言ったら!
それまでの物腰柔らかで優しげな雰囲気から豹変する様が、たった1コマで見事に表現されています。
言葉巧みに人を闇に誘い込む女・霍青娥、いやぁ恐ろしいですね。

そして、対照的なのが屠自古の存在です。優しさに満ちあふれてますね。この本の癒やし。
人としての実体を持たないはずの屠自古が、人としての良心をしっかり残しているというわけです。
彼女の横槍がなければ、秘封倶楽部の2人はどこまでも深みに嵌っていったことでしょう…

残念ながら在庫はなく、再販予定もないそうですが、作者さんは1年ぐらいするとpixivに過去作を再録してくださいます。興味を持った方は、気長に待っていただくと良いかと。
私も折を見て読書会等に持ち込もうと思っていますので、機会があれば是非手にとってみてください。

【3/8追記】
再録版が公開されました。ぜひどうぞ。
https://www.pixiv.net/artworks/79981219


『秘封倶楽部 詞彩集成 』

サークル:!ふぐり
作者  :inuatamaさん(@inuatama_
     tamaさん(@shinosaika
     皮さん(@kawagopo
発行日 :2019/11/17(科学世紀のカフェテラス9)
特設  :https://tillneednowordsatalll.tumblr.com/
委託  :https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=584231

見た目はオーソドックスな秘封小説本。
表紙も中々にインパクトがありますが、中身は更に強烈です。
inuatamaさん『新世界にて』、tamaさん『I really really really...』、
皮さん『月灰圏 花底』の3作品からなる合同誌の体をとっています。
この本、宣伝文句が大変ずるい。私の性癖に刺さりまくっています。

秘封倶楽部を主題とした幻想小説集が登場。
ふるさとより続くレテ川をすすれ。公道上で看取られ続けよ。言語森にて暗黒星を語り明かせ。
君は言葉を信じない。

『新世界にて』は、3作品の中で最もオーソドックスな秘封倶楽部と言えるかもしれません。不思議を追い求める蓮子とメリー。微妙にすれ違う2人の認識。メリーの直感が2人を怪異に導き、やがて日常へと戻っていく。
あらすじだけ辿ればいつもの倶楽部活動ですが、描き方が秀逸です。横丁に差し込む夕日が、脳裏にありありと浮かびます。ゾワッとするようなホラー的描写も素晴らしい。
冒頭のシーンとラストシーンの繋がりに気付いた時、「してやられた!」と思いました。

続く『I really really really...』ですが、これはとてつもない作品です。衝撃的、人によってはトラウマになりそうな恐ろしさ。
この作品、冒頭は「蓮子の夢に現れたSNSアカウントを頼りに、幻想郷を探して旅に出る」といういかにもな秘封倶楽部です。しかし、中盤から雰囲気がガラッと変わり、倫理観と道徳をどっかに置いてきたようなおぞましいストーリーが展開されていきます。
ヘビーな内容に比してクライマックスはあまりにもあっさりしていて、非常に後味が悪い。これもまた2人の狂気と絶望を引き立たせるスパイスになっています。
非常に人を選ぶ作品です。『ジムノペディが終わらない』が好きな方は必ずお読みください。課題図書です。読んで感想をお聞かせください。

最後は『月灰圏 花底』。「言葉」を食べてしまう黒い星に対峙する、秘封倶楽部のお話です。
この作品、言葉選びのセンスがすごい。一見難解な文章に見えますが、案外さらさらと読めてしまいます。表現力が強すぎてろくな感想が書けない。
秘封倶楽部ではない東方キャラが1人登場するのですが、蓮子・メリーとは対照的な堅物でいいですね…。表情を変えないながらも、2人が持ち込んだお菓子をもしゃもしゃと食べる姿が大変可愛らしい。
クライマックスは気持ちの良い締めくくりです。すっきりした読後感で、清々しさを与えてくれます。

それぞれ繋がりのない、三者三様の作品ですが、総じて非常に面白い。一風変わった小説本をお求めの方へ、是非ともおすすめしたい傑作です。
メロンブックスに在庫があるほか、boothでの販売予定もあるそうです。


終わりに

2冊とも秘封で、しかもどちらも癖の強い本になってしまいました。
ややこしい本とか変な装丁の本が好きなんですね。
次回は静岡例大祭のレポでも書こうかと思います。ではまた。

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