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エビフライには尻尾があるし、メンチカツには夢がある。

よく晴れた日はからっと揚がったフライと瓶ビールにかぎるわ。そんなことを思いながら、フジコ(62歳)は喉を鳴らした。ゴクッぷは〜

駅前の商店街に最近あたらしいお店ができた。名前は「大ちゃん食堂」。元々はスナックだったが、ラーメン屋になったり、インド料理屋になったり、整体のお店になったり。入れ替わりの激しい場所だった。

お昼どきにお店の前を通りがかると、油のにおいがした。ああ、麗しのラード。食欲がないときはしんどいにおいだが、今日のようによく晴れた日には無性に揚げもんが食べたくなる。

エビフライがいいかな、アジフライもいいな、そんなことを思いながらお店に入ると、黒板には「ミックスフライ」というメニューがあるではないか。

エビ、アジ、メンチ。おあつらえ向きだ!と思った。御誂え向きなんて言葉はこんな瞬間のためにある。ビールは大瓶しかないようだ。一人だと中瓶がちょうどいいんだけど、まぁ飲めるでしょう。

しばらくして、きれいな色のミックスフライ御一行様がやってきた。盛り付けがきれいだ。しかも小さな冷奴までついている。お味噌汁も一手間かかっていそうだ。

大ちゃん、あんたいい料理人だね。わたしゃあんたを応援するよ、と思って厨房のほうをみると30過ぎくらいの男と目があった。清潔感のあるいい男だった。

のれんがきれいな店、料理人のエプロンがきれいな店、そして店名に「ちゃん」がつくお店は信用できるうまい店である確率が高いの法則。

3つとも揃っているこの店が近所にできたことはラッキーだ。長く続いてくれるとありがたい。まずはおしゃべりで食いしん坊のハルエちゃんに教えてあげれば、そこから口コミがひろがるかしらと思いながらメンチカツをかじった。ああ、愛しの玉ねぎ。

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