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「カウンターさん、あがり、げた、ね」という符牒

ふちょう
符丁 符帳 符牒
◇意味をもたせた文字や図形。記号。符号。
◇仲間だけに通用する言葉や印。合言葉。
◇商店が商品に付ける、その店の印や値段を示す印。
◇利益などを分配すること。また、その分け前。


「親方、すいません、温かいお茶をいただけますか?」
「あい! カウンターさん、あがり、げた、ね!」
「げた…? はて……」

げた、これ?

「我々の符牒で、げた、だり、めのじ、って言いましてね」

「あがり、むらさき、なみだ、やま、的な?」

「あい。そうです。げた、だり、めのじ」

「へぇ。ググッたりチャットGPったりしないで当ててみたいなぁ」

「じゃあ今日はなんのことか言いませんので、また次回」とにっこり笑う親方。我々の前に届くぶあつい湯呑み。

「ずずず、その、ゲッターズ、サルバドール、へのへのもへじ。カウンターのこちら側にいる客が使うのは変なんでしょ」
「ずずず、そうそう、知ったかぶりは無粋だよ。こちとら江戸っ子でい」
「ずずず、でも意味は知っときたいよね。はぁ落ち着いた。ではお会計ください。まとめて」

「あーい! カウンターさん、お あ い そ」とわざとゆっくり言って、ウインクする親方。普通だとおじさんのウインクは気色がわるいが、とてもチャーミングだ。

「「「 ごちそうさまでした〜 」」」

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