自然農が無肥料で育つワケ。地下に広がる菌糸ネットワークの存在が鍵か。
別に自然農に限らなくても良いのですが、近年少しずつ「無肥料で野菜が育つ」ことをうたう農法がちょくちょく出て来ています。
ちなみに「自然農」についての説明はこちら。
川口由一さんという方が考案されたもので、僕もこのやり方が理にかなっていると考える部分が多いので、ベースとなっています。
無肥料栽培でも実際にはそれぞれ「肥料」の定義が違ったりするので、一律には語れませんが、僕が実践して来た限りでは、外から資材を持ち込まずに、雑草や虫、微生物などの働きを最大限に生かすことで、野菜を収穫することは確かに可能です。
少なくとも慣行農法よりも資材の投入量ははるかに少なくてすみます。
なぜ少ない量で済むかについては、以下の記事でも書いていますので、よければお読みください。
ここでは微生物の存在が鍵となっていることを書いていますが、さらにその相互作用、ネットワークの存在が実は最も大きいと思っています。
このネットワークの存在について、知ったのは5年ほど前。
ドイツ人の友人が、ドイツである本が流行っているという話をしていました。
森の木々たちが地下でネットワークを築いて、情報のやり取りや栄養の交換を行なっているという話だというのです。
BBCの動画がありましたので載せておきますが、おそらくこれと同じような内容のことだと思います。
植物は根に微生物を住まわせ、根では届かない隙間にある栄養素や、植物では分解できない栄養素を微生物に分解してもらうという共生関係を築くものが多くあります。
例えば有名なのは松茸。
松茸は赤松と共生し、赤松から炭水化物をもらう代わりに、土の栄養素を分解し、赤松に与えるという共生関係を築いているらしい。
このような共生微生物がネットワークを広げ、他の植物のネットワークにも繋がり、森の地下ではとても複雑なネットワーク網、「Wood Wide Web」があるらしいということが最近の研究によって分かって来たそうなのです。
このネットワークを通じて、枯れた木々に使われていた栄養素が、他の植物に再利用されたり、その木に来た虫の情報や病原体の情報も流れるようです。
私たちが認識している以上に、自然界の情報ネットワークはとても高度なものなのでしょう。
森林の菌根ネットワークについて研究している方のTEDの動画です。
ネットワークを崩壊させないために、いかに人が手を入れるべきか、林業のあり方についても述べられています。
最初の動画の中でも出て来ますが、このネットワークは畑の中でも存在します。
病害虫の発生情報がこのネットワークを通じて、他の株に伝わると、その病害虫に対抗するための化学物質を生成して、対抗しようとするのです。
ただし、このネットワークは微生物が数多くいる畑でなければ十分なものは築かれないでしょう。
さらに川口由一さんが考案した自然農では、極力耕さないことが大切だと言われています。
それは自然の摂理に反しているからだという理由だと思いますが、科学的になぜ耕さないことが良いのかはよく分かっていませんでした。
しかし、この菌糸ネットワークを壊さないため、より強固なネットワークを築くためと考えると納得がいきます。
このネットワークがあれば、土の中の栄養素を効率よく循環させていくことができます。
通常、慣行農法では野菜に吸収されない栄養素は雨に溶けて、流れ出てしまうこともあるでしょうが、こういったロスもかなり少なくなるはずです。
さらに野菜と共生する微生物を研究している方によると、この共生細菌が多い畑の条件は
1)植物性の堆肥を中心とした土づくりをしていること
2)植物の多様性が多いこと
3)農薬や化学肥料を使っていないこと
だそうです。
こう考えると自然農のやり方は、共生微生物を増やし、地下ネットワークを築くために理にかなっている方法であることがわかります。
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