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「剣と魔法の税金対策」発売記念  【実話】あるラノベ作家が税務調査喰らった件その3

 というわけで三回目です!
 と言いますか、発売日(2021年1月18日)です!

 発売前特別企画の、「あるライトノベル作家が税務調査を喰らった件」もいよいよ最終回。

 ここまでのあらすじ!
 突如通知された税務調査! 今までの経費が認められなければ、間違いなく、即破産レベル!
 一縷の望みをかけて税理士さんの元に駆け込み、様々なアドバイスを受けたSOW、かくしてついに、税務調査の日となった!

 ついにやってきました税務調査の当日です!
 ここに至るまでの間、税理士さんから、様々なアドヴァイスを受けました。

「いいですか、大切なのは落ち着くことです。下手に物を移動させたり、掃除したりしない、いつもどおりの姿で。あとちゃんと寝て、ごはん食べて、体調を万全にしておくことです」

 どんな問題でも、まずはコンディショを整えることが大切・・・
 なので、来訪予定の午前十時の五時間前には起きてしっかり目を覚まさせ、きちんとメシを食い、とどめとばかりにレッドブルを煽って、待ち構えました。

「おそらく、五分前、もしくは十分前くらいに来るでしょう。こちらの心の準備が整う寸前に来る人多いんですよ」
まさに、九時五十三分にチャイムが鳴り、税務調査員の人が現れました。

 現れたのは女性、しかも私より歳下と思われる、まだ若い方でしたね。
 お役人さんなので、シックな装いでしたが、清潔感のある、
「ちゃんとした」感じの人でした。
「二人で来て、年配の人がいたら注意ですが、まずないでしょう。若い方が一人で来ると思いますよ」
ここまで全て税理士さんの読み通りでした。
なんだ孔明か!?

現れた調査員の人、予想外に朗らかないい人でした。
てっきり、今はなき巨匠伊丹十三監督の名作「マルサの女」ばりに、大人数で押し寄せ、ダンボールにあれこれ詰めて行くのかと思ってました。
調査員さんに言うと、笑って、
「それよく言われるんですよね。でもあれは国税局の話ですから」と。

そうなんです。調査員の人、すごく朗らかなんですよ。
明るく、笑顔で、世間話をするように、 「どんなお仕事なんですか~?」みたいな感じで、日常会話のノリで対話が続きました。
氷でできたカミソリのような人がにらみを効かせながら尋問するのかと思った私は結構拍子抜け―――しませんでした

言いながらも、調査員さん、お茶の一杯も断ります
後から知ったことですが、調査対象者から、どんなものでも受け取れば調査に差し障るということで、お茶すら飲まない。
仮に食事とか半ば無理やりおごっても、去り際に代金を置いていくそうです。
笑顔の裏に、ホークアイが光っているのです。

この世間話も、調査の一環です。
申告書類だけでは、相手がどのような業務実態なのかわかりません。
たわいもない会話から、相手を伺っているのです。
おっかねぇ調査員。
そして、税理士さんが
「部屋の片付けとかしない」 
と忠告なさった理由もそこにあります。

けっこう多いのが、事前に部屋をあえて「散らかし」
または「薄汚れ」させて、
「儲かっていない」ように装う人が、かなり多いそうです。
そういうことをすれば、余計に怪しまれ、
痛くもない腹を探られるわけです。
調査員たちはそんなものは見慣れているので、全て見抜くのです。

「では、お部屋を見せていただいてよろしいでしょうか?」  
玄関先でのしばしの対話の後、部屋に入り、 
私の「仕事場兼書斎兼寝室兼リビング兼倉庫」な、
要はワンルームな部屋に入りました。
そこで私は、先日の税理士さんの言葉の意味を知ります。

「これなら大したことにはならない」――
税理士さんはおっしゃいました。
部屋に入って、一言、それまで笑顔だった調査員さんの顔が、
一瞬素に戻りました。  
「うわぁ・・・」
そう、私の部屋は、汚部屋なのです

どれくらいのものかというと、年単位で購入した、 
あれやこれやの書籍、小説、資料本、マンガなどが山積みです。 
本棚は五棹ありますが、その許容量はとうにオーバーし、足の踏み場もありません。

さらにその他、入り切らないブツは、
折りたたみのコンテナに入れて積んでいるのですが、 
三十以上におよぶその積みがもはや新たな壁になっている始末。
コタツ机の上すら物が積み上がり、もはや机の体裁をなしていません。
ぶっちゃけ私は、ベッドの上で飯食ってました

しかもそのベッドも、あふれかえるモノを移動させないと寝るスペースが確保できないので、
寝るときは作業用椅子の上に荷物を移動させ、起きたら今度はベッドの上に移動という往復をして、ようやく成り立つ有様。 
仕事用のPC前を除けば、他にはわずかに体を細めて、ジャミロクワイ状態になって移動する隙間が有るのみです。

 なので、部屋に二人入るとキャパオーバー、座るところもございません。 
 調査員さんと二人で立ちぼうけです。
調査員さん「えっと」
 しばし、言葉を選ぶ調査員。  
私「一旦戻りますか?」
調査員さん「・・・ですね」
 こうして、かろうじて「座れる」玄関に戻りました。

これが、税理士さんの笑顔の理由でした。
確かに、私の申告の中には、領収書のないものも多い。
さらに言えば、そもそもが「資料代」として計上しているものの金額が多すぎて、正しいのかと疑問を持たれていたわけです。
しかし、目の前に物はある
ありすぎるくらいあるわけです。

しかも前回申し上げましたように、
これらが申告通りなのか、立証責任は税務署側にあります。
部屋満載のブツの数々。
文字通り「足の踏み場のない」くらいのブツ。
部屋の床がちょっと下がるくらいの量です。
これをすべて調べる? 
ありえない話です。
年が暮れます。

しかも調査員さん、私は「文筆業」として申告していましたが、
どういう業務形態かはさすがに知らなかった。
ライターなのか記者なのか、
作家にしても、「ライトノベル」というものすら知らなかったわけです。
日進月歩で、生き馬の目を抜くほどのヲタ業界のことなど、知ろうはずがございません。

私「同人誌というものがありまして」  
調査員さん「いくらくらいするんです?」
私「いくらくらいすると思います?」
調「2~30ページくらいですから・・・300円くらいですか?
私「1000円くらいですね」
調「これが!?」
私「それがあそこに3百冊くらい積まれています」
調「え!?」

私「その積んでいる山が、六列くらいあります」
調「何冊あるんですか・・・?
私「それは私にもわからないんです」
調「なんで・・・?」

私「この資料用のモデルガンなんですが・・・」
調「それは・・・5千円くらいですかね?」
私「もう一桁上でして」
調「5万!?」
私「もう、今は生産してないモデルなんです。ほら、中のアンケートハガキとか、三桁時代ですよ」
調「うええ・・・」(ほんとに言った)

その上で、私の職業実態の方を包み隠すことなく申し上げました。
流行の移り変わりが激しい業界であり、
常に様々な知識を取り入れなければ成り立たない業種なのだと。

話が来てからでは遅く、日頃から用意し、
身に付けなければ、話自体が来ないのだと。
それこそ「○○知ってる?」と言われ、
即座に答えられるくらいの引き出しを備えなければ、
成り立たない仕事なのだと、
説明いたしました。

実際、特に私はその傾向が強く。
ノベライズ仕事やゲームのシナリオ仕事などは、
日頃のインプットが命です。
「あれ知ってる?」と編集さんに問われ、即座に、
「ああ○○ですね。とくに△△が大好きですよ」 と言えるくらいでないと、
話は通じません。

なので、人気どころのマンガはかなりの数おさえないといけませんし、
ゲームなどは裏面の隠しダンジョンレベルまでやりこみます。
それらは実際、今までの仕事で、重要な位置を占めているのです。

そんな中、「例えばこれもそういったものの一つで・・・」
と出したものを見て、
調査員さんの顔が変わりました。
「あ、佐藤健くんだ・・・」
そう、実写版るろ剣のノベライズでした。
あれも私書いているんですよ、原作の知識もそうですが、幕末明治に関しての、相応の資料がやはり必要となりました。

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調査員「あー、こんなのあったんだ。こんなのあったんだ」
私「お好きで、佐藤健さん?
調「はい~、もう出ているドラマも映画も全部見ていますね」
私「いつから好きなんですか?」
調「電王からです
※仮面ライダー電王は、佐藤健さんの初主演作
私「ほ、ほう・・・」

調査員「でも、実は、佐藤健さんは二番なんですよね」
私「ほう・・・では一番は?
調「モモタロスです」
私「ほう!?」
意外な素顔が見えました。

私「よかったらそれ差し上げましょうか? 献本で何冊もあるんで」
調「え・・・・・・・」
私「どうぞどうぞ」
調「あ、いえ、自分で買います」
利益供与になるので受け取れなかったようですが、奇しくも一冊売れました。

と、まぁそんなこんなで進んだ税務調査なんですが、
こっからは、再び税理士さんの言葉です。
「残念ですが、調査に入られた段階で、いくらかの追徴課税は覚悟しておいてください」

「向こうも、調査に来た手前、よほど完全無欠でない限り、手ぶらでは帰れません。なんらかの穴を見つけ、成果を得るでしょう。これはもう、避けられないものと思ってください」

最終的に、資料や取材費、交通費や接待交際費、
その他諸々の大半は認められたのですが、
ここで争点となったのが、「家事按分」でした。
家事按分、聞き慣れない言葉ですね。
要は「仕事で使う、プライベートで使う」の割合です。

それこそ、例えば「家」ですね。
私の場合、仕事場は自宅です。
というか、自宅が仕事場です。
仕事場に暮らしているようなものです。
さらには、電気代水道代などもあります。
何割を仕事用に、何割をプライベートで使用しているか?
その割合を「家事按分」というのですね。
 私はその家事按分を、仕事七:プライベート三にしていたんです。


先程も申し上げましたように、私の部屋はブツに溢れ、
寝るのでやっとな環境です。
だからこその「仕事場で暮らしている」状態なのです。
ですが、その割合を仕事6:プライベート4にするように通告されました。

これがどういうことかというと、わかりやすく数字にしてみましょう。
仮に、それまでの家賃が5万円だったとします。
これを、初期の申告の7:3だと、家賃の七割が「経費」になります。
売り上げから3万5千円分非課税となるのです。

対して、税務署側からの指示で、6:4にしますと、
経費として認められるのは、家賃の六割までとなります。
そうなると、非課税分は3万円です。

つまり、月5千円。それが三年分
18万円に課税されることになるのです。

これら様々な家事按分が変われば、当然経費の計上額が下がり、
「所得」が増え、結果、税金の額も増えるのです。 

それが三年分計算され、私の追徴課税額は・・・・五万円でした。
まぁ痛くはありますが、一月あたり千円くらいの計算ですね。

で、これで手打ちということになりました。  
後日、税務署に趣き、同意書にサインを求められます。
この同意書にサインをしたあとは、後から異議があっても認められません。
そういうものだそうです。
ただ、そうなると、もうちょいせしめたいと思いました。

な~んせ税務調査を受ける機会なんて、そうはありません。
転んでもただでは起きるな。
その場の土を握りしめろ。
それが私のモットーです。
1万分の1の割合で受けたのなら、その経験も生かしてこそ人生です。

調査員「では、他にご質問はありますか?」
私「質問していんですか?」
調「ええ、納得して納税していただくのが我々の仕事なので、税に関するご質問でしたら、答える義務があります」
私「なら・・・もしも、魔王から『世界の半分をやろう』言われたら、どんな税金がかかります?
調「は?

とまぁそんな感じで、現職の税務署の税務調査員さんに、あれやこれやと聞きまくり、
最終的に、「すいません・・・そろそろ次の仕事が・・・」
と言わせるまで取材したんですなw
5万は授業料だコンチキショー!
ただし、当たり前ですが、納税は「経費」にはならないのが痛いところです。

そんなわけで、身を切る思いで、体当たりの取材と実体験を元に創り上げました、
「剣と魔法の税金対策」!
どうぞ皆様、私の血税の証を、手にとっていただければ!!!

はい、そんなわけで本日もやります。
発売前特別イラスト第三弾!
最終日の本日は、今作のイラスト担当の三弥カズトモ様描き下ろしなこちら!

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はい、大変素晴らしゅうございます!
こちらの二人のあれこれに関しては、是非とも本作本文で楽しんでいただきたいと!
こちら、今回のための描き下ろしなので、こちらでしか見られな・・・い?

さてそんなこんなで、「剣と魔法の税金対策」皆様どうぞ、ヨロシクお願いいたします!



 

 

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