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家屋(建物)の相続税を計算するには?相続税評価額の計算方法について

被相続人(亡くなった人)が所有していた家屋(建物)の相続税評価額の計算方法について解説していきます。被相続人が住んでいたもしくは第三者に貸していた家を相続する場合はこの記事を参考にしてみてください。

1.家屋(建物)の定義

そもそも家屋(建物)とは、このように定義されています。

建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。
(不動産登記規則第111条)

固定資産税の課税対象となる家屋は、不動産登記法における建物と同じとされています。固定資産税の課税対象となる家屋は下記3つの要件を満たすものです。

①外気分断性:壁や屋根(計3方向)があり外気から分断されている
②定着性:基礎を設けて建てられた建築物であり、その土地に十分定着している
③用途性:居住や作業など目的に応じ利用できる状態となっているもの

そのため、支柱を埋め込み屋根のみがあるカーポートやコンクリート上に設置されたプレハブ倉庫などは上記に該当せず課税対象の家屋とはなりません。

2.家屋(建物)の相続税評価額の計算方法

固定資産税評価額がそのまま家屋の相続税評価額となります。土地の相続税評価額のように煩雑な補正率を含む計算などは必要なく、固定資産税評価額さえ分かれば家屋の評価は完了します。

 2-a.家屋(建物)の評価額

家屋の相続税評価額の詳細を知るには、都税事務所や役所の固定資産税課などの固定資産税台帳から固定資産税を確認しましょう。もしくは、年1回毎年4〜6月ごろに各市区町村(東京23区内は都)から郵送される固定資産税の課税明細書で確認することもできます。

 2-b.マンションの評価額

基本的には上記2-aと同様ですが、東京都23区の場合は課税明細書に記載のある価格ではなく右隣に記載のある「課税標準額」欄に記載のある金額がそのマンション一室の相続税評価額となります。

 2-c.第三者に貸している場合の評価額

被相続人が居住していたのではなく、第三者に貸していた場合(賃貸アパート、賃貸マンション、賃貸戸建て等)は下記計算式に基づき一定の減額ができます。

固定資産税評価額×(1ー借家権割合)

借家権割合は日本全国一律で30%となります。ですので、固定資産税評価額×70%の計算式で簡単に建物の評価額を算出することができます。

例えば、固定資産税評価額が1億円の家屋を第三者に賃貸したとすると、評価額は1億円×(1-0.3)=7,000万円となります。

 2-d.賃貸アパートの場合の家屋・建物の相続税評価額

相続人が賃貸アパートを所有していた場合、賃貸アパートの建物部分の相続税評価額の計算式は下記の通りです。

固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

賃貸割合とは、賃貸アパートの建物のうち貸している部分の床面積の割合です。
例えば、賃貸アパートの建物の固定資産税評価額が1億円で全部屋の床面積合計が300㎡とします。そのうち賃貸アパートとして貸している部屋の床面積の合計が210㎡だとすると賃貸割合は210㎡÷300㎡で70%となります。
この場合、賃貸アパートの建物の相続税評価額は、1億円×(1-0.3×0.7)で7,900万円となります。

 2-e.建築中の家屋(建物)の評価額

建物の建築途中で被相続人が亡くなった場合もその家屋は相続税の課税対象となるので注意が必要です。建築中の家屋の相続税評価額は下記の計算で求められます。

亡くなるまでにかかった建築費の金額×70%

厳密には亡くなるまでにかかった建築費を費用原価の額といい、課税時期(被相続人死亡の日)までにかかった建築費の費用を、課税時期の価格に引き直した額の合計額のことを言います。詳細は国税庁のHPでも確認できます。

 2-f.リフォーム中の家屋(建物)の評価額

被相続人が亡くなる前にリフォーム工事をしていて、そのリフォーム部分が固定資産在評価額に加味されていない場合はリフォーム前の固定資産税評価額に加えてリフォームを加味した評価額を算出する必要があります。

リフォーム前の固定資産税評価額+(リフォーム費用-被相続人死亡日までの償却費)×70%

死亡日までの償却費:リフォーム費用×90%×経過年数(※1)/耐用年数(※2)

※1経過年数とは、リフォーム日から死亡日までの年数で1年未満の端数は切り上げ
※2耐用年数は下記減価償却資産の耐用年数等に関する省令を元に計算

2-g.家屋(建物)に付属する設備、外構、庭園等の評価

ガス設備、旧排水設備、電気設備など建物に付属する設備は建物の固定資産税評価額に含まれているので別途評価額を求める必要はありません。しかし、花壇や塀、門扉など外構の設備については下記計算式にて計算します。

(再建築価額-建築時から課税時までの償却費の合計額または 減価の額)×70%

庭木、庭石、あずまや、庭池等庭園設備は下記です。

相続開始時の調達価額×70%

趣味や鑑賞のための一般的な家庭の庭は庭園設備とはいえず評価の必要はありません。ただし、資産価値のある灯籠などが設置されている場合は個別に評価対象となります。

3.家屋(建物)の節税方法

ここまで様々なケースの建物の評価の方法について解説させていただきました。最後に、賃貸物件とすることでできる借家権割合や賃貸割合をうまく利用した相続税の節税方法について解説していきます。

 3-a.第三者に貸す

上記の2-c.第三者に貸している場合の評価額でも解説した通り、第三者に貸し出されている家屋については固定資産税評価額から借家権割合である30%を減額することができます。

そもそも固定資産税の評価額は時価の50〜70%程度となっているので、例えば1億円で建てた建物の固定資産税評価額が7,000万円だった場合、この建物を第三者に貸すと相続税評価額は賃貸評価減30%(固定資産税評価額7,000万円×30%=2,100万円の評価減)となります。

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よって、1億円で建てた建物の評価は4,900万円となり、相続財産が1億円の現金であることと比べると約半分程度の評価になります。
しかし、相続対策のためだけに賃貸アパートやマンションを建築するのであれば慎重に検討してください。賃貸経営に伴うリスクとして空室が続き赤字が続くといったリスクも常にあることを念頭に置いておきましょう。

相続税対策のために不動産購入をしたものの認められない判例も出てきているので、相続税対策だけの不動産購入は考え直した方が良いかもしれません。購入を検討するのであれば一度専門家に相談することをおすすめします。

自己居住用ではない不動産を購入することで相続税対策をする場合、購入した不動産は将来的に売却する可能性がかなり高いです。売却を検討した時に売れるなの立地なのか、購入する価格は適正価格か、など購入後の売却まで見据えて考えててからの購入をお勧めします。
特に近年、不動産価格が上がっているので総じて利回りが低くキャッシュフローあまり良くないことも多くあります。購入する際の価格は適正価格か、将来的に売却する際売れやすい立地なのか、など購入後の売却まで見据え考えてからの購入をお勧めします。総合的にみて相続税の圧縮効果、投資の観点両方から見て判断することが重要です。いずれにせよ、まず相続税がどれくらいかかるのかの概算を把握しておくことが重要なので、なるべく早めに専門家に相談することをおすすめします。

その他、不動産を使った相続税の対策として、子どもに自宅を買ってあげるという手法があります。購入した自宅は子どもに賃貸住宅として貸し、子どもからは家賃をもらうことでそのお金をローン返済に充てることができます。
親としては子どもへの相続の際の相続税対策となり空室リスクも少なく賃貸経営ができるというメリットもあります。これは子どもにとっても親にとっても効果的な手法です。ただし、小規模宅地の特例は使えないことと、場合によっては貸家建て付け地評価の30%減が適用できない可能性もあるので、専門家に相談の上注意して検討してください。
固定資産税評価額となることだけでも効果は見込めるので、もし住宅購入を検討している子どものために資金援助を考えているのであればこの方法を一度検討してみてもいいかもしれません。

3-b.空室を減らして賃貸アパートの評価額を下げる

賃貸アパートに空室がある場合、賃貸割合が下がり貸家建て付け地としての評価額が上がってしまいます。その結果相続税が高くなってします。

賃貸アパートの空室を減らすことで建物の相続税評価額を下げることができるので、空室をなるべく減らすことも相続税対策において重要です。なお、相続発生時に空室となっていたために貸家建て付け地評価が適用できない、ということはなく、空室が一時的なものであれば賃貸割合に含めても良いという規定があります。

4.まとめ

家屋にかかる相続税について解説してきましたが、土地や家屋だけでなくその他の全相続財産に対して相続税が概算でどれくらいかかるのか把握しておくことが、相続においては非常に重要です。
相続税対策を検討するのであれば、まずは現状の相続税がどれくらいかかるのかを確認しましょう。

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