東京藝大・先端芸術表現の修士受験記

もともと学部時代、所謂「美大」「芸大」に所属していなかった私ですが、そんなガッチガチの専門的教育機関への憧れは強く、割と早い段階から大学院受験を視野に入れていました。
当初の照準は東京芸術大学大学院映像研究科アニメーション専攻(か、映画専攻)。学部を持たないこの研究科は「行きたいところは大学院からしかなかったから」という言い訳にもぴったりです。まぁ継続的にやる気を発揮するのが苦手な私はアニメーションを作る手間がかけられず、結局学部2年までは実写映像を作っていた訳です。今思えばクオリティ低かったですが頑張ってやっていました。
ただ、学部2年の後期に現代美術史の講義を受けたときに私の人生は転換を迎え、「これこそ私のやりたかったものだ」と現代アートの世界に入り込むこととなります。
そういう訳で東京芸術大学美術研究科先端芸術表現専攻が私の受験先となり進学先となったのです。

尚、私の文章を参考にしてどのような受験結果となっても当方は関知し得ないし、この文章は読み終わっても爆発しません。
ただ、様々な角度からの情報があることは、受験者側にとって掴めない雲のスケッチを描くようなメリットがあると思っているので、その集合知に貢献しようという文章です。入試の出題側にメリットがあるかと問われると微妙ですが、それはそれ。

さて、私が受験したのは2017年。出願は2016年末だったのでそれに準じた話をしていきます。

入試準備

第一に作品制作です。実績作りです。それが最大の入試準備です。私は他人より作品数が少なく、ものの出来という意味での質も総じて高くはなかったので一番苦しんだ部分です。

事前提出物は2つ。志望研究調書とポートフォリオ。
調書は誤解や論理の飛躍がないよう細かく仔細に記述し、先端修士OBの先生やよく話を伺いに行っていた美術理論の先生に添削をお願いしていました。
内容は、自分が制作テーマに据えていたことと、芸術の社会的役割を繋げる、という話。ちなみに芸術に社会的役割は全く必要ではないと思っていますが、その方が受けがいいのではとその要素を入れました。先生方は内容を読んでいるようですが、それが合否にどれだけ関係しているかは不明。

ポートフォリオは作品まとめとプロフィールを載せました。特にプロフィールには先端OBの先生のアドバイスに則り、今までやってきたことの詳細な解説文と、志望研究調書に書いたような修士課程進学後にやりたいことのより細かな文章を記述しました。
ただ、入学後の周囲のポートフォリオを拝見すると、作品集だけという人の方が多かった印象です。ポートフォリオは合否に直結すると思っています。

また、私は行こうと思っていた研究室の先生にアポイントメントを取って、ポートフォリオを手に事前面談に行きました。専攻がどんな専攻なのかという話もできますし、何より先生に事前に覚えて貰うということは受験において不利に働くことはなかなかないと思うので、事前面談は特にお勧めします。私はポートフォリオにレビューもいただき、提出前に軽い修正をすることができました。

小論文

ちなみに会場は寒いので早く行っても辛いです。あと面接票は最悪忘れても何とかなるので焦りすぎないように。

一次選考は小論文です。結局、私は何の対策もせずに挑みました。いや、過去問は参照しました。参照した結果傾向を掴んだというか、正直毎回似たようなことしか訊いてないなあという感想です。

ただ、決定的な注意事項があります。時計を忘れないようにしましょう。教室には時計がありませんでした。

私はスマートウォッチの使用者だったので、「電子機器を机の上に出さないこと」という受験ルールのために時間を把握することができず、時間の不安を抱き続けたまま、プロットと清書の時間配分が掴み切れないまま小論文を書き上げました。書き上げてトイレとか行く間に時計ないかなって思ったんですけど時計なかったです。結局めっちゃ時間余ってたんですけども。

内容についてですが、私見を述べるなら、大学や大学院といった学びの場の価値は、授業内容以上に共に学ぶ人たちにあるなと思っています。同期と教員と語らうことこそ学問の場の最大の価値です。

面接

ちなみに早くついても寒いですし運が悪いとめっちゃ待ちます。

一次選考を突破すると面接に挑めます。たぶん小論文とポートフォリオの合算で見てると思うんですよね。

大体ざっくり何グループかに分かれて時間を指定されるので、グループの最後の方になると結構待ちます。私はdeep learningの技術書持ち込んで時間を使いました。

確か、面接会場に通されてからは自己紹介を1分だか1分半程度でしたのち、教授陣から質問が飛んでくるものだったと記憶しています。

面接の部屋は2つあり、それぞれ4人の教授陣が待ち構えています。
1つ目の部屋はアットホーム的で(自分の分野に近い先生も多かった)、私に興味を持ってもらえていた印象だったし、面接時間も足りなくなってました。2つ目の部屋は針のむしろで、私に興味もそんなに持たれてない印象。面接時間も余って「あと〇分ですが他に質問はありますか」「特にないです」でした。絶対落ちたと思ったわ。帰りの常磐線が辛かった。

ポートフォリオや志望研究調書を手に質問されているようでした。

1つ目の部屋で訊かれたこと。
・なぜポートフォリオにこの作品を入れたのか(アート作品の中にドキュメンタリーを入れていた)。異色に感じた。
→こういうこともできるという幅の広さを見せたかったと回答。
・やりたいことが盛り沢山に書いてあるが、どれをまずやっていくのか。
→今ひとまず○○からやりたいと思っているという回答。
・AIを使うとのことだが学習データはどうするのか。学習部分も自分で実装するのか(分野的に詳しめの先生からの質問)。
→データはTwitter、学習部分はライブラリを使おうと思っていると回答。
(今思い出したけどこのとき考えていた作品に最早興味を失っている自分がいる)
・(作品プランについて)文字ベースのメディアを写真のように展示するとはどういうことか。
→写真をどういう風に捉えていてどうコンセプトを組んでいるか説明。

2つ目の部屋で訊かれたこと。
・(最初に)余計なお世話だけど、志望研究調書の文字はもっと大きくした方がいい。文章は簡潔に書けるように。
(→怖かった。)
・小説を書いていたとある。今も書いているのか。
→最近は書いていない。
・〇〇先生の作品見たことある?○○先生の研究室を希望している?
→いくつかはある。要項に入学後決めるとある通り、○○先生が最も近いと考えているが、入学後に考えを変えることは十分にありうる。と回答。
・語尾に「と思っている」が付くのは蓮舫氏の影響か?
→客観的に喋ることを心掛けているからこういう喋り方になっていると思う(なんでこんな質問されているのかよく分からない)
・学部時代にやれたこととできなかったことはなにか。
→やれたことはコンセプトを組むこと。できなかったことはメディアメディウムへの理解を深めること・技術を高めること。

合格発表

最初にネタバレがある通り受かっていたのですが、針のむしろな面接部屋が辛すぎて生きてる心地がしない合格発表までの日々でした。死んでました。完全にアルバイトで一年食い繋ぐ決意をしていました。

上野の大学で掲示板を見に行き、番号を見たときには中学受験時の合格発表の喜びを思い出しました。

入学してよかったことは、いろんなメディアを扱う同期を見ていると刺激になることと、同期同士でディスカッションして美術への自分の考え方を洗練していけることです。あと、ずっと習っていた先生にたまたま進学後も引き続き習えることになってたのでそれも幸運でした。他学科他専攻の人と話すのも刺激になっています。

2018年2月7日は先端の小論文試験日だったよう。新たな出会いが4月に待ち受けていることを今から楽しみにしています。

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