「ふしぎネコ牛乳機」というネーミングについての考察

僕にとってこのネーミングセンスはなぜかすごくツボだったので、どうしてそう思ったのかちょっと考えてみる。

※「ふしぎネコ牛乳機」はコナミルクさんによるpicrewキャラメーカーの名称です。
https://picrew.me/image_maker/5402


まず、この言葉から受けるイメージをひとことで言えば「少しの奇妙さを含むファンシー感」だ。
なんだろう。
単なる「ファンシー」では終わらず、かといって「奇妙」と言い切るには可愛らしさの成分が強すぎるような。
それでいて、ひとつの単語として見た時には全体が不思議とまろやかに融和しているような印象を受ける。

『ふしぎネコ』までは完璧にファンシーであるのに、その後の『牛乳』でちょっとだけ「ん?」と思わせて、最後の『機』で「あれれ?」となり、頭に戻って読み返してしまう。

印象的な事はまた後で言うとして、では手始めに、この「ふしぎネコ牛乳機」を一度バラしてそれぞれの単語の柔らかさと温度の印象を記してみよう。


ふしぎ→かなり柔らかい。温かい
ネコ→柔らかい。少し温かい
牛乳→普通より少し柔らかい。温度は普通
機→硬い。やや冷たい


これはあくまで僕の印象ではあるけど、「ふしぎ」とか「ネコ」のような柔らかい単語の中で「機」という単語だけが明らかに固いので、ひとつだけ浮いて見える。
特にこの場合の「機」は機械的な意味を表す「機」なわけだから、なおさら。
だからたぶん、「ふしぎネコ牛乳機」から漂ってくる微かな奇妙さを作っている原因のひとつはこの「機」という単語にあると思う。

しかしながら、前述したように「ふしぎネコ牛乳機」をひとつの単語として見ると、全体がまろやかに融和しているような印象を受ける。
そしてそれは「ふしぎネコ」と「機」を繋いでいる「牛乳」の役割が大きい気がする。

というのも、この「機」は「牛乳」と組み合わさって「牛乳機」という謎の単語を作り上げている……のだけど、それ以前の話として、「ふしぎネコ」という単語と「牛乳」という単語は相性が良いように感じる。
そもそも「ふしぎネコ牛乳機」はPicrewキャラメーカーのタイトルだから、このタイトルを見る時にはキャラメーカーとしてのイラストも目に入るわけで、それとの合わせ技という面も大きいと思う。

どういう事かと言うと、この「牛乳」という単語からは「白い」「なめらか」「子供っぽい」というようなイメージを僕は感じるのだけど、そのイメージはそのままキャラメーカーで作る事のできるイラストの特徴と重なる部分があるのだ。
逆に言えば、淡白な白を基調としたイラスト(キャラメーカーで製作できるふしぎネコと思われるイラスト)からは、どことなく牛乳のような香り……より正確に言えば、赤ちゃんが飲む哺乳瓶のミルクっぽい香りが漂ってくる。

もちろんこれは、タイトルに「牛乳」という単語が入っているからそう感じるだけという可能性もあるけど、いずれにしても「ふしぎネコ」と「牛乳」の間には互いに溶け合ってくっつくような相性の良さを感じる。
もっともこれは、ファンシー系のモチーフと牛乳(ミルク)の相性がそもそも良いという事とも関係してると思うけど。

しかしながら、実際に「牛乳」とくっついている単語は「ふしぎネコ」ではなく「機」のほうだ。

「牛乳機」

意味がわかりそうでわからない絶妙なライン……。
素直に連想すれば「牛乳を作る機械みたいなモノかな?」とも思うけど、やっぱりどこか不自然だし、この不自然さというか軽い非現実感みたいなモノが「機」という単語の持つ硬さを多少柔らかくしているようにも感じる。

そして、この「牛乳機」という単語が、さらに「ふしぎネコ」という単語と組み合わさる事で、まさに不思議な効果が生じているように思う。

今更だけど、この「ふしぎネコ牛乳機」という単語は日本語として意味が通りそうで通っていない。
この「通りそうで」という部分がポイントで、僕はこのタイトルを見た時、なんとか意味を通そうと、隠れている言葉を探すような事をしてしまった。
つまり、

「ふしぎネコ(の)牛乳機」
とか
「ふしぎネコ(を作るための)牛乳機」
とか……。

しかし、ここまでやっても「牛乳機」が謎の造語である以上はやっぱり意味は通らない。
通らないんだけど、「ふしぎネコ」と「牛乳機」はまったく別の単語が無意味にくっついているわけではなく、上記の例のように何かしらの関連性があるように見えてしまう。

だから、冒頭で言ったように単語間の温度差がある割に、全体としてみると融和しているような感覚になる。
そういう意味ではこれがキャラメーカーのタイトルだという事も上手いこと作用していて、キャラメーカーというのはキャラを作るための機械とも言えるわけだから、「牛乳機」という意味不明ながらもどこか製造的な事柄を連想させる単語はピッタリきている。


また、意味的な視点から「ふしぎネコ牛乳機」を分解してみると、僕は下記のように感じた。

ふしぎネコ→キャラメーカーで作る事のできるキャラのこと
牛乳→そのふしぎネコという生物から連想されるイメージや雰囲気のひとつ
(牛乳)機→これは何かを製造する機械であること

ようするに、意味的な視点から見た場合は「牛乳」という単語が妙に浮いている。
この中での「牛乳」は意味的な役割がとても薄くて、ただ単に雰囲気を付け加えるフレーバーとしてしか機能していない。
それどころか、この「牛乳」という単語があるせいで全体としての意味が通らなくなっているとすら言える。
つまり「牛乳」という単語さえ弾いてしまうか、適切な単語に置き換えれば、「ふしぎネコ牛乳機」はじゅうぶんに意味のわかる造語になる。

それこそ、
『ふしぎネコ機』
とか、もっとわかりやすくして、
『ふしぎネコ製造機』
などにしてしまえば迷いなく頭に入ってくるし、キャラメーカーの名前としても適切だと思う。

しかしここを『牛乳機』という謎の造語にすり替えて、あえて意味を通らなくしている(?)ような部分も作者さんの崩しのセンスみたいなモノが光っているように思える……。

また、これを『ふしぎネコ製造機』としてしまった場合は、
「ふしぎネコを製造する機械」
というハッキリした意味以外の意味は失われてしまう
のに対して、
『ふしぎネコ牛乳機』
であれば、前述したように読者の連想次第で様々な意味を持たせられる。

・この「ふしぎネコ」は「牛乳機」という謎の機械によって作り出されるものなのか?
・それとも、「牛乳機」という謎の機械を「ふしぎネコ」が作り出したのか。
・そもそも「牛乳機」とはなんなのか。

意味が通りそうで通らないという綱渡りみたいなバランスが成立しているおかげで、想像が膨らんでしまう。

まとめると、僕がこのネーミングにツボった原因は以下の3つだと思う

■1 
想像や連想の余地を残すほどよい意味不明さ。意味深さ

■2 
「ふしぎネコ」「牛乳」とファンシーな単語を連続させた後に「機」をつける事で、メルヘンな雰囲気の中に独特の奇妙さが混じりこんでいる不思議テイスト。
また、この「機」のおかげで「牛乳機」という謎造語が生まれて、事態を複雑にしている所もポイント。

■3
キャラメーカーで作成できるイラストと、この不思議なタイトルのマッチ感。
イラストにも、タイトルのイメージと似た「ファンシーなんだけど、ただ可愛いだけでは終わらない」独特の空気感がある。


……こんなところでしょうか。
みなさまはどう思われますか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?