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2023/12/16 シームレス曲間コールの用法を考える

私がnoteを始めてからというもの、何らかの目的に則ったシリーズものの記事ばかり書いていて、フリーテーマ的な記事を全然書いていないことに気がつきました。
というわけで、ということにしてよいのかわかりませんが、今回は前々から私がことあるごとに言及してきた、ロッテ平沢2作目に端を発する、シームレスな曲間コールに焦点を当てた記事を書いてみたいと思います。


応援歌における安定したリズムは4拍子×2小節

いきなりですが、そもそも私は音楽の専門的知識が皆無なので、これまで数多くの応援歌を聴いてきた私個人の感覚に頼った言説であることをあらかじめ御了承いただいた上で、この先お読みください。
シームレスな曲間コールとは何ぞや、という話をするにあたり、まずはそもそも応援歌ってどういう曲構成で成り立っているのか、理解を深めておきたいところです。

応援歌と言われて通常思い浮かべるのは、8小節のメロディに「かっ飛ばせ! ○○!」のコール。この曲構成が基本ではないでしょうか。
これをさらに分解すると、応援歌というのはほとんどが4拍子ですから、4拍子2小節で一つの節があって、これが4つ集まって8小節のメロディになるわけです。曲間コールも4拍子×2小節か、球団によっては4小節×4小節というところもありますが、いずれにしても小節数は偶数というのが基本です。
ちなみに、私がお気に入りの応援歌に対してコメントするときに、起承転結がしっかりしていると評することがありますが、これは、2小節ごとに区切って聴いた時の展開を指しています。いつものおすすめで恐縮ですが、ロッテ南2作目で私の言いたいことを感じてください。

一方で、応援歌におけるメロディの小節数は、何も8小節に限定されておらず、歴史が長くなるにつれ、様々な長さの応援歌が生まれています。
この観点で様々聴き比べていただくと、小節数が奇数の応援歌は、全体的にどことなく不安定な印象をもたらしているのではないか、という傾向が感じられます。
小節数が奇数だから全て変な感じかというと、そういうことを言いたいのではなく、不安定さもひっくるめてかっこよく昇華させている応援歌もあります。これまた私の好みで恐縮ですが、一例として、横浜田中一徳の9小節応援歌。

ロッテ○○ヒット系で見られるシームレス曲間コール

このままではただ単に私のお気に入り応援歌の紹介に終始しそうなので、そろそろ本題に入りましょう。
シームレス曲間コール、という言葉自体は私が命名したもので、一般的に定着しているものとも思えませんので、まずはこの説明から。現行の応援歌で例を挙げると、ロッテ角中。

この応援歌の曲構成を説明すると、メロディは「ララララ」から始まって「栄光の時を目指して」まで15小節、そこから曲間コールの角中ヒットへと移行します。俗にいう○○ヒット系応援歌というやつですね。
これにまつわるエピソードとして、角中は'13WBC日本代表メンバーにもなりましたが、この時の日本代表選手の応援は、全選手所属球団に関わらず、曲間コールを「かっ飛ばせ! ○○!」で統一するという暴挙に出ていました。
その結果、私の動画内のコメントにも記載したとおり、日本代表時の角中の応援歌はなかなかへんてこな感じになってしまいました。実録動画も残っていますので、興味のある方は各自お調べください。
かように、ロッテの定番応援スタイルともいえるこの曲構成においては、無理やりオーソドックスな曲間コールに当てはめるとかえって違和感が出るほど、シームレス曲間コールは欠かせぬものであることがわかるかと思います。

小節数が奇数の場合にシームレスになる法則

角中の応援歌におけるシームレス曲間コールのポイントは、15小節目でドラムパターンが変わり、メロディの最終小節と曲間コールの最初の小節が重複していること。
これにより、先述した応援歌の基本リズムである4拍子×2小節が守られているため、応援歌のメロディの小節数は奇数でも、それほど不安定な感じを受けず、すんなりと応援のリズムが受け入れられるのです。

ロッテの○○ヒット系応援歌で、シームレス曲間コールの発祥となったのは、私の記憶の限り、'10作の井口チャンス。Aメロ部分でシームレス曲間コールが採用された本曲ですが、このAメロ部分は9小節と奇数なのです。

井口チャンスの好評ぶりに気を良くしたか、以降ロッテは○○ヒット系応援歌を多数作りますが、シームレス曲間コールが採用された応援歌は、例外なく小節数が奇数、というか、9小節か15小節の2パターンでした。
以下、漏れがあるかもしれませんが記憶の限りで、○○ヒット若しくは○○ホームランでシームレス曲間コールが採用されているリストアップ。14曲もあります。該当応援歌のメロディを確認したい方は、お手数ですが各自お調べください。

  • 井口チャンス ('10作) : 9小節(Aメロ)

  • 的場 ('10作) : 15小節

  • 福浦 ('11作) : 15小節

  • 岡田 ('11作) : 15小節

  • 伊志嶺 ('11作) : 15小節

  • サブロー ('12作) : 15小節

  • 角中 ('12作) : 15小節

  • 高濱 ('13作) : 9小節

  • 根元 ('14作) : 15小節

  • 吉田 ('14作) : 15小節

  • ナバーロ ('16作) : 15小節

  • 中村奨 ('16作) : 15小節

  • 鈴木 ('17作) : 15小節

  • 藤原 ('23作) : 15小節

また、曲間コールが選手名フルネームとなるケースでも、小節数が奇数の場合は、同様に曲間コールへの入りがシームレスになります。該当するのは以下3曲。

  • 細谷 ('10作) : 15小節

  • パラデス ('17作) : 9小節

  • 井上 ('18作) : 9小節

○○ヒット系でも小節数が偶数であればシームレスにならない

逆に、○○ヒット系応援歌で小節数が偶数の場合はどうか。そもそもシームレス曲間コールが導入された'10以降、ロッテの応援歌で○○ヒット系かつ小節数が偶数の応援歌というのが非常に少なかったのですが、以下2曲は、シームレスではありません。

  • 竹原 ('10作) : 16小節

  • 金2作目 ('10作) : 8小節

フルネームコールの場合だと、割と最近になって作られた応援歌でも該当がありますが、例外なくシームレスではありません。

  • 荻野貴 ('10作) : 16小節(Bメロ+Aメロ)

  • 平沢 ('18作) : 16小節(Bメロ+Aメロ)

  • 藤岡 ('19作) : 16小節

ちなみに、シームレス曲間コールが生まれる前、'09以前のロッテについてはどうかというと、○○ヒット系の応援歌は以下3曲。いずれも、8小節のメロディを2回繰り返して16小節という曲構成でして、すなわち偶数でした。

  • 西岡 ('07作) : 16小節

  • 青野 ('07作) : 16小節

  • 井口 ('09作) : 16小節

楽天4・4・8拍子時代もシームレス曲間コールの採用例あり

ここまでシームレス曲間コールを論じるにあたり、ロッテの応援歌ばかり取り上げてきましたが、なぜロッテの○○ヒット系でシームレス曲間コールが多いのか。
それは、通常の曲間コールでシームレスにしようとすると、メロディの最終小節とコールの入りがバッティングしてしまい、うまく歌えない、若しくはうまくコールができないからでしょう。
裏返すと、シームレス曲間コールを採用する条件の一つは、曲間コールの入りに無音の拍があることといえます。ロッテの○○ヒット系は、この条件を満たしているわけですね。

それでは、他球団ではシームレス曲間コールを採用できないかというと、汎用的に曲間コールに無音の拍が入るパターンが存在しました。それが、楽天で'17まで使われていた4・4・8拍子です。
そして、実際楽天ではこの時代、枡田と島内の応援歌で、シームレス曲間コールを採用していました。メロディの小節数はというと、枡田が17小節、島内が9小節。ともに奇数であり、ここまで説明してきた法則も満たしています。

楽天は'18以降、曲間コールが4・4・8拍子から3・3・4拍子に変更。曲間コールに入る際の休符がなくなったので、'18は枡田も島内も、応援歌の最後の歌詞とコールの入りがバッティングしてしまい、歌いづらい、コールしづらい状態となってしまいました。
島内は翌'19に応援歌変更。枡田は'18限りで現役引退し、その後、今季'23に小郷へ流用されるも、曲間コールの形式は変更。楽天からシームレス曲間コールの応援歌は消えてしまったのは、4・4・8拍子でなくなってしまったことも大いに関係があると考察しています。

シームレス曲間コールで小節数が偶数の事例

それでは、ここまでの法則には当てはまらない、すなわち、シームレス曲間コールなのに小節数が偶数の応援歌は全く存在しないのかというと、ここまでリストアップ作業を行ってきた中で、例外となる事例を一つ見つけました。それがロッテ今江3作目の応援歌。

この応援歌は、メロディ本編が16小節ながら、歌詞の最後の1音と、曲間コールの最初の1音を被せるようにして、まさしくシームレスに曲間コールに移行しています。
一見歌いづらい、コールしづらいような印象も受けるかと思いますが、歌詞の最後の1音が「き」、コールの最初の1音が「い」で、母音が一緒であることが功を奏してか、力業で押しきれてしまう応援歌でした。
どうしてわざわざこんな曲構成にしたのか。本曲はメロディ本編も曲間コールも、ドラムパターンとしてはひたすら連打という応援歌です。ということは、これも私独自の考察ですが、メロディ部分で一旦切ってから曲間コールへ移行するよりも、盛り上がりを途切れさせることなくドラム連打を続けられるような形で曲間コールへ移行したかったのではないか、と思います。
事実、この応援歌に関して、コールのしづらさは個人的に若干気になるものの、シームレス曲間コールを採用した意図は感じられるところであり、この点で違和感を覚えたことは特にありません。

ロッテ平沢2作目にシームレス曲間コールを取り入れる是非

とはいえ、ロッテ今江3作目は○○ヒット系にも該当しないと思っていて、あくまで○○ヒット系応援歌であれば、小節数を奇数にして曲間コールへの入りをシームレスにする、というのがこれまでの基本形だったはず。
そこに一石を投じてきたのが、今季'23の新曲、ロッテ平沢2作目です。本曲の印象については、「2023年新応援歌第一印象(ロッテ編その2)」でも述べたとおり。小節数が16小節で偶数なのに、曲間コールへの入りがシームレス。これが個人的に違和感しかなくて仕方ないのです。

そもそも、先ほどリストアップした事例を見返していただければわかるとおり、○○ヒット系の応援歌は、小節数が奇数(9小節若しくは15小節)で作られるのが主流であり、小節数が偶数の応援歌は'10作の竹原と金2作目以来作られていませんでした。それでも、16小節の応援歌で○○ヒット系にすること自体は、事例として皆無というわけではないですし、別に構わないと思っています。
問題は、なぜ平沢2作目についても、シームレス曲間コールを採用してしまったのか。メロディ16小節の応援歌に、曲間コールが8小節と、それぞれで4拍子×2小節の安定したリズムが完成しているはずなのに、ここにシームレス曲間コールを採用してしまったせいでリズムが崩れて、どうにも不安定な印象が拭えなくなります。
先ほど例外として取り上げたロッテ今江3作目と異なり、平沢2作目については、歌詞の終わりとコールの入りがバッティングする心配はありません。一方で、今江3作目の場合は、ドラム連打の流れを崩したくないからあえてシームレス曲間コールを取り入れた、という意図が感じられるのに対し、平沢2作目に関しては、そのような狙いも見えてこない。

まあ、冒頭に述べたとおり私は音楽に関する専門的知識は皆無ですから、私の考察が浅いだけなのかもしれませんが、私は私なりに、これまで数多く応援歌を聴いてきた中で、シームレス曲間コールは小節数が奇数の場合に真価を発揮するものだという法則を見出していました。○○ヒット系の応援歌でも、小節数が偶数であればシームレスにならない事例だって複数存在します。
これら過去の蓄積を無視して、なぜシームレス曲間コールにしたのか。単に○○ヒット系だからという理由だけだとしたら、それはあまりにも浅はかすぎやしないか。16小節の応援歌なのに曲間コールをシームレスにしたが故に、歪なリズムに感じられることに、作曲時点で誰も疑問を抱かなかったのか。
せっかく応援歌を作ってくださったのに不平不満ばかりで申し訳ないのですが、この応援歌に限って言えば、曲間コールをちょっと変えるだけで、受ける印象もかなり変わると思っています。
単純に、従来の16小節で○○ヒット系の応援歌の形に倣うだけでも改善できるでしょうし、せっかくですので欲を言えば、旧Dメイなどの助っ人応援歌で使われていた「Let's go! 大河!」コールを取り入れてみるのはどうでしょう。応援歌の歌い出しとコールがバッティングする心配もなくなるし、歌詞でも「Let's go 大河」って言っているくらいなので、全体通してとても馴染むと思うのですが。


今シーズンの平沢は、開幕直後は好調でついに殻を破るかと思われたのに、2作目の応援歌が作られてからは一転して大不振で、結局例年と見栄えが変わらない成績に。過去ドラフト1位で入団しながら、なかなか飛躍できずにいることから、現役ドラフトの候補では、なんて論調も見かけましたが、ひとまずは来季もロッテでプレーすることになりそうです。
ということは、おそらくこの応援歌を演奏するチャンスもまだまだあるでしょうから、違和感や迷いなく全力で応援できるように、見直せるポイントはぜひ見直していただきたい。この応援歌に関しては、キーを変えるよりなにより、まずは曲間コールに手を付けるべきだと思うのですが、ここまでお読みいただいた方は、いかが感じられたでしょうか。

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